異世界はまるちわーるど!

響鬼ぎゅねい

第1話

俺は『渡辺彰(わたなべあきら)』、ただの高校生だ。

そんな俺の眼前に、異様な光景が広がっていた。

見覚えが全くないボロボロの風呂場にバスタオル一枚の青い髪の美少女がいて。

更にピンク色の髪のメイドがバズーカを俺に向かって構えている…

「あらら、面倒な事になったな、君」

青い髪の女の子が言う。

俺な日常ではあり得ない、青い髪の女の子が俺の近くにいる。

その娘とは出会ったばかりだけど、髪は青いし、口調も男みたいで結構変わっていると言う事だけはわかる。

が、それよりも驚愕したのは、羞恥心がないのか、全く俺に素肌を見られても恥ずかしがらない事だ…

露出狂ってわけでもないらしく、完全にノーリアクションだ。

「痴漢!お前を連行するロボ!」

猫耳と猫のしっぽがあって、首輪を身に付けている眼鏡っ娘でピンク髪ポニーテールなロリメイドが眼前にいて、バズーカを構えて俺の目の前に立っている。

俺は撃たれたくないので手を上げていた。

「は…はい…」

ってなんなの!?妙な口調で闇鍋のごとく属性ごった煮のメイドは!

何故俺がこんな事になっているのかと言うと…



数時間前、俺はいつものように部屋でダラダラしていた。

その時、ふと思い出した事があった。

「そうだ!明日は友達とカラオケ行くんだ!」

俺は翌日ウケを取るために、歌の練習をする。

「俺は君にぞっこんメロメロキューさー♪」

部屋に急に眩しい光が部屋に発生する。

今思い出すと、その時、部屋が派手に輝いてた気がするが。

その時の俺は歌の練習に夢中で、全く気に止めていなかった。

まばゆい光が迸り、視界を覆う。

だけど…ノリに乗ってる俺はその発光を気にしていなかった…

その時テレビもつけっぱなしだったから、テレビの派手な演出だって思ったんだよ!

この時に何か対処してれば!俺はそれを後悔してる。


俺は光に包まれている事を気にせず、熱唱を続けていた。

「イエス!ベイベィ!俺の恋は辛口だぜぃ!ハバネロよりかーらーいー♪」

俺が目を開けると見慣れた部屋の景色は無くなっていて。

肌にまとわりつくような熱気を感じ、気がつくと大きいけどボロボロの風呂場にいた。

「え…!?え!?」

俺はいきなり見知らない場所にいた事に驚いていた。

だけど、それ以上に衝撃的な事が眼前にあった!

「何だ?その珍妙な歌は?いきなりどこから来たんだよ?君は」

女の子の声が聞こえる、男みたいな口調で冷静だ。

俺がその方向に目を向けると…

「え!?き、君は…」

一糸もまとわない全裸の女の子がそこにいた!

スタイルが良くて顔立ちがやや大人びていて、背も俺と同じぐらい。 

特に目を引くのは青い髪ってありえない髪の色だ。

で!当然俺の目線は自然と胸に向いてしまう!仕方ないだろ!男なんだから!

見ちゃいけないのはわかってるけど、『バッチリミナー!バッチリミナー!』と頭によぎって全く目が離せない!

俺はまばたきも出来ずに開眼して目にその光景を焼き付けてしまった。

仕方ないだろ!男なんだから!

その娘は羞恥心がないのか、全く隠そうとしない…

柔らかくて大きい胸がぷるんと揺れるけれど、全く気にする様子はない。

俺は別の意味で恥ずかしい、ノリに乗って熱唱してる姿を見られたから。

「私の名は『リムエット・アーガス』だ、リムでいいぞ、君は?」

「お、俺は渡辺彰だ…」

俺は気が動転して、とりあえず自己紹介をした。

「わたなべあきら…あーちゃんで良いかな?」

平然としてるが全裸の女の子が平然としてるのにどうすれば良いんだよ…しかも破壊力抜群だし!

「うわっ!」

俺は足元のお湯で滑って、リムに当たってしまう。

それからふと目を開けると…

「あっ…」

リムから甘い声が聞こえる、俺は気が付くと、不可抗力でリムの胸に顔を突っ込んでしまっていた。

顔に当たるふかふかした柔らかい感触に魅了されてしまう。

「ご!ごめん!」

俺はリムから離れようとするが、また足を滑らせて体勢を崩してしまう。

「う、うわっ!」

その時、リムの身体を咄嗟につかんでしまった。

その直後、俺はあり得ない光景を作り出してしまう。

「あっ!きゃ…」

リムは短く小さな悲鳴をあげる。

なんと!バックドロップの体勢になって俺はリムにバックドロップを仕掛けていた!衝撃がリムに襲いかかる。

「うん、まだまだだな、浅いぞそれ」

だけど、俺の力ではほとんどダメージが入らないらしく、平然としていた。

自分の非力さを実感したが、それよりも女の子を怪我させなくて良かったと安堵した。

直後、リムの声ではない大声が突然聞こえて来る。

「大変ロボ!お姉ちゃん!変な部屋が!」

その声と共に風呂場が勢い良く開けられ、

猫耳で猫のしっぽがあって。

首輪を身に付けている眼鏡っ娘でピンクのポニーテールなロリ巨乳なメイドが入って来た。

幼女属性は俺にないけど胸は大きいな…

首輪は常にピカピカと輝いていて、腕や服

の一部にも機械の部品が見える。

ってかロボって何!?その服や装飾も何だよ!?

当然、俺が全裸のリムにバックドロップを食らわせている光景がロリメイドの目に入るわけで…

「ーーーーーっ!!」

声にならない叫びをあげてる、ショックで何を言って良いかわからないんだろう…

俺とリムをひっぺがし、リムにバスタオルを投げる。

そして、俺に向かってバズーカを向ける…

「あらら、面倒な事になったな、君」

リムがあっけらかんと言う。

「痴漢!連行するロボ!」



こうして、俺はロリメイドに脅されて、連行されていた…

風呂場から出ると、俺の今いる場所はどこかの古い屋敷だと言う事はわかった。

周囲を見渡すと壁にヒビが入っていたり、雨漏りがある。

更に床に穴が開いてる箇所もあり、建物自体は立派だけど。

老朽化などの修理をする余地がない印象を受けた。

「しかし困ったな、これから出かける予定だったんだが」

風呂を上がったリムは何やら変わった格好をしていた、まるでアニメやゲームでするような格好だ。

日常生活じゃありえない服装。

その服装はアニメなどで見る魔法使いの服を動きやすくしたような格好で。

可愛らしくところどころにフリルがついていて、スカートもあるデザインだ。

かなり精巧でコスプレにありがちなチープさを感じない。

相当な高等技術で作られたコスプレ衣装か?

「それコスプレ?これからコスプレイベントでも行くの?

魔法使いとメイドとかコスプレ以外じゃ見ないし」

大人びた雰囲気だけど、可愛いな。

オタクっぽいけど、俺はそれなりにゲームやるし、全然OK!

俺がコスプレするのは恥ずかしーから絶対にイヤだけど。

リムとエクストの頭には『?』がついていた。

『コスプレ』の意味をわかっていないのか。

「?こすぷれって何だ?リムのこれは冒険用の服だよ

テンションを上げるために少し可愛いデザインにしてもらったが」

「ぼ?冒険!?」

いや、真顔で冒険って…マジで何かになりきってるのか…現在日本じゃそんな格好で冒険出来ないよ…

「ボクはアーガス家に仕えるメイドだロボ、身も心もお姉ちゃん二人に尽くしてるロボ!ご奉仕してるロボ」

ま、マジでなーに言ってるかな…眼鏡ロリメイドちゃん…

「ご奉仕…ねえ…」

このロリ幼女がまず世話される方じゃないのか?

俺はさっきから無礼な行動ばかり取ってしまってるので。

俺はリムに謝らないといけないと感じていた。

俺はそう思って彼女に頭を下げる。

「ごめん!君に無礼な事ばかりして!」

俺が頭を下げる、だけどリムは頭に『?』がついてる様子だった。

「ん?そうか?特にリムは不快じゃないぞ?気にしなくて良い」

心が広いのか、とにかく寛大な娘だ。

「あ、ありがとう…」

羞恥心はないけど、良い娘だな。

少し歩くと、俺の目の前に扉が広がる。

「さあ、入るロボ」


俺がドアを開けると、そこには大きな客間が広がり、そこには一人の女性がいた。

その女性もコスプレのようにありえない格好で。

赤いウェーブがかった髪を持ち。

鋼の胸当てを装備し、腕にナックルガードを身につけていて、身軽な格好をしていた。

その服もリムと同じように可愛らしいスカートがあって、どことなくリムの服とデザインも似ている。

リムとはタイプが違うけど落ち着いてるタイプだ。

見たところ歳は二十歳ぐらいか?

「ようこそ、アーガス家へ、『アルエット・アーガス』と申します

リムエットの姉です」

アルエットさんが頭を下げる、俺もそれに答える。

「あ、渡辺彰です、こんにちは」

ドレスを身にまとい、動作のひとつひとつも優雅だ。

顔立ちも似てないし、髪の色も違う、リムより少し背が低いから血の繋がりとかないのかな?

「痴漢に名乗る名はないけど一応名乗っておくロボ、ボクは『エクスト』って言うロボ

メイドロボだロボ」

どうやらロリメイドの名はエクストと言うらしい。

エクストは眼鏡をくいと上げて、どこか上から目線で俺を見る。

「うわ!どこまで無礼なんだよお前!痴漢じゃねっての!このマニア要素の塊が!

ロボットに見えねーぞ!」

俺はエクストに反論する、流石にあそこまでされたら黙ってられるか!

見た目はほとんど人間だし、口調が妙なだけでロボットだって事に全く信憑性がないが。

「むっかー!しっつれーロボ!ボクとリムお姉ちゃんの胸を見てた男が何を言うかロボ!」

「うぐ…」

俺は反論出来なかった、事実だから…

エクストが本当にロボットだとしたら。

猫耳メイドで首輪を身に付けているロリ巨乳で眼鏡っ娘でピンク髪ポニーテールでボクっ娘で妹キャラな口調が変で毒舌なロボっ娘って属性盛り過ぎだろ…

「い!今さら眼鏡っ娘なんてはやんねーんだよ!」

俺は苦し紛れにエクストに言い返したが。

「ん?これは目のカメラの性能が良くないから追加した強化パーツロボ

だいいち眼鏡かけてるかどうかで女性を判断するのは古い人間ロボよ、かけてても美人は美人ロボ

好きな女の子が眼鏡かけただけで見る目変わるような小さい男ロボか?」

エクストはダメージゼロだった、い、言い返せない…

「う…うぐあー!」

俺は思わず悲鳴をあげる。

更にアルエットさんに凄い勢いで睨まれた。

『はあ!?お前眼鏡っ娘の良さわからないの!?あの知的なフォルムとか良いだろ!全裸にして外に磔(はりつけ)にするぞ!

あとな!私の溺愛する妹のリムの悪口も言ってみろ!ただじゃおかない!!』

とか言いたげなオーラが漂っている…

「ご、ごめんなさい…二度と眼鏡の悪口は言いません…」


それから、俺は事の顛末を話した、歌ってたらいきなり部屋が発光して風呂場に飛ばされたって事を。

「だからさ!歌ってたらいきなり部屋がパーッと光って!いきなり風呂場に!おっぱ…じゃなくて!そこに胸が剥き出…風呂中のリムが!」

俺もむちゃくちゃ言ってると思うし、俺も逆の立場だったらぜってーーーに信用しない…

本当の事を言っても

『宇宙から電波でもドババっと一気に受信したのかあんた!』

とか言われるのがオチだと思う。

「な、何言ってるロボ…超絶非科学的でドナンセンスロボ、それに胸ばっかロボ…」

「何か変な物でも食べましたか?」

エクストとアルエットさんのリアクションは至極全うな反応だ、だって俺もそう思うもん…

「噂の真偽は曖昧だけど聞いた事はあるな?

異世界から転移される人がたまにいるってさ

それに敵意とか特に感じなかったぞ」

だけどリムはあっさり信用する。

「ほ!本当にありがとう!弁解してくれて!」

純粋!俺がわざとやったわけじゃない事をわかってくれたみたいだ!

少し引っ掛かる事がある、『異世界から転送される』?一体何の事だ…?

エクストが目をライトのように発光させ、その光で俺を照らす。

「ってえ!?なんで目光ってるの!?」

そうだ!目が光ってる!絶対ありえない!

「じっとしてるロボ、戦闘力を測定してるロボ

リムお姉ちゃんに危害を及ぼす程の戦闘力を持ってるかどうか確かめてるロボ」

は!?戦闘力!?少年マンガじゃあるまいし!

「も、もしかして俺はなんかすっげー資質や特殊な力があるとかか!?」

いやー、なんだかワクワクするな…やらせかなんかだとしても、男ならワクワクする光景だ。

しばらくすると、エクストのライトは消える、エクストは驚愕してる。

「こ……これは!!!!」

「え!?なに!もしかしてめちゃくちゃ強いの!?」

俺はワクワクしながら訪ねる。

「せ!?戦闘力たったの3ロボか!?

しも魔法とかも素質ゼロだロボ!ちなみにこの世界の一般市民の平均は6ロボ

ま、この戦闘力じゃ危害は加えられないロボね」

よりにもよってこれかよ!

「は!?戦闘力たったの3!?一般市民より断然弱いじゃん!半分の力じゃん!」

ケンカとかした事ないから戦闘力は自分じゃわからないが。

それなりに体力あって、陸上部でそれなりの成績残してるのにそこまで低いこたぁないだろ!

演技とは思えないし、マジでそこまで低いのか…

「危害加えられないってフォローされてるんだろうけど1ミリも嬉しくねー…

少しはお世辞言ったり盛ってくれよ…」

「ボクは素直なのか取り柄ロボ」

エクストがドヤ顔で言う。

「ドンマイだ、そのうち良いことあるさ、美味しいせんべいに巡り会えるとかな」

「び、ビミョーだな…それ…」

リムが大きな水晶玉を取り出し、それをテーブルに置く。

「君がここまで来た顛末を少し見させてもらうぞ」

俺は了承する、皆で水晶玉を眺めていると、そこには俺が部屋で熱唱してる光景が写し出される。

「………」

「………」

エクストとアルエットさんが何か言いたげな目で俺を見る。

何か言いたいけど、言葉に出来ないんだろう…

「頼むからそんな目で見んといて!恥ずかしいから!」

我に帰って自分を客観的に見るとこれほど恥ずかしい事はない…

水晶玉を眺めていると、俺の部屋の窓の景色が俺の見慣れた景色から変化してたのがわかった。

「この部屋は…まさかロボ!」

エクストが何か思い当たる節があるようで、外に出る。


俺達は外に出ると、予想外の光景に圧倒された。

「な!?な!?なあああああ!!??」

外には、とても現実ではありえない光景が広がっていた。

空にはドラゴンが舞い、大きな見たことのない鳥が飛んでいる。

他の皆はその光景に慣れてるのか、何事もなかったようにしてる。

「ま!まさか俺は異世界に転移されたのかあああ!?」

そうだ!さっきから妙な事ばっかだ!全裸の青髪美少女といきなり対面したら。

ロリメイドが出てきたとおもったら目は光るし。

変なオーラを出されるとかな!

水晶玉でちょっと前の俺の部屋の様子が見れるとか、現実じゃありえない事ばっかだ…

リム、エクスト、アルエットさんの髪は地毛にしか見えないし、染めてるわけでもなさそうだ。

実際、ゲームや映画とかでしか見たことがないような生き物もいる。

これが異世界なのか…

俺は更に驚愕する出来事を目にする事になる…

「なっ!?俺の部屋じゃねーかっっ!!」

更に屋敷の隣に目を向けると、なんと!地面の上に俺の部屋があった!

まるで俺の部屋だけ家から切り取ったかのように…

ああ、だから風呂場にエクストが来た時あんなに大騒ぎしてたのか…

「入って良いロボか?」

俺は頷く、4人で俺の部屋に入った。


やや物が散乱してる見慣れた部屋だ、漫画やロボットアニメのプラモデルやゲームソフトなどが置いてある俺の部屋。

「オタ臭いロボ」

オタクって程じゃないと思うぞ…多分…

「ロリ眼鏡メイドにだけはぜってー言われたくない台詞だ!」

そう、エクストにだけは誰にもそれを言う資格はないと思う。

アルエットさんは俺の『魔法少女落ち』と言うゲームの美少女フィギュアを手にとって眺めて、何かを閃いたようだ。

「そうだ!あなたみたいにオタ……想像力が豊かそうな人ならあれを使いこなせるのでは?」

アルエットさんが言う、オタクとか言おうとしたろ!

確かにゲームで徹夜して、学校で寝てどつかれた事ぐらいは何度も何度もあるけど…

「そうだな、悪い人じゃなさそうだし」

リムは懐から青い腕輪を取り出し、それを俺に手渡す。

「これは?」

リムはじっと腕輪を見つめて言う。

「これはな、リムの力を発揮するアイテムなんだが、他の人が身につける事でリムは力を発揮するらしいんだ、腕輪を介して」

リムは突拍子のない事をさも当然のように言う。

「ああ、他の人の力を分けてもらうアイテムとか?」

俺が言うと、エクストは言う。

「腕輪を分析した結果、リムお姉ちゃんと波長が合って想像力がある人ならリムお姉ちゃんの力を発揮出来るみたいロボ

想像力だけある人でもダメで、波長だけ合う人でもダメロボ

今のところ力を分ける、と言うわけじゃなくて

腕輪をつけた者が意思をリンクさせて、力を使うのはリムお姉ちゃんの独力ロボ」

いろいろ厄介なアイテムみたいだ。

『波長が合って想像力がある』人がいないと全力が出せなくて、未だに力を封じられてるって事なのか。

「ちなみに私は……リムと波長合ってませんでした!!」

アルエットさんが床に拳を叩きつけて悔しそうに言う、いとしのリムと波長が合わなかったのが相当悔しいんだろうな。

ってか床に穴開けられた!

「とりあえず試してみるけど、あまり期待するなよ」

俺は腕輪を腕につける。

するとそれと同時に腕輪は強力に発光する。

「っ!!」

「な!なんですかこれ!」

リムとアルエットさんは直視出来なくて目を閉じる。

やたら過剰に強力な勢いで、腕輪は青く強く発光を続ける。

俺も目を閉じていた。

「おいおい!発光し過ぎだっての!」

エクストはメカなので平然としていて、エクストが腕輪に触れると発光は収まった。

「ふう…助かった…どやって止めたの?」

俺は胸を撫で下ろした。

エクストは俺の質問に対して、腕輪についてるボタンを指差す。

腕輪にボタンって…おもちゃみたいだな。

「ここを押せば発光は収まるロボ

前に発光した事はあったけどこれほどじゃなかったロボ、次はここロボね」

エクストがまた腕輪に触れる。

すると腕輪から半透明な光のプレートが発生する。

「な!なんだこれっ!」

俺は予想外の事態に困惑する。

その光のプレートは、腕輪の上に発生していた。

腕を動かすと、光のプレートは腕輪の動きについて来ていた。

「何か文字発生してないか?リムと身につけた人にしかその光は見えないみたいなんだ」

リムの言葉を訊き、プレートを確認すると、そこにはこう文字が描かれていた。


『まほうしょうじょおち』

『だんがんがーるず』

『ぶしどーそーど』


と、俺が遊んだゲームのタイトルが平仮名表示されて、他には見知らない言葉も表示されている。

俺は戸惑っていた。

「次から次になんなんだよこれ!なんで日本語なんだ!」

ためしにプレートに触れると、感触こそないものの画面は反応し、変化する。

「この腕輪はその身に付けた者に最適な言葉が表示されるようです」

アルエットさんが言う。

俺がプレートを見ると、俺が見覚えのない単語があった。

『くらっしゃーほっけー』と。

俺はその文字に触れる、俺はくらっしゃーほっけーなんてゲームは知らない。

「なになに…くらっしゃーほっけー…?」

俺がその文字に触れた瞬間、腕輪が一瞬大きく発光する。

その直後、リムが大きな声で叫んだ。

「くらっしゃーほっけー!」

リムが叫ぶと同時に、空中にエアーホッケーの円盤のような物が出現する。

「何もない所から…これが魔法か?」

リムは杖で円盤を大きく弾く、円盤は猛スピードで加速し…

そしてその先には…壁を大きく打ち砕くと同時に。

俺が気合い入れて作ったカンダムのプラモデル、カンダムバエルがあった…

カンプラはあわれ!強烈なシュートになすすべもなく、粉々に破壊された!

「カンプラが!カンプラがオシャカになったっっ!!」

俺はショックで思わず声を上げてしまう。

「す、すまんっ、しかし今のは…」

「いや、リムは悪くないよ、俺が指示したからなんか出たっぽいし…」

今のはリムの意思でやったんじゃなくて、俺が腕輪のプレートに触れたから。

それに反応して引きずられたように見えた。

ああ…正直バエルは気合い入れて作ったから結構ショックだ。

だけど、俺も裸見ちゃったからリムを非難する資格はない。

「さっきの魔法はな、リムのイメージだよ、君とリムのイメージから魔法が形成されるんだ

イメージする力やリムとの波長が弱くても誰でも形成だけは出来る

これほど強いのは初めてだけどな」

リムが俺に説明する、つまりさっきの円盤は…リムのイメージから来てるのか。

「なるほど、確かにそう考えるとつじつまが合う」

リムは興味がある様子で俺の部屋のゲームを手に取っていた。

目を輝かせていて可愛らしい。

「もしかしてこれって君の世界のゲームか?リムもゲームは好きだぞ?」

「え?リムもしかしてゲーム知ってるの?」



数時間後、俺とリムは客間にいた、エクストは別の仕事があるらしい。

俺とリムの眼前には、アルエットさんがいた。

「まず、リムの事についてお話しますね

こんなに可愛い妹なのは見て頂ければわかりますよね?

リムは基礎能力が高いけれど、高位の魔法を使えなかったのです」

リムは恥ずかしそうに頭をかく、そのリアクションがとても可愛い。

「それでな、その事に困り果てている所に、君が来て高位の魔法を使えるようになったみたいなんだ

君のサポートがあれば、だけどな」

「ああ、なるほど」

確かにリム単独の力で使いこなしてるようには見えない。

「原因はわからないけれど、腕輪をつけた俺の影響で違った魔法が使えるようになった…って事かな?」

リムとアルエットさんは俺の言葉を肯定する。

「しっかし…電気もなさそうなのに何故テレビゲームをファンタジー世界の女の子が知ってるんですか?」

俺は疑問をぶつける、それこそが疑問だった。

見たところ、屋敷には電気の類いは一個も見なかった。

「リムはエクちゃんの世界のテレビゲームでよく遊んでるんだ

ゲームの電力ぐらいならリムの世界でもなんとか確保出来るぞ」

リムはさも当然のように言う。

「ああ、エクちゃんはロボットだから別の世界の出身なんだ、エクちゃんの世界は科学力が発達してるから」

リムが当然のように不似合いな『ロボット』と言う単語を口にする。

「正直カオス過ぎて頭の整理が…」

いきなりファンタジー世界でゲームとか言われてもな…

エクストの科学力は俺達の世界を超えているが。

「リムの趣味の一つはテレビゲームなので、先ほどの魔法はゲームの影響もあるようです

エクストの世界は科学が発達しているので、ゲームも電力機もそこからです」

俺は持ってきたゲーム、『版画彫り』を取り出す。

プレートにはひらがなで『はんがほり』と書いてあったが、正式なタイトルは『版画彫り』だ。

「つまりは、俺とリムのどちらかが遊んだ事のあるゲームのイメージとかで魔法を使えるようになった、とかですか?」

そう、『くらっしゃーほっけー』なんてゲームは俺の世界に存在していない。

リムは俺をじっと無垢な瞳で見る、やばっ…可愛い…

「そうだろうな、リムも『はんがほり』なんてゲームは知らないよ

リムとあーちゃんは二人共ゲーム好きみたいだからな、波長が合うのかもしれない」

「やばっ…ちょっと嬉しいかも」

リムほどの美少女に波長が合うと言われるのは悪い気はしない。

むしろ嬉しいかも!

アルエットさんが俺とリムの方を見る。

「さて、彰さん、本題に入ります、アーガス家は見ての通り没落していますので

本当は今日、出稼ぎの旅に出るつもりでした」

出稼ぎ…ああ、出かける予定って言ってたのは、そういうわけか。

「そこでいきなり俺が出てきておじゃんになったと」

アルエットさんの反応を見ると、その通りらしかった。

「本当はな、リムとエクちゃんの二人で水の地方に

アルお姉ちゃんが炎の地方に旅に行く予定だったんだ

お姉ちゃんの仕事は期限があさってまでみたいなんだよ」

とにかく、リム達は俺のせいで困ってるようだ。

「あー…ごめんなさい、俺のせいで迷惑かけて」

「うん、気にしなくていいよ、お姉ちゃんが交換条件あるみたいだ」

リムが言うと、アルエットさんは力強く俺を指差す。

「これからリムと魔法の特訓をして下さい、ようやくリムも必殺技が習得出来そうなんです!

私はエクストと特訓してます」

俺はその提案を飲む事にした。

「はい、迷惑かけたらこれぐらいはOKです」

だが、それは良いとして、次の提案で俺はとんでもない事に巻き込まれる事になる…

そう…俺の人生を大きく変える出来事に…


「あなたが元の世界に帰還する方法もわかりませんし

あなたがいればリムは大きくパワーアップします

と…言うわけで、早速明日からリムとエクストの旅に同行しなさい!!拒否権はありません!」


は?えっと…聞き間違え…かな?

リムは何故か納得した様子で、「ほお」と声を出していた。

「も、もう一回お願いします…」

「旅についていきなさい、以上です」

な!なあああああああ!

「な!なんですか!それ!戦闘力ない俺にそんな事言われても無茶ですよ!

そう!エクストに力ないとか断言されたし!」

俺は爆弾発言に驚愕した、マジで何言ってんだ!この人は!!

「リムとエクストが優秀だから大丈夫ですよ♪」

「いや!何を根拠に言ってるんだよ!?」

俺は思わず敬語を忘れていた、二人強くても俺が無力ならその俺が大丈夫じゃないじゃん!

アルエットさんが一枚の写真を取り出す、エクストを使って撮影したと思われる写真だ。

写真には、俺が全裸のリムにバックドロップを仕掛けているシーンがあった…

リムは申し訳なさそうな様子だった。

「ああ、この世界ではあの(バックドロップの)ポーズはな」


『私はもう一生あなたの橋のようになってあなたに付き従う奴隷になります

踏んで下さい!一生あなたに従います!!』


「と言う意味なんだよ、警告するヒマがなかったな、ごめん」

な!なななななな!バックドロップは確かに橋にも見えるけど、リムの世界にはそんなでたらめな理由があったのか!?

「いや!そんな常識捨てろよ!?一生服従とかどれだけMなんだよ!

プロレス出来ないじゃん!

ってか法律的にそれはどうなのよ!人権とか!」

リムは真剣な目をしてるから、嘘を言ってるようには見えない…

「と言うわけで、妹のリムに服従と言う事は、姉の私にも服従です」

アルエットさんは笑ってるけど、その笑みは悪魔の笑みにしか見えない…

「法律的にそんな独善的なのはダメですよね!フツー!」

俺は声を張り上げて全力で抗議する、そんな法律ありえないし!

「法律…それならあなたのこれも法律違反ですね♪

あなたの世界でも、これは18歳未満は所持したらダメですよね?燃やそう」

俺はアルエットさんの言葉にハッとする、背筋が凍るのを感じる…

アルエットさんが取り出した物を見ると…

そこには!俺の大切なAVやエロゲーがひとまとめに縛られて存在していた!

ちなみにエロゲーはタイトルが人前ではとても言えないタイトルで。

TVアニメ化やコンシューマー移植絶対不可能のエロ100%のガチなやつだ。

「げ!げえええええっ!!」

俺は思わず悲鳴をあげる、本気で燃やす気だ!

「きちんと従ってくれたらこれも無事に返却します、断ればどうなるか…わかりますね?」

「腹黒いな…あんた…」

アルエットさんはしたたかと言うか…なんと言うか…

的確に男子高校生の弱点もついてきやがる!

「従って下さるなら留守中もあなたのお部屋も結界でお守りしますよ?

それに、一人であなたがこの世界で大丈夫だって保証もないですから」

「無理しなくて良いんだぞ?君の好きにすれば良い」

リムが俺にそう言ってくれるのは嬉しい、マジで天使のようだ!

俺はエログッズと命とかの事を考えると、ヤケクソで決断した。

リム達に同行した方が安全だ。

「わ!わかりましたよ!行きます!ついて行きます!」

そうだ、こんな世界で俺一人じゃ無理だと思うし。

可愛い女の子と一緒の方が良い、プラス思考で考えよう!

「成立ですね、ありがとうございます」

アルエットさんは丁寧に頭を下げる。

態度は丁寧だけど、やっぱり腹に一物抱えてるな…この人…

「故意であろうとそうでなかろうと殿方が

私の溺愛する妹のボンキュッボンの超ナイスバディを生で拝んだからにはただで許す気はありませんから…」

アルエットさんはシスコンなのか?妹が第一な発言だ。

「私だって顔をうずめた事はありませんのに…」

なんか小声でアルエットさんが変な事を言った気がしたが、聞いてない事にした…

「旅について来てくれるか、ありがとう、これからよろしく」

リムは手を握ってくれる、あ…手細くて柔らかい…

静かに笑うのが可愛い。

「あ、ああ、よろしく…」

こうして、俺達の旅はかなり強引に、無茶苦茶な成り行きで始まった…



俺達はしばし魔法の訓練をしていると、外は夜になっていた。

俺の世界と違って街灯なども存在しない。

だが、俺の世界より月の光が眩しいため、そこまで致命的な暗さにはなっていない。

リムは杖を構える、その杖は細部に魔法の紋章が刻まれていて。

魔法の石も埋め込まれていた。

「行くぞ、″だんがんがーるず″だ、リム」

俺が腕輪のプレートにタッチすると、リムもそれに反応する。

「わかった、だんがんがーるず!」

リムの服装が女子高生の制服に変化し、杖がマシンガンに変化する。

マシンガンを構えてそれを的に向けて放つ。

アクションも冴えていて、直立不動で撃つのではなく、横飛びやジャンプも交えている。

銃撃は的確に的に当たり、破壊される。

俺とリムと、魔法の訓練をしていた。

やはり読みは当たっていて、俺とリムの遊んだゲームのイメージで魔法が形成されているようだった。

俺やリムがそのゲームに対してあるイメージが強ければ、それに反映される。

『ダンガンガールズ』とは、女の子達が銃で撃ち合ったり尋問したりするゲームだ。

何故かやたらと身体が丈夫で戦車砲を受けても死んだりしないが。

その代わりになにかと裸になりやすい。

「よし…ちょっとは特性わかってきたか?」

俺はダンガンガールズに対しては女子高生が撃ち合ったりするイメージが強い。

だからリムの服は制服に変化したんだ。

リムが遊んでいるらしいゲーム、くらっしゃーほっけーの時はリムの服が変化しなかったから。

お互いのイメージの強い部分が出るのだろう。

「ところでさ、この世界の人ってマジでこれも知らないの?」

俺は世界的に有名な黄色い電気ネズミと夢の国のネズミのグッズを取り出した。

具体的に名前を言ったら危ないよな…

「なんだそれ?全く知らないよ」

リムは本当にそれを知らない様子だった。

「うん!俺は本当に異世界に転移されてるんだな!」

だって地球人ならこの二大ネズミはみんな知ってるもん!

「さて、気を取り直して次行くか、″ほかっくもんすたー″!」

「ほかっくもんすたー!」

俺は先ほどの電気ネズミをイメージして、プレートをタッチする。

すると、リムの服装は黄色い電気ネズミの着ぐるみになっていた。

着ぐるみからはつけ耳をつけたリムが出て、中身がリムだと言う事はわかるようになっている。

ホカックモンスターとは、世界的に有名なモンスターを捕獲して旅するゲームだ。

「へ、変身じゃなくて着ぐるみ!?」

「なんだか動きづらいな、これ、とにかく攻撃だ、はあっ!」

リムは着ぐるみを大して気にする様子もなく、身体から雷撃を放つ。

周囲に雷撃が迸り、周囲を眩しく照らす。

地面は雷撃により砕け、土の破片が舞う。

技自体はかなりカッコいいけど、着ぐるみってかなりビミョーだ…


訓練が一段落した辺りで、リムが俺に言う。

「ふう…訓練に付き合ってくれてありがとうな」

リムは少し疲れていた、だけどその顔はどこか満足そうだ。

「いやいや、俺は他にこの世界でする事ないしさ、気にしなくて良いよ」

そう、成り行きがどうとは言え、俺の身も部屋も守るためにはこうするしかない。

だから親切心、ってほど立派じゃない。

「そうか、優しいな君は」

リムは静かに笑う、その顔に少しどきりとしてしまう。

俺は照れくさくなったから、話を変える事にした。

「なあ、ところで俺この服で旅に出ないとダメ?男用の服とかないかな?」

俺の今の服装はTシャツとジーンズだった、俺の世界ならポピュラーだけど。

ファンタジー世界なら悪目立ちするのは確実だ。

「その服は目立つだろうが、あいにくお金がないんだ、我慢して欲しい

なんなら女の子用の防具の予備ならあるが…それで良ければ」

「いや、すんません…このままで良いです!」

俺は光より早く即答した。

ちなみにアーガス家には現状女性しかいないらしく、男用の服は存在していない。

だから俺の服をファンタジー風のやつに変える余裕もないんだ。

「綺麗だろ?今日の月は」

リムが指を指すと、美しく大きな青い月が幻想的に輝いていた。

空気感も違うし、地球とは違う良さがあるのは結構楽しいな。

「うん、なかなか良いと思う、俺の知ってる月とは結構違うな」

そう言い、俺はスマホを取りだし、地球の月の画像を見せる。

「ほお…黄色い輝きが周囲を照らしてるな、こっちも綺麗だ」

リムはそう言い、スマホの画像に見とれる。

俺とリムは心地良い疲労感を感じながら、それぞれ月を見ていた。


リムとアルエットさんが屋敷の周りに何やら特殊な水をまいていた。

アルエットさんが魔法を唱えて、リムが指をパチンと弾くと神秘的な光が迸り、屋敷と俺の部屋を覆う。

結界の儀式のようだ。

翌日、俺達は旅立ちの準備をしていた。

しっかりリム、エクスト、アルエットさんはしっかり武装していた。

リムとアルエットさんは一つの大きな星の紋章が刻まれている服を着ていた。

この星の紋章は家紋か何かか?

が!俺はこの世界なら失笑物だろうTシャツとジーンズと言う姿だった…

持つ手荷物は少ないが、エクストは科学の力である程度は手荷物を異次元に収納出来るらしい。

なのであまり物を持つ必要はないようだ。

「さて、いよいよ旅立ちだ」

「出発ロボ!(屋敷の)再生の旅に!」

「私の力を世界に知らしめる時です!」

リム、エクスト、アルエットさんは気合い満々だったが…

俺は戦闘力を持ってないので、戦っても生き残れない!と思う…

たまたまリムの力を引き出せるらしいし、脅迫されたら同行ってなんとも情けない理由だ。

「お、お手柔らかに…」

俺が戸惑っていると、アルエットさんが声をかけて来る。

「あ、くれぐれもリムとエクストに手を出さないように、あんなに可愛いから手を出したくなる理由はよくわかりますし、女性の胸ばかり見るスケベの化身のあなたなら不安ですが、手を出したら問答無用で吊るします」

「おいおい!無茶苦茶言うな!あんたは!いきなり食いつくほど鬼畜じゃねえっての!ってかそんな力は俺にねーよ!」

アルエットさんは出会ったばっかなのに無茶ばかり言う…

最初は物腰柔らかかったのに、猫被ってたんだな…

「なあ、この人いつもこうなの?」

俺はリムに小声で訪ねる。

「そうだな、敵意ある相手や、リムやエクちゃんに手出した相手にはこうだよ

少しやりすぎだとも思うな」

リムはそう言い、アルエットさんの前に立つ。

「お姉ちゃん、リムは気にしてないからそれぐらいにしてくれないか?

悪気なかったんだと思う」

リムが言うと、アルエットさんは少し穏やかになった。

「ええ!本当にわざとじゃないんです!それでも僕はやってないとは言いませんが、わざとじゃないんです!本当にマジで!!」

俺は必死に弁明した、わかってくれて良かった…

「ふう…リムがそう言うなら…」

アルエットさんが言う、俺はその様子に安堵した。

「まあ、胸に顔突っ込まれた時はちょっと複雑な気分だったが

あと、お風呂でリムをじろじろ見てたのはなんだ?リムに何かついてたか?」

リムの言葉は、再び俺の立場を悪くするのには十分だった…良くも悪くも無垢なんだな…

何がって…そりゃあんな身体の女の子の裸なら誰でも見るじゃん!

「…………………………」

アルエットさんが顔をピクピクさせながら、悪鬼羅刹のような顔で俺を見る。

かえって何も言わないのが怖い…

「あ…あ…」

アルエットさんは怒り顔を抑えて無理矢理笑顔を作り、俺の方を見る。

こ!こえー!!

「旅のご無事を祈っています、リム、エクスト、彰さん

また会う時までごきげんよう」

そう言い、アルエットさんは頭を下げる。

「は!はい!死なないようにします…」

死なない事が第一だ、今は俺がこの世界の底辺らしいから…

「うん、リムも頑張るよ」

「はーいロボ!」

アルエットさんは別れを告げ、素早いスピードで目的地に駆け出した。

「しっかし、アルエットさんはあの性格なら悪の幹部とかお似合いだと思うな

″あくひろ″!なんちゃって」

俺は冗談で、アルエットさんの方に魔法を放つ真似をする。

俺はアルエットさんのドス黒い性格なら悪の女幹部の格好が似合うと想像した。

あくひろってのは、『悪とヒーロー学園』の略だ、そのゲームに悪の女幹部が出てる。

「あくひろ!」

リムのキリッとした声が聞こえる、光が発生し、それがアルエットさんの方向に向かう。

うっかり魔法が発動したんだ!!

アルエットさんの姿は見えるか見えないかの瀬戸際なので、ヒットしたかはわからない…

多分俺の予想なら、ヒットしたなら女幹部のコスプレになってる事だろう…

「ど、どうやら…腕輪をつけてたら少しでも放つ意思があれば

腕輪をいじらないでも弱い魔法ぐらいなら発動するみたい…ロボ…」

「あ!当たってませんように当たってませんように当たってませんように当たってませんように当たってませんように…」

もしもアルエットさんの服が恥ずかしい服に変化してたら、次に会う時にどんな報復が待ってるやら…

そう考えると恐ろしく、俺は震えた…


俺たちはしばらく、目的地に向かって歩いていた。

緑色の草の中に水色の草か混ざっていたり、地球と植物などの形態が異なっている。

道を歩いていると、水色の木も見える。

俺の目の前にピカピカとまばゆく輝いた蝶かよぎる。

リムが水色の木の前に立ち、そこに実っていたリンゴほどのサイズの青い果物を取っていた。

「少しもらおうかな?」

俺がその果物が何なのかはわからないが、重要なのかもしれない。

「俺の世界とちょっと違うんだな、ここは」

俺は素直な感想を口にする、この世界では自然も多くて見たことのない物もよく見かける。

空気もどこか違う感じがするし、それを見るのも旅の醍醐味かな?

こんなヤバい状況なのに、少しワクワクする。

景色とか全然見たことない場所ばっかりだから。

「すごいな、ここは…」

俺は率直な感想を口にした、頭じゃ俺の好きに出来るほど甘くないのはわかってる。

たけどやっぱり好奇心が刺激される!


しばらく歩いて行くと、町が見える。

だが、その町の入り口の辺りで、妙な光景を目にした。

赤い袴をまとい、魔物達と戦ってる女の子がいた。

黒い肌を持ち、ずるがしこい顔をしたゴブリンの群れ相手に武器を駆使してたくみに応戦している。

「せいやあっ!」

ゴブリンの放つこん棒を武器で受け流し、直後に武器で渾身の一撃を繰り出す。

「グワアッ!」

その一撃は鋭く、ゴブリンは一撃で気絶する。

ああ、RPGで言うと町に入る直前に戦闘に入った感じか。

その娘は服装は和風に近い服装で、袴(はかま)を身に付けているのに、ショートカットの髪の色は何故か派手な黄緑色だった。

俺もエクストを見た後だからそれぐらいじゃ全然驚かない、が!彼女が手にしているのは剣や槍じゃなく…

「剣じゃなくてオールだよ!あれ!!」

彼女が手にしていたのは、武器ではなく船を漕ぐ道具、オールだった…

なんでそんなもんを武器にしてるんだ!武器にするより船をこげよ!

「とにかく、なかなかの使い手のようだけど多勢に無勢みたいロボ」

エクストの言う通り、その娘は敵の数に押されていた。

リムがどこからか双眼鏡を取り出す。

「あのゴブリン達は…どうやらアーガス家と敵対してる魔王軍の所属みたいだな」

俺はリムから双眼鏡を借りてゴブリンを見る。

よく見ると、ゴブリンの服には悪魔の紋章が刻まれていた。

リムはゴブリンの群れに駆け寄る。

突然の乱入者に女の子もゴブリンも驚く。

リムは声を張り上げて言う。

「ここは町の入り口だ、双方戦闘行為は中止せよっ

周辺住民の平穏を乱す事になる」

おお!度胸ある!かっこいい!

「私の名はアーガス家を継ぐ者

リムエット・アーガスだ、刮目せよ」

リムがエクストの方向に手をやる。

アシスタントのエクストが何かを取りだそうとしているのか。

取り回しの悪い物をなかなか取り出せないような様子だ。

せっかくの決め台詞から大分間が開いてる…

「ふぅ…やっと出たロボ…」

エクストがリムに石板を手渡す、その石板はヒート坂ほどの大きさで取り回しが悪いのもよくわかる…

固くて重いもんな…某有名時代劇の紋所の取り回しの良さはよく考えられてる…

リムが石板を掲げる、刮目させるまで大分時間かかったな…

「…………誰それ?」

「前代未聞ナホド没落シキッテイテ

風ガフケバ飛ビソウナホド弱小ナ一族ダナ」

しかも女の子は知らない上に呆れてるし。

ゴブリンの言う事はすげー正論だった…リムには悪いけど事実だし。

「ジャマダ、失セロ」

ゴブリンが放った矢がリムに飛来する、エクストはモップを取り出し、その矢を叩き落とす。

エクストはゴブリンに向けて怒りの表情を向けていた。

可愛らしいロリ顔のせいか顔はそんなに怖くはないが、怒りのオーラが恐ろしい…

「リムお姉ちゃんに手をあげるなんて…許さないロボ!!」

エクストがモップを構えてゴブリンの群れに突撃する。

しかもモップの先からはビームが発生してるし!ビームモップってやつか!?

「うおおお!ビームモップロボ!」

エクストの怒りのモップの一撃がゴブリンに炸裂する!その一撃は衝撃波を巻き起こし、ゴブリンの群れを吹き飛ばす!

「何だか知らないけど助かったっ!わたしも負けてられない!」

女の子はオールを振りかぶり、地面に全力で叩きつける。

「地面爆裂斬!」

叫びと同時に大地は揺れ、地面はえぐれて土の塊がゴブリンの群れに襲いかかる!

「こ!こんなんありかよっ!」

俺はその衝撃で立ってもいられず地面に座ってしまう。

「あっ!」

エクストも同じように倒れてしまう。

「モ!萌エタゼ…」

突然変な声が聞こえたのでその方向を見ると、ゴブリンがエクストの方を見て萌えて脱力しきっていた…

「はっロボ!?」

エクストの方を見るとエクストがパンチラしていて、小さなお尻を包む猫の絵が書いた可愛いパンツが…

確かに一部の特殊な趣味の持ち主なら眼鏡ロリメイドがパンチラしたって状況は萌えるのはわからんでもない…

俺は眼鏡もロリ属性もないが、少しドキっとした…

「ってか無理に語尾にロボとかつけなくて良いから!『はっ!?』でいーだろ!」

エクストはそこまでその口調でキャラ付けしたいのか…

「あっ!危ないロボ!」

ゴブリンが背後から袴の女の子にこん棒で殴りかかる。

こん棒は女の子に炸裂し、たんこぶが出来てダメージを受ける。

たんこぶぐらいで済むって…

「いったー!これはお返しだよ!うおお!」

女の子はこん棒を掴んで、こん棒ごとゴブリンを振り回す!どんな腕力してるんだよ!

「ワ、ワワワアアアア!!」

更にゴブリンの群れにそのゴブリンを投げつける!

その様子に一部のゴブリンが引いていた、俺もぶっちゃけ引いた…

「あっ!ああああっ!ロボ!」

エクストはボウガンで固執に射撃を受けていた、しかも怯んでるスキに何度も連射される地獄絵図!セコい!

三國時代で無双する某アクションゲーでこんな光景があったな…

「むっかーー!許さないロボ!メガネビームッ!」

エクストの目からレーザービームが放たれる、草を刈るようにゴブリンの群れはぶっ飛び、宙に舞う。

そんな光景を眺めていると、矢が俺の頬をかすめて、血が流れる。

痛くないわけじゃないが、痛みよりもカオスな状況に気をとられていた。

「も、もうめちゃくちゃだあっ!!」

俺は思わず叫んでいた、なんなの!この状況っ!?

リムは杖を手にとって駆け出す。

確かにこの状況を放置するわけにはいかないよな。

「とりあえず殲滅しよう、あーちゃん援護頼む」

「とりあえずって…それで良いのか…」

せっかくキメたのに台無しになったからな、今は俺とリムの事を誰も気にしてないし。

とりあえず俺も矢の恨みだ!

俺は腕輪を起動し、プレートに触れる。

そこには、俺の知らない単語があった。

『くらっしゃーしょっと』と。

俺の世界にはそんなゲームはないから、リムの知ってるゲームって事か?

「行くぞ!″くらっしゃーしょっと″で良いのか?」

リムの服装は変化しないが、リムの眼前に光の球が出現した。

「くらっしゃーしょっと!」

リムはビリヤードの要領で球を勢い良く突く。

球は勢いをつけ、スピードを上げてゴブリンに炸裂し、その球は幾多のゴブリンに激突して跳ね返り。

一体だけではなく多数の敵を倒す事に成功した。

「ギャアッ!」

ゴブリンの悲鳴が聞こえる。

俺は畳み掛けるように腕輪を操作する。

「よっしゃ!続けて行くぞ!″だんがんがーるず″!」

「だんがんがーるず!」

リムの服が女子高生の制服に変化する、リムはバズーカを構える。

どうやら魔法は発動時の俺とリムのイメージにより変化を見せるらしい。

俺が遊んだ事のあるゲームなら俺のイメージが、リムが遊んだ事のあるゲームならリムのイメージが出るようだ。

前はマシンガンだったか、俺がバズーカを思い浮かべたたむ今は武器がバズーカになっている。

エクストがリムの隣に立ち、バズーカを構える。

「エクちゃん、リムもやってみるよ」

「ダブルバズーカロボ!」

バズーカは放たれ、ゴブリンの群れは爆風に包まれる。

俺は肌で周囲の変化を感じる、熱い空気が迸る。

「せいっやあっ!」

袴の女の子は下から打ち上げるかのような勢いでオールをゴブリンに打ち込む。

ゴブリンは上空に舞い、ジャンプしてそれを追撃する。

「空中連撃斬っ!」

斬ってないけれど、何度もゴブリンに空中で一撃を浴びせていた。

大分ゴブリンも撤退し、数が減っていた。

断然戦況は俺たちの優位だ。

ところで、エクストに戦闘力低いっていわれたけど。

「俺はさっきから力が沸いてきた(気がする)んだ!強くなれた(気がする)んだ!」

非現実的な状況の戦闘になると中二魂が燃えてくる。

「いや…あの…悪いけど1ミリも強くなってないロボよ…」

エクストは呆れた様子で言う、エクストは強いから俺の気持ちがわからないんだ!

「悪を倒せと俺の拳が轟き叫ぶんだ!!爆発!ゴッドパンチ!」

俺は拳を構えてゴブリンに突撃する!

「やめるロボ!バカ!!」

俺の拳はゴブリンに炸裂!

「ジャマダ、失セロ」

したけどゴブリンにはダメージゼロで。

ゴブリンにこん棒や弓を使わせるまでもなく、俺はパンチ一発でKOされた。

「ぐわらばっ!!」

い!いっつー!

俺は三下のような悲鳴をつい出してしまい、派手に吹き飛ばされた。

身体に激痛が走る!そのままその殴られた部分がぶっ飛びそうな程!

俺は木に叩きつけられ、大ダメージを負った…

「あーあ…だから言ったロボ…大丈夫ロボ?」

エクストが呆れている、そりゃそうだな…エクストの言う通りだ…

「ず、ずびばぜん…にどどじまぜん…」

リムの方を見ると、杖を駆使して戦闘をこなしていた、服装が元に戻っている。

「はあっ」

ゴブリンの矢をジャンプして回避し、その跳躍で背後に回り込み杖をゴブリンに炸裂させる。

まるで踊るかような戦い方だ。

別の相手が背後からこん棒をリムに振りかざす、リムはそれを杖で受ける。

「着眼点は合格だ」

リムは足を上げ、ゴブリンの腹を蹴る。

見えちゃったよ…さっきの蹴りの時に青いフリルがついた下着を。

ちょっと嬉しいけど。

蹴りで怯んだゴブリンに向かって杖を一旦引いて突きたてる。

「グッ!」

そのゴブリンは俺よりは貫禄のある悲鳴をあげて、杖の勢いで弾き飛ばされる。

体術も出来るようだ、派手さはないけど無駄がない動き。

「さて、そこだな」

リムは杖から火球を発生させる、その火球はゴブリンの弓に火をつけ、破壊した。

俺がサポートしないでも大きな魔法を使わなければ戦えるようだ。

「リム、すっげえ…」

俺は率直な感想を口にする、リムも満更でもなさそうだ。

「そうか?ありがとう」

暴れまわ…戦闘を続けていると。

ゴブリンの数も減ったようでもう一息で全滅させられるラインまで来ていた。

不殺を心がけているのか、今のところ一体たりとも殺してはいない。

「あーちゃん、凄いの一発頼むな」

リムの言葉に俺は頷く、エクストと袴の女の子も気合いが入っている様子だった。

「よっし!やるロボ!」

袴の女の子も前線に立って敵の数を減らしてくれてる。

「奥義!粉微塵(こなみじん)斬り!」

袴の女の子はそう叫ぶと同時に、目にも止まらぬスピードでゴブリンを何度も何度もオールで殴り付ける、上下左右で何度も何度も打撃が炸裂する。

微塵斬りとか言ってたけど、明らかに打撃なんだけどな…獲物がオールな限り。

「さて!行くロボ!」

エクストはどこからか自分の体ほどの大きさがあるバケツを取り出した。

「おいおい、バケツって…エクストさーん…そんな物で…」

そのバケツを構えて、ゴブリンの群れに向ける。

「黙って見てるロボ、必殺!ビームバケツロボ!」

エクストが叫ぶと同時に、バケツから膨大なビームの粒子が一気に放たれる!直視出来ない程の光のエネルギーがゴブリンの群れを包み込み、大爆発を巻き起こす!

「なんだそのバケツは!?」

「企業秘密ロボ、バラしたらボクもどうなる事やら…」

俺はエクストのバケツが気になったが、恐ろしい事になりそうなのであえて追及しない事にした…

「さて、これでトドメだな、あーちゃん、プレートに触ってから『くらっしゃーほっけー』と言ってくれ」

俺はリムの指示に従う事にした、くらっしゃーほっけーは…俺のバエルのプラモを破壊したアレだな!

プレートのくらっしゃーほっけーの文字を見つけ、それに触れる。

「ああ、″くらっしゃーほっけー″!」

「くらっしゃーほっけー!」

空気の流れが変わる、服装の変化こそないものの、リムの眼前には巨大な円盤が存在していた。

昨日のくらっしゃーほっけーと効果が違うのは、大技として使ったからか?

「ゲ!ゲゲッ!オレタチ、モカシテヤバイ!?」

ゴブリン達はリムの魔法に恐怖していた。

「はあっ…せいっ、せいっ!」

リムが素早く正確にゴルフの要領で杖を使い、何度も何度も円盤を弾く。

その円盤の勢いは激しく、勢いのまま幾多のゴブリン達をまとめて弾き飛ばす。

ほとんど抵抗力を失っているのを見て俺は勝利を確信した。

「よし!」

思わずガッツポーズだ、俺はただサポートしただけなんだけどな…

「バーカバーカ!次ハ負ケンカラナ!」

一人のゴブリンから情けない捨て台詞が聞こえてきたと思いきや。

その直後に爆弾がリムとエクストと袴の女の子に投げつけられる。

「えっ…」

さすがのリムも状況を飲み込めないらしく、直後に3つの爆弾が爆発し、3人は爆風に包まれる!


「お!?おい!大丈夫か…って!?ええっ!?」

俺は心配して駆け寄ると、驚きの光景を目にする事になる。

なんと!リムと袴の女の子がパンツだけの姿になっていた!

わずかに上半身と下半身の布は残っているが…

「ああ、防具破壊されたけどすぐに直せるよ」

リムは胸を隠そうともせずに普通に荷物にかけよっている。

うわ!マジかよ!歩く度に色っぽく揺れてるし!刺激が強すぎる。

「直す直さないの問題じゃないんだよ!!」

俺がは強く言うが、リムは頭に『?』がついてる様子だった。

「………………」

エクストは幼女みたいな体つきなのに、それに不釣り合いな大きな胸が色っぽい。

見てるだけでなんだ…不味い気分になる。

基本的にパンツだけの姿だが、何故か他には眼鏡と靴下だけは無傷だった…

猫耳ロリ巨乳が眼鏡と靴下だけとかマニアック過ぎだろ!

「ってかなんで眼鏡と靴下は無傷なんだよ!」

エクストはシステムがショートしてるのか、先程から無言だ。

「きゃっ!ちょっとっ!来るなっ!見るなっ!」

袴の女の子はスリムな体つきだった、無駄なくしなやかな身体が色っぽい。

慌てて身体を隠す仕草や小さな胸もまた…

ダメだ!見ちゃいけないのに目をそむけられない!

「死にたい…?」

地獄の底から聞こえるような冷たい言葉が耳に入ると同時に。

ふいに俺の頭に固い物がつきつけられる。

「え…………?」

それはオールだった…あの袴の女の子が俺の背後に回り込んでいた。

「助けてくれたのには感謝するけど、これ以上見たら頭ぶっ飛ばすよ…」

「ひ!ひいいいい!!」

俺は光の早さで目を背けた!


十数分後、あっさりリム達の衣服は直っていた。

残った衣類の布に魔法薬を塗りつけるとみるみる内に復元されていた。

「防具破壊爆弾とは、その名前の通り相手の防具を破壊する武器だ

肉体的なダメージはたいした事はないが厄介な武器だよ」

リムが説明してくれる、先程の爆弾にはそんな効果があったんだ。

「ちなみにな、今服を復元した薬は防具修復薬だ

防具修復薬はその名の通り防具などを修復する薬だ、ある程度その部分が残ってれば修復できる」

リムは冷静に解説する、つまりはある程度残っていれば再生出来るってことか。

エクストがぷんすかと怒っていた、ほっぺたを膨らませて怒りを見せている。

「絶対にあのゴブリン許さないロボ!!!!!」

エクスクラメーションマークが5つ付きそうなぐらいの大きな声で、エクストの怒りの程度が理解出来た…

「わたしの名前は『里見(さとみ)なな』、って言うの

強くなりたいから武者授業中だよ!」

袴の女の子の名前はななと言うらしい、大人っぽいリムや幼女のエクストに比べると背も平均的で、顔立ちも年相応の可愛い顔立ち、胸は小さかったけど。

「リムエット・アーガスだ、リムで良い」

「エクストだロボ、メイドロボだロボ」

ななはエクストがロボだと聞いてもそれも慣れた様子だった。

「魔法使いにメイドロボだね、助けてくれてありがとう」

ななは俺たちに礼を言う、助けたってより、きっかけはエクストが暴挙にブチ切れて暴れただけな気がするが…

名乗ってる最中に攻撃されたらブチ切れるのもわからなくはない。

「この戦いに正義はない、ロボ…」

エクストは少し反省したような口調で言う。

まあ、いきなり矢放たれたから一応正当防衛だろ、多分。

「ああ、エクちゃん気にするな、リムのために怒ってくれたんだろ?嬉しかったよ」

そう言ってリムは優しく微笑む。

「リムお姉ちゃん!」

エクストはリムに甘えるように抱きつく、凶暴だけど可愛い部分もあるんだな。

「俺は渡辺彰、一応は君たちの立場なら異世界人…になるかな?」

俺はななの方を向いて言う。

「彰君ね、わかった

たまにあるらしいんだよねー、転移とかは」

ななは前例があるからなのか、俺が転移された事については驚いていなかった。

その方が話が早くて助かる。

「前例があるなら、俺が初めてってわけじゃないかな?」

有力な情報を聞いてちょっと安心する、同じく転移された人がいれば、情報を共有出来るから。

俺は何故ななが刀剣類ではなく、オールなんて使っているか知りたかったが。

どうせすぐに別れる事になるだろうから訊かなかった。



水の町にたどり着くと、俺はその町の光景に圧巻された。

「すっげ…」

商売根性を出すように沢山の店が並んでいて。

大きな噴水があって、壁には滝のように水を流している所もある。

上品な感じじゃなく、リゾート地みたいな雰囲気だ。

町の中心部には何か偉いらしいおっさんの大きな像が立てられていた。

俺達とななは町に足を踏み入れた瞬間、何やら大きな声で住民の話し声が聞こえてきた。

「あーあ!これから町外れの神水の森が魔王軍から襲撃を受ける!誰か強い戦士様はいないかなー?3人ぐらい」

うわー…やたら説明的だ…しかも俺たちが入って来た直後に話始めたし。

「あー!オールを使う和風の戦士と化学兵器を使うロリメイド眼鏡ネコミミ戦士と長身の魔法使いがいればなー!」

こ…こいつ!露骨に助けを求めてやがる!!しかも俺は勘定に入ってねーのかよ!

「ふうん、なーちゃん以外にオール使いがいて

エクちゃん以外にも眼鏡ネコミミメイドがいるのか」

リムがあからさまに自分達だと気づいてない様子で言う。

リムはどこか天然のようだ、大人びた雰囲気なのに。

「オール使うのなんてなな以外いねーよ!多分…

エクストみたいに萌え属性をこれまでもかってぶちこんだ奴もそうそういないと思う!」

あいつらは戦闘を町の入り口から見物してやがったな!

そこまで見てたって事は、つまり俺がぶっ飛ばされた時も無視してたんだ。

「さあ、宿を探そうか」

俺は頭に来たので、露骨に無視した。

するとマッハで住民が接近し、泣きそうな顔で俺にしがみつく。

うん、リムとななにやったらセクハラだし、エクストに至ってはしがみついたら完全に犯罪者だから。

男の俺にしがみつくのは正しい。

「すいません!これから魔王軍が聖なる森に襲撃して来ます!助けて下さい!フリーズ!私は町長です!」

俺は町長さんの都合の良い話に無視腹が立っていた。

「イヤですよ!あなたらはそこまで見てたのに俺がぶっ飛ばされた時は何もしなかったじゃないですか!

天地大明神が許したとしても俺ァそんな小汚ない行為が許せぬ!!」

「だいたい同感ロボ、それにいきなり過ぎて準備も出来ないロボ」

俺は抗議する、都合の良い時ばっか頼るってのは情けないぞ。

「わたしはただ新しい場所に行ければ良いかな?やるっ!」

ななはあまり細かい事を気にしないのか、一人でも防衛する気だった、目を輝かせて依頼を受けた。

別にななとはパーティ組んでるわけじゃないが、一人で大丈夫なのかは気になる。

「人数は多い方が良いから他の方もお願いします!金は弾みますから!これぐらい!」

町長さんは紙をリムとエクストに見せる。

その金額を見た直後、リムとエクストは何かを相談していた。

「これなら…リンゴも沢山…」

「電子マクラが欲しいロボ…」

「新しいゲームが…」

「電子マッサージ機が…」

リムとエクストがひそひそと話してる、しかも個人の欲望の事しか聞こえないような…

「仕方ないですね、困ってる人を助けるのがアーガス家の家訓ですから」

「やるロボ!正義のために!」

リムとエクストが提案に応じる。

「おお!流石戦士様!ありがたい限りでございまする!」

町長さんが感涙してむせび泣く。

「いや!正義云々より思いっきり俗っぽい事聞こえたんですけど!」




俺達は森の泉の前にいた。

森の中は光が差し込んでいて明るくて。

泉は透き通るかのように透明で澄んでいて美しい。

「それでは、この休憩小屋もご自由にお使い下さい、くれぐれも破壊しないように、くれぐれも、くれぐれも!」

町長さんは俺たちを案内して、町に退避した。

くれぐれもって強調されるとかえってイヤなフラグ立ってるんだけど…言霊ってやつ?

これからしばらく襲撃に備えるってとこかな?

俺はななに気になる事があったので質問をぶつけた。

「ななはなんで旅してるんだ?」

「えっとね!わたしは強くなるために旅してるの

あとついでに観光!観光っ!!『かぁむ界』から来ちゃった!」

観光の部分が力強く強調される辺り、観光が主な目的なんだろうな。

ついでじゃなくてむしろそっちがメインっぽい。

「かぁむ界…?」

俺はその意味がわからなかった、何の話だ?

「ああ、ドタバタしててこの世界の事を説明してなかったな、エクちゃん頼む」

エクストはリムに指示されてホワイトボードを取り出した。

「わかったロボ!」

リムがエクストの取り出したホワイトボードに文字を書いて行く。

「つまりな、この惑星、『マルチディ』には、様々な世界があるんだ」

リムは映像を指差して解説を続ける。

どこからか眼鏡を取り出しくいと上げる辺りに、リムの気合いが伝わる。

リムの話によると惑星マルチディには。


・幻想と冒険の世界

『ファンタード界』


・機械文明の世界

『カッタツ界』


・古き良き文化を重んじる

『かぁむ界』


などなど、いろいろな世界が別れているらしい。

「つまりだ、リム達が今いる所がファンタード界、エクちゃんの故郷がカッタツ界、なーちゃんの故郷がかぁむ界と言う事だ」

リムはどこか誇らしげに解説する。

解説を終えると雰囲気作りの眼鏡をしまった。

「ああ、説明ありがとう、結構特殊な世界なんだな、ここは」

リムの話が本当なら、確かにファンタジー世界に科学世界のロボットがいてもわからなくはない。

だからななの和服も普通なのか。

「この世界の事を君にも知っておいて欲しかったからな」

案外説明するの好きなのかな…リムは。

何故か解説をした後に元気そうな様子だ。

「えっへんロボ!お姉ちゃんは博識ロボ!」

エクストは自分の事のようにドヤ顔をする。

この後お礼にリムはエクストを抱き締めていた。

「エクちゃん、手伝ってくれてありがとう」

エクストは嬉しそうな顔をして、猫のようにリムに甘える。

「えへへー、ロボ」

「エクストは凶暴だけど可愛い所もあるんだな」

俺はエクストの意外な一面に和んでいた。

「えっと、敵、来るよ…」

ななは真剣な顔立ちになり、オールを構えて、一ヶ所に視線を集中させる。

その視線には凄みがあって、一流の戦士のような眼光だ。

「構えてるのがオールじゃなけりゃカッコいいんだけどな…」

しかもオールには熟練のテクニックで繊細に刻まれた龍と虎の絵がある…

オールに刻むのは労力と腕の無駄遣いだろ!

「ああ、わかった」

リムは杖を構える。

「わかったロボ!」

エクストも起き上がり、バズーカを構える。

ななはごく真剣にオールを構える。

「この里見家に伝わる神剣龍虎丸王刀(しんけんりゅうこまるおうとう)の力!見せる時だよ!」

ななが自分を鼓舞するかのように、大きな声で言う。

「いや!それそんなご大層な名前ついてたのかよ!だいいち刀剣類じゃないだろ!しかも語呂悪いし!」

俺がツッコミを入れてる間に、何かが森に襲来して来た。

押し寄せるような足音が聞こえて、それがどんどん大きくなる。

「なっ!?」

俺は現れた相手に驚愕した。


その相手はファンタジー世界ではありえない科学力を用いた戦士だったから。

銀の機械のスーツを身に付け。

腰には光線銃と思わしき銃を構えた兵士だった。

顔の部分は見えてるし、人間だと言う事がわかった。

「ボクの世界の兵士ロボ!」

エクストの発言からすると、カッタツ界の戦士だと言う事がわかる。

まさか魔王軍に人間が加わってるのか?

「ほう、先客がいたか、この泉は魔王軍の物だ!退くがいい!」

科学兵士は俺達に言う。

「何故お前らはこの場所を狙うんだ!聖なる泉を!」

俺は言ってみたかった台詞を勇ましく決めた。

きっと聖なる泉を破壊して聖なるアイテムを作成出来なくするとか。

加護の力を打ち消すとかだろうな!

「それは!この泉を占拠して魔王様専用のシャンプーとボディソープを大量に作るためだ、ここの泉は質が良い!」

は…シャンプー!?ボディソープ!?魔王軍への対抗戦力を削ぐとかじゃないの!?

「うわ…しょっぼいロボ…」

エクストの言う通りだった、俺もあんなしょっぼい理由は見たことがない…

「そ…そうなのか…多分あんたら人間だよな?何故魔王に魂を売ったんだ!」

俺は強く言う、そうだ!人間が魔王に荷担するなんて相当な理由がある筈!

「給料が良くて週休二日だからだ!」

「魔王様が美少女だからだ!踏まれたいぞ!」

…………………理由が週休二日と踏まれたいからって…

金はわかるし、美少女は100歩譲って許すが…

「たかがそんな事のために人間が機械装備して魔族に加担するなんて!」

ななが激昂してるが。

俺はもういいや…悪事する理由も身勝手過ぎて呆れたし…

人間同士(エクスト除く)の争いなのに理由がしょっぱ過ぎる…

「…………″だりあおぶですてぃにー″!」

俺は無性に頭に来たので、思わず魔法を唱えていた。

『ダリアオブデスティニー』はRPGゲームで、魅力的なキャラなどが持ち味のゲームだ。

リムの格好が可愛らしいふわふわとしたデザインの司祭服に変化し、眼鏡が装着される。

「だりあおぶですてぃにー!」

リムは魔法により出現した爆弾を思いっきり振りかぶり、科学兵士の群れに向かって投げつけた。

爆発が巻き起こり、兵士は吹っ飛ぶ。

「へぶぉっ!ふ!不意打ちとは卑怯な!」

科学兵士が抗議する、俺もさっきの魔法が不意打ちだと言う事はよくわかっていた。

「やかましいっ!これほどないぐらい身勝手な理由で悪に荷担した奴が言えた台詞か!」

今回の不意打ちは卑怯だが、あまりにも身勝手過ぎる理由で魔王軍に加担していたので。

エクストも何も言わなかった。

「エクちゃん、あれ頼む」

リムの格好は元に戻っていて、エクストに指示を出す。

「わかったロボ!」

この前のようにエクストはもたもたと石板を取り出し、リムはそれを掲げる。

「私の名はアーガス家を継ぐ者

リムエット・アーガスだ、刮目せよ」

リムの取り出した石板に科学兵士は目をやる。

「ここから去れ、さもなくば、とりあえず殲滅する」

リムが強く科学兵士達に言う。

また『とりあえず』なのかよ。

「やかましいわ小娘!爆弾投げられておちおち帰れるか!」

科学兵士達が一斉に襲いかかって来る。

爆弾投げたのはリムだけど、発動のきっかけは俺なんだけどな…

こうして、妙な理由で戦いの火蓋は切って落とされた…


「わたしこんな身勝手な人達許せないよ!」

ななが龍虎丸を構えて、科学兵士に対峙する。

「清空滑空斬(せいくうかっくうざん)!」

ななは龍虎丸を振りかぶって、科学兵士の群れに投げつける。

そのスピードは早く、投擲にもキレを感じる。

なぎ倒すかのように投擲された龍虎丸は猛スピードで敵を蹴散らして行く!

更にありえない事に、ななはその龍虎丸に向かって走り出し。

投擲された状態の龍虎丸に追い付き、それをキャッチする。

「このおっ!」

ななの背後からビームの剣を構えた兵士が斬りかかる、ななはそれを龍虎丸で受け止める。

ビームの粒子と龍虎丸が激突する。

「あのオール何で出来てんの!?」

龍虎丸はどうしてかビームとつばぜり合いを可能としていた。

「はっ!」

ななはわずかなスキを突き、兵士の手を龍虎丸で殴りつけ、ビームの剣を叩き落とす。

「いっくよー!聖炎木砕斬(せいえんもくさいざん)!」

龍虎丸は赤く燃え上がり、木製のオールなのに大きな炎をまとっていた。

燃え尽きる事がなく、むしろ龍虎丸から発生したように見える。

「木製の船をこぐ道具なのに炎の技!?どーなってるんだよ!」

オールで炎技だと!矛盾が過ぎる!

炎で周囲の温度が熱くなり、熱気を感じる。

その炎の一撃は、多数の科学兵士達を蹴散らし、アーマーすら破壊する。

科学装備をも貫通する恐ろしい炎だ。

エクストはななの攻撃により自分たちが優位になった事で、更に自分も攻勢に出る準備をしていた。

「よーし!ボクのマシンを召喚するロボ!」

エクストが腕を大きく天に掲げる。

「来るロボ!『唯一無二の風の刃(ワンウインドブレイド)』!」

す!凄い中二くさい名前だっ!

凄い勢いでエクストの周囲が発光する!

「な!なんだ!」

「何か起こるんだ!?」

科学兵士達は困惑する、そして、光が消えた先に見えた物は………

「ま!マシンじゃねえ!ってか電動自転車ですらねえええ!!」

そう、エクストが召喚したのは、子供用自転車だった…しかも補助輪付きの…

「わはははは!ロボ!」

エクストは器用に草道も自転車をこぎながら猛スピードで移動していた。

しかも木々の間も上手く通り抜けている繊細な操縦テクニックもある!

「行くロボ!行くロボ!」

エクストは自転車に乗りながら器用にバズーカを乱射している。

科学兵士の群れが爆風で大量に吹き飛ぶ。

「よし、援護するか、何か攻撃魔法頼むよ」

俺はリムの指示に従い、腕輪を操作する。

「よっしゃ!待ってました!″まほうしょうじょおち″!」

俺が唱えた魔法の正式名は、『魔法少女落ち』だ。

タイトルが危ないけど別に18歳未満お断りの危ないゲームじゃなく、魔法少女同士が戦う落ちものパズルだ。

「まほうしょうじょおち!」

リムの服装がミニスカートに変化し、黄色を基調にした動きやすさと可愛さを重視した活動的な格好になる。

杖も可愛らしい魔法のステッキのデザインに変化する。

「お姉ちゃん!可愛いロボ!」

エクストが目をキラキラしてリムを見る、

「そうか?ありがとう、エクちゃんが褒めてくれるなら可愛いんだろうな」

リムは静かにエクストに向けて笑う。

ああ…大人びた娘がこんな格好するのも可愛い。

「とりあえずポーズと決め台詞だな」

リムが至極ぎこちない様子でぶりっ子ポーズを取る。

「このわたしガイアックスリムがだいちのちからでくっぷくさせちゃうぞ」

リムの決め台詞は、ひたすら棒読みだった…

「ぼ、棒読みも可愛いロボよ…」

「あ、あちゃー…」

周囲の空気がひたすら凍りつく。

「あー…まあ…ドンマイ…」

俺はそれしか言えなかった…

本当はリムが今コスプレしてるキャラは『この私、ガイアックス・土屋が大地の力で屈服させちゃうぞっ♪☆』っていろいろ痛い台詞を言って可愛らしくぶりっ子ポーズをするんだ。

「まあいいや、やっつけよう、えいっ、おじゃま岩石!」

リムが杖を振りかざすと、科学兵士の群れに巨大な岩の雨が大量に降り注ぐ!

「そ!そんなんありか!?」

本当はゲーム内では相手のパズルの妨害をするために岩を降らせる技だ。

可愛い服なのに攻撃がガチでエグイ…発動の発端は俺だけど。

リムの服装も魔法の効果が解け、元に戻っていた。

「さて、これで倒せたかな?」

俺は敵を全滅させたかを確認すると、一人の科学兵士が地味に泉の水を汲んでいた。

俺は直感的に危機感を感じた。

「くっ!あいつ!」

俺は落ちていた光線銃を拾い、科学兵に向かって放つ。

が…

「光線があさっての方向に!」

当然銃なんて撃った事ないから、光線の狙いは全然別方向に飛んで行った…

ここで当てられたらカッコ良かったんだが…

科学兵士がこちらを振り向く、手には水のボトルが装填された大きな水鉄砲を構えている。

「食らえ!ロリメイド!」

科学兵士がエクストに向かって水鉄砲を放つ、強力な水流がエクストに向かう。

「えっ?ロボ」

エクストは咄嗟の事に反応が出来なかった。

「はっ!不味い!」

リムが珍しく驚愕した様子で大きな声を出す。

リムは咄嗟にエクストの盾になろうとしたが、それに間に合わず、水流はエクストを直撃する。

「あっ!きゃっ!ロボ!」

エクストは水流を浴びると、身体から電流が迸り、黒い煙があがる。

「や、やられたロボ…」

「え!?なんでだ!?」

俺はエクストが何故大ダメージを受けているのかが疑問だった。

あれほどのパワーがあるのに何故水なんかで。

「エクちゃんはな、防水加工出来てないんだよ!だから水が弱点なんだ!」

リムが珍しく戸惑った様子で大きな声を出す。

そうか、だから水ごときで…

「くっ!このっ!」

科学兵士の最後の一人はななが龍虎丸で殴り付けて気絶させていた。

「はっ!殺気!」

その直後、ななに向かって何かが投げつけられた。

ななの周囲が爆発し、服を破壊されていた、またもやパンツだけの姿になってしまう。

「まさか、防具破壊爆弾か!」

ななは慌てて身体を隠す、その仕草が相変わらず可愛い…

「きゃ、きゃあああっ!」

ななの悲鳴が森の中に響いた。

「ま!またなのかよっ!」

とは言っても、男のサガでななの方向を見ちゃうのはとうしようもない…

「死にたいかな…」

なながまたもや殺気を俺に向けてくるので、俺は目を背けた…

「エクちゃんとなーちゃんはそこで休んでてくれ

エクちゃんは水気が抜ければだいぶ回復する」

リムは休憩小屋を指差し、二人に指示する。

エクストとななは頷き、休憩小屋に向かう。

リムが敵意の方向に目線を向ける。

「出てこい、いるのはわかってるんだぞ」

リムの声に応え。

ついさっきリムたちに爆弾を投げつけたゴブリンと共に一人の男が姿を見せる。

黒い鎧をまとい、角が生えた長身の魔族の男いた。


「久しぶりだな、リムエット・アーガス」

魔族の男が真剣な口調で言う。

「久しぶりだな、グロウちゃん」

リムもそのグロウと言う男に鋭い視線を向ける。

一発触発のピリピリした空気が走る。

「え!?何!?まさか

『友よ、君たちは何故、悪魔に魂を売ったのか!』的なシリアスな関係か!?」

顔見知りのようだし、『ちゃん』付けを除けば至極真剣だ。

リムは俺に言う。

「いいか、よく聞け…グロウちゃんの所属する魔王軍はな

リムの家と敵対していて、そして…」

俺は唾をごくりと飲み込んで、リムの言葉を待つ。

リムは息を吸い込んで、怒りを込めて強く言う。


「ある日、リムがお小遣い使って買ったアップルパイを強奪したんだ!魔王様に献上するためだと言って!」


え……………アップルパイ強奪…

「えーと…リムさん、もう一回お願いします…」

聞き間違えだと思ったので俺は聞き返した。

「だから、アップルパイ強奪されたんだ」

…………………ま、マジでか!?

「り!理由しょっぼーーー!!個人的過ぎる理由じゃないか!」

「なっ、何を言うっ…アーガス家はお金ないんだぞっ」

リムがぷんすかした様子で俺に言う、その仕草はとても可愛い。

「それはわかってるけど!裸見られても平気なのにそれは嫌なのか!」

リムはどこかズレてる、俺はつくづくそう感じた…

「ふふ、安物だけど魔王様はそれなりに喜んでいたぞ」

グロウがリムを挑発する、安物とそれなりって言葉は結構イラつくし、グロウは挑発の事をよく心得てるな。

「モウスコシ砂糖ガ少ナイホウガ良カッタナ、食べ過ギルと血糖値ガ上ガルゾ」

更にボムゴブリン、略してボムリンがリムに挑発をする。

リムは怒りに震えて杖を構えていた。

「…殲滅するぞ、サポートしろ」

静かな口調だが、明確に殲滅すると言った上に、サポート『しろ』って命令口調な辺りにリムの怒りの程度がよくわかる…

「お、おっけー…」

俺は震える声でそれに応じた…


「だんがんがーるず!」

リムがバズーカを構えて、ボムリンに向かって放つ、ボムリンもそれに合わせて爆弾を投げつける。

バズーカと爆弾は激突し、爆発を巻き起こして相殺される、周囲に爆風が広がった。

「うおおお!魔王様!私を罵って下さいいい!!」

何やら変な声が聞こえたので、その方向を見ると、変な叫び声と共に、グロウの身体から黒いオーラが巻き起こっていた。

オーラだけで地面が抉られ、周囲に黒い雷が走る。

「は!?何その発言!?」

変な台詞を言う旅にオーラが上がってるような…

「冥土の土産に教えてやろう!私が恥をかくごとに!私の魔力は上がるのだ!」

グロウがドヤ顔で言う、それと同時に手にした剣を振りかざす。

「魔王様!萌え萌えLOVE斬!!」

間抜けな名前だが、その剣からは膨大な雷のエネルギーを蓄えた斬撃が繰り出される。

「まず技の名前をどうにかしろっての!!」

黒い雷のオーラがハートのエフェクトを発生させると言うあり得ない光景だ。

グロウは何度もリムに斬りかかる。

黒い雷の斬撃を、リムはギリギリで回避していたが、対抗策が見つからず、追い詰められていた。

「きゃっ!」

回避しきれず、リムに斬撃が炸裂する、リムは斬撃と雷のダメージを同時に受けて、地面にヒザを付く。

「っ!くそっ!」

俺は光線銃をグロウに向けて放つ、グロウに直撃はしなかったが、グロウの眼前に光線がよぎる。

「貴様っ!」

グロウの気を反らす事に成功し、俺は次の手を考えた。

「″うさちゃんぱらだいす″っ!」

「うさちゃんぱらだいす!」

俺が魔法を唱えると、リムもそれに続く、リムの服装はバニーガールの服装になっていた。

「いささか露出度が高いな、まあいいか」

ボンキュッボンのボディが更に強調されて、目の毒だ…胸なんてこぼれそう…

本人は全然気にしてないけど凄い破壊力だ。

リムの目の前に、大量のウサギが出現した。

「ふはははは!そんな無駄に出っ張った身体よりも魔王様の薄い胸元の方が至高なのだ!色仕掛けなど通用せん!」

「ソウソウ、素人ダナコイツラハ、小サイノガ良イノニ」

グロウとボムリンがリムと(会った事も見たことも無いけど)魔王双方に失礼な事を大声で言う。

「甘いな、あんたら、これは反撃の布石だ!」

『うさちゃんパラダイス』とは、うさぎに指示を出して戦うアクションゲームだ。

ほのぼのしたふれあいモードの他に、戦闘モードもあったりするゲームだ。

「リム!そいつらに指示を出すんだ!」

「よし、うさちゃん達、噛みつけっ」

リムが指示を出すと、鋭い歯でグロウにウサギ達は噛みつく。

「ぎ!ぎゃあああ!」

ウサギの歯は鋭く、グロウの鎧には穴が空いてボロボロになっていた。

可愛いウサギなのに案外エグい…

「お!おのれえ!魔王様LOVEサンダー!」

グロウの身体から黒い雷が発生する、それがリムに直撃し、リムは痺れて動けなくなってしまう。

「あ!あああっ!」

「り、リムっ!」

ふと不穏な気配を感じ、俺がその方向に目を向けると。

「コレデ貴様ラモ、終ワリダ!」

木の上にボムリンがいて、木の上から俺たちに大量の爆弾を投げつけて来た。

回避しきれない!

「はあっ!」

その刹那、二つの影が俺たちの前に立った。

その主は、エクストとななだ。

ななは毛布を身体に巻いて出て来ていた。

爆弾は、突如現れたななの龍虎丸によって弾き飛ばされ、空中で爆発した。

「せいやー!撃ち抜くロボ!」

エクストはすっかり乾いたのか調子が回復している様子で。

バズーカとライフル銃が装備されている。

バズーカを乱射し、ライフルからはレーザーが放たれ、的確に爆弾を破壊していた。

「オノレ!コレナラドウダ!」

ボムリンは木の上から、玉転がしの玉ほどはありそうな巨大な爆弾をいつの間にか点火していて。

それを俺たちに向かって投げつける。

「ホームラン打つロボ!」

「かっ飛ばすよ!」

エクストはビームモップを、ななは龍虎丸を一本構えて野球の要領で打ち返すつもりだ。

「リム!″ほのぷろ″だ!」

俺が魔法を唱えると、リムの服は青い野球のユニフォームに変化する。

『ほのぷろ』とは、『炎のプロ野球』の略で、バントでホームランが撃てる事で有名なゲームだ。

「ほのぷろ!」

リムも杖をバットに変化させ、バントのポーズを取る。

「行くロボ!」

「かっとばーす!」

エクストとななが同時に爆弾を殴りつけ、爆弾の勢いを止める。

「バ!馬鹿ナ!アリエン!」

ボムリンが渾身の一撃を止められた事に仰天する。

最後の仕上げとばかりに、リムがバントのポーズのまま飛び出す。

「行くぞ、せいやっ」

リムはバントのポーズで、勢い良く爆弾を突いた!

巨大な爆弾は空高く吹き飛び、ホームランのように空に消えた。

「よし!トドメだ!今日二回目の″うさちゃんぱらだいす″!!」

「うさちゃんぱらだいす!」

俺が魔法を唱えると、リムの姿が再びバニーガールへと変化する。

俺達の眼前には驚くべき存在があった。

「な!な!なああああ!?」

「ウッ、ウッソダロ!?」

ボムリンとグロウはその存在に仰天する。

その存在は、20メートルほどの巨大なウサギだった。

周囲が黒い影に覆われる。

俺は魔法を唱える時に、ゲーム内に存在する巨大ウサギを思い浮かべていた。

だから、これが実体化されたんだ。

勢いのままやっちゃったけど、いささかやり過ぎたか…

「で!!でっかあああああああああっっっ!!!」

ななが仰天する、予想外過ぎる存在に流石のななでも理解出来ないようだ。

「さっすがお姉ちゃんロボ!」

エクストは目を輝かせてリムの魔法に見入っていた。

「リム、そいつに指示だ…」

俺は冷静になって考えると、とんでもない事をしでかした事に気付いてテンションが落ちた。

いや、あり得ないって…等身大の敵二体に巨大ウサギとか…

「よし、踏みつけろっ」

リムがバニーガール姿でキリっとした顔をして。

びしっとグロウとボムリンを指差して指示する。

すると、巨大ウサギは突進する、周囲の木をなぎ倒して!

一歩動く度に地響きが巻き起こり、立つのもやっとだ。

グロウとボムリンに突進する、シンプルだけど質量でその威力は強力無比!

「く!来るなっての!わああああ!!」

「キ、キシャアアアアア!!」

哀れ!グロウとボムリンはウサギに踏み潰されてしまう!

地面にめり込んで、強烈な一撃が炸裂していた。

「ア、アグアッ…」

ボムリンが倒れ込む。

その刹那、エクストはすかさずにいつの間にかボムリンの背後に回り込んでいた…

エクストは大量のバズーカとミサイルとライフルを大量に装備していた。

怒りの大きさがよく理解出来る…

あの重装備であんな速度を出した事にびっくりだ!

「に・が・さ・な・い・ロボ!」

「ヒ!ヒイイイイ!!」

ボムリンの悲痛な悲鳴が響いた…

エクストは情け容赦なくゼロ距離でバズーカなどの火器を乱射している!可愛い顔に似合わない極悪な攻撃だ!

「お姉ちゃんとボクの服の恨みロボ!裸を晒した恨みロボ!この世界のオイルが不味い恨みロボ!」

エクストが怨みを口にしながら、過剰な攻撃を次々と加えて行く。

「ギ!グボァグァー!!」

ボムリンは悲鳴と共に気絶した。

「いや!あからさまに最後のは八つ当たりじゃねーか!

ボムリンに当たっても根本的な解決にはなりませんよね!?」

気絶してたボムリンは突然何かに引き寄せられる。

「くっ!一旦退かせてもらう!」

ムチでボムリンはグロウに引き寄せられる、グロウは気絶したボムリンを抱えていた。

「ま、待ちなさいっ!」

ななが言葉を強くするも、黒い霧が周囲に広がり、その直後にボムリンとグロウの姿は消えていた。

「ふう、なんとか勝てたな」

俺は汗を拭う、ただリムに魔法を発動させただけで、それ以外は特に何もしてないが。

それでもさっきは危ない場面があった。

俺はふとリムの方向に目を向けると、リムは倒れ込んでいた。

服もバニーガールからいつもの服に戻っている。

「お!おい!どうしたんだよ!」

俺が大きな声を出してもリムは反応しない。

「ど、どうしちゃったの…?」

ななが心配そうな声を出す。

「落ち着くロボ、お姉ちゃんは魔力が尽きると気絶しちゃうロボ」

エクストは慣れているのか、落ち着いた様子で緑の薬をリムの身体に飲ませていた。

リムの身体がぴくりと動き、回復を初めていた。


リムが元に戻り、俺は安堵していたが。

「あ、雨だロボ…」

エクストが少し弱い声を出す。

急に強い雨が降ってきたので、俺はエクストに覆い被さる形になる。

「エクスト!危ない!」

エクストに雨が当たらないように。

「あ…嬉しいけどこれぐらいなら大丈夫ロボ…」

エクストが顔を赤くして言う。

「いや、まだ治ったばっかだろ?無理しない方が良いぞ?」

そう、あの水でやられた光景を見ると不安にもなる。

リムもエクストに覆い被さる形になる。

「エクちゃん、念のためだ」

エクストは俺とリムに守られて、どこか恥ずかしそうだ。

「あ、ありがとうロボ」

エクストは俺に頭を下げて言う、その仕草に少しドキリとしてしまう。

「ま、まあ…俺は濡れても良いからさ…」

「ひゅー♪熱いねみんな」

ななが茶化すように言う、それもまた恥ずかしい。

「か!感動したあああ!」

急に泉が光り、それと同時に奇妙声が聞こえて来る。

「こ!今度は何だよ!?」

俺だけではなく、皆が泉の方向に視線を集中させる。


泉から、白く神々しい衣装を身につけているオッサンが現れた。

衣装には水の流れが装飾として刻まれていた。

ダンディな雰囲気で、どこか力強さを感じる。

よく見ると町にあったあの像とそっくりだ。

「誰だよ!アンタ!いきなり出てきて光ったり感動するとか!」

俺が質問をぶつけると、オッサンはそれに答える。

「私は水の神だっ!!神だ!神!

私の住み家を守ってくれたのと!先ほどの友情に感動したのだ!」

胡散臭さMAXだ…神もネットで軽々しく神とか言うレベルで軽いし、本当に神なのか…!?

「えー…マジか?確かに町に像はあったけど…」

俺は猜疑心を感じていた、格好はそれっぽいけど態度にあまり威厳を感じないから。

「う、嘘じゃないロボ!本当に水の神様ロボっ!」

エクストが本を手に取りながら仰天した様子で言う。

ロボットなんだから本じゃなくて科学の力で調べれば良いのに…

今さらだが、神であってもなくても一応目上の人間だから敬語使った方が良いよな。

「ぶ!無礼な態度とってすいませんでした!」

だが、水の神は気にした様子もなく、俺に言う。

「敬語じゃなくて構わん、私は心が広いからな、普段のしゃべり方で良い」

ああ…流石神だ!心が広い!

ななは早速その言葉に甘えていた。

「ありがとっ、神様

あのさ、これ神水に長時間浸したら強くなるって我が家で昔から言われてるんだけど

本当に強くなるかな?」

ななが二本の龍虎丸を水の神に渡す。

水の神が龍虎丸を手に取り、仰天した様子を見せる。

「こっ!これは!?天神樹から作られた物か!天神樹には幾多のカルマがあったが、まさか私の手に混沌の宿命を超えて再び私の目の前に姿を現すとは!

太古より因縁がある神水と天神樹がその宿命を超えて交わる時!恐るべき力が…」

水の神が何を言っているのか全く理解出来ない…

「とにかく、長時間浸したらパワーアップするって事でしょ?」

なながざっくりと言う、水の神がそれに頷く。

「ま、まあそんな感じだ、しばらく私の泉に浸しておくから待っていなさい

完成したら渡すぞ」

ななは水の神の言葉に対して、微笑みを返す。

「ありがとう!神様!」

ななが言うと、水の神は嬉しそうな様子を見せる。

「なーに、可愛い女の子の頼みだ

礼なんて必要ない、私の住み家を防衛してくれたのだからな」

水の神が言うが、俺は隠し様がない真実を打ち明ける事にした。

「あー…いちおー防衛は出来たけど

あなた様の住み家の木、結構ぶち壊しちまいました…」

そう、大暴れしたせいで幾多の木々が倒れている…

「…………水力地獄ボール!!」

水の神が魔法を唱える、押し出された強力な水の玉が、俺とリムとななに勢い良く襲いかかる!

そして身体ごと吹き飛ばされる。

「ぐわっばっ!」

「ぐふっ!」

「わ!私はそこまで被害出してな…」

エクストは防水加工が行われてないので、罰は免除してもらっていた。

俺への水の玉は俺の耐久力を効率してか小さかったが。

リムとななの玉は大きかった。

主に被害を出したのは俺とリムだ、巨大ウサギで…ななはとばっちりかもしれない。

「被害が出たとは言え守護してもらったのは事実だ、これぐらいで勘弁してやろう」

リムは水の神の方を向く。

「ところで、魔力の薬はこの町の水で作られてるみたいだが、魔力の薬はあるか?

あるなら売って欲しいのだが」

リムが言うと、水の神は料金表を取り出す。

そこには体力の薬や魔力の薬など、細かく料金が描かれていた。

「そうだな、料金はこうなっている、安くしておくよ」

随分俗っぽいな…神様なのに…

「観光地のコインを投げる噴水の要領でコインを沢山投げ入れろ、札は無効だ」

「いや!なんでわざわざ投げる必要あるんだよ?直接受けとれよ!」

そうだ、わざわざそんな面倒な事しなくても!

「しかも小銭限定だよ、お札しかなかったらどーすんだろ?」

ななが言う隣で、リムは財布から大量に小銭を取り出していた。

そしてそれを勢い良く泉に次々と投げ入れていた。

「連コインっ、連コインっ、連コインっ、連コインっ」

ぼちゃんぼちゃんと小気味良い音が聞こえる。

次々に財布からコインは投げ入れられる。

水の神は満足そうに笑う。

「よし!これならOKだ!」

そう言い、リムに十数個の魔力の薬と、防具修復薬を渡す。

「そこの君、先ほど見た限りでは防水加工を行っていないようだが」

水の神がエクストを指差す。

「そうだロボ、コストの問題で防水加工出来なかったロボ…」

水の神はふむふむと頷く。

水の神は天に魔法陣を描くと、光が迸る。

それと同時に一つの紺色の服(?)がエクストの手にあった。

「試作品だからあまり過信は出来ないが

この服には水の加護がある、君の弱点をカバーするぐらいの効果はある筈だ

君にプレゼントしよう」

エクストの顔がパーっと明るくなる。

「ありがとうロボ!戦いの他にもお姉ちゃん達のお世話にも役立つロボ!」

エクストと水の神は盛り上がっていたが、俺は一つ気になる事があった。

「そ!それスク水じゃねーーか!!なんで異世界にあるんだよ!

服じゃねーっての!またエクストのマニア度も更にはね上がるし!」

そう、エクストが手にしていたのは服じゃなく、スクール水着だった…

エクストが装備した所を想像すると、ロリ眼鏡っ娘ロボットのスク水と言う異様な光景が頭によぎった。

まあ、いちおー神の言う事だし…水の加護はあるんだろ…多分…

これでひとまずパワーアップには成功したのかな?

スク水をもらったってのはかなりビミョーだが…

水の神から手に入れたアイテムでまともなのは魔力の薬と防具修復薬か…



こうして俺達は水の神に別れを告げて。

魔法の薬と水の防具?(スク水)を手にして、報酬を受けとるために水の町に戻った。

だが、そこで予想としなかった悲劇が待ち受けていた!


つづく

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