第3話
教室で白月と別れた後、俺は校門で待つ2人の友人の元へと急いだ。
昇降口で靴を履き替え外へ出ると、校門に背中を預けてスマホを操作する2人の姿が見えた。
待たせてしまったという申し訳ない気持ちも少しあって、俺は小走りで2人の元へ駆け寄る。
「あっ、きたきた」
そんな俺に気がついてスマホをスクロールする手を止め、こちらに目を向けるのは同じクラスの
「悪い。ちょっと厄介な奴に絡まれてな」
「おいおい、また白月さんと痴話喧嘩してたのか?勘弁してくれよなぁ」
明らかに揶揄する口調で言うのは、これまた同じクラスの
「勘弁してくれはこっちのセリフだっつーの。毎日毎日金魚のフンみたいに付き纏いやがって……」
「でも、あんまり嫌がってるようには見えないけどね」
「だよな。なんだかんだ言って、お前本当はあの美人な白月さんと毎日話せてラッキーとか思ってんじゃねぇか?」
否定したばかりだと言うのに、2人はこちらに疑いの眼差しを向けてくる。
「だから違ぇって。てか、そんなことよりさっさと行こうぜ。早くしないと部屋埋まっちまうぞ」
「おー、そうだったそうだった。……あっ、遅れた罰として今日の払いは晴人持ちな」
「サンキュー晴人」
「勝手に決めんなよ……」
遅れたのは白月に絡まれた所為であって、決して俺が悪いわけじゃないんだが、ここで言い争っても時間の無駄だ。
仕方ない。将来への投資の意味も込めて、今回は俺の奢りってことにしておいてやる。
と、まぁ、そんなこんなあって俺たち3人はようやく学校近くのカラオケ店に向かって足を進めた。
前を歩く2人の後ろをついて行きながら、まだ彼女が居残っているであろう校舎2階のとある教室を一瞥する。
春の匂いを含んだ茜色の光が、教室の窓硝子に反射して煌めく。
ここからじゃ、あまりよく見えないな……
「おーい、晴人。置いてくぞ」
「おー、今行く」
そう言って輝彦の呼ぶ声に返事を返すと、20メートル程先で待つ2人の元へ向かって、アスファルトの上を駆け出した。
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