第128話

シフトを交代してからも客足は途絶えることなく、結局休む暇も無いまま14時を迎えた。



「んじゃあそろそろ俺、部活の手伝い行くわ」


「おー、お疲れ。部の方、頑張れよ」


「おう。暇だったら是非来てくれ」


「考えておく」


俺は付けていたエプロンを外し、それまで共に作業を行なっていたクラスメイトにそれを手渡すと、部の出し物の手伝いがあると告げて教室を後にした。


時刻は14時を少し回ったところだから、きっともう教室には人が集まっているはずだ。俺も早く行って白月たちの手伝いをしなければ。


そう思って、一向に治まる気配のない喧騒の中、人混みを掻き分けて3年3組教室へと急ぐ。



そうして天文部のプラネタリウムが展示されている教室の前まで来ると、予想通り中には1回目と同様に多くの一般客の姿が見て取れた。


そんな中で、俺はプラネタリウムの隣にある受付席に座る白月と葉原を確認すると、2人のもとに駆け寄って声をかける。



「悪い。少し遅れた」


「あ、晴人くん。おかえりー。クラスの方どうだった?」


メイド服から制服に着替えた葉原が、ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべながら尋ねてくる。



「あぁ、大盛況だった。クレープが飛ぶように売れてたぞ」


「マジか。私もあとで買いに行こーっと」


そう言って期待に胸を膨らませる葉原を見て、俺はふと考える。



あれだけ順調に売れていれば、材料がなくなるのも時間の問題だ。ひょっとすると、あと1時間後には売り切れになっているかもしれない。


それなら、早くに購入して食べた方がいいだろう。期待させるだけさせておいて、食べられなかったなんてことになったら、流石に葉原に申し訳ない。



そこまで考えてから、俺は気分良さそうに鼻歌を歌う葉原に目を向ける。



「あとでと言わず、今行ってきたらどうだ? 受付は俺と白月でやっておくからよ」


「えっ、いいの?」


「あぁ。2人でも十分対応できるしな。白月もそれでいいだろ?」


一応部長の確認も取っておこうと、俺は葉原の隣に座る白月に向かって尋ねる。


すると、白月は気の抜けたような弱々しい声で返事を返し、それに答えた。



「……えぇ、大丈夫よ。気にしないでいってらっしゃい」


白月の確認も取れたことで、葉原の表情は一段と明るさを増し、飛び上がるように席を立った。



「それじゃあ、お言葉に甘えてちょっと行ってくるね。すぐ帰ってくるから」


「おう」


俺は、そう言って2年2組教室へ向かって駆けていく葉原に声を返すと、空いた受付席に腰を下ろした。

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