こんな夢を見た/A子と三人の不良
青葉台旭
1.
僕の通っている高校に三人の少年が転校して来て、僕のクラスに編入された。
その三人の少年たちと僕は同じ中学校の卒業生だった。
中学時代、彼らは札付きの不良グループで、学校じゅうの生徒から嫌われていた。
転校生三人組は互いに離れた席を与えられたが、そのうちの一人が僕の隣になった。
最初の休み時間、三人は僕の隣の席に集まって下品な冗談を言い合ってはゲラゲラ笑っていた。
「……A子(仮名)って、すげぇ
「ああ、たまんねぇぜ。この学校にあんな女が居たなんて」
A子は、クラスは違うけど僕と同じ学年の女子生徒だ。男子たちの間では学校一の美少女と評判だった。
ファッションモデルみたいに手足がスラッと長くて、胸もお尻も程良く膨らんでいて、肩甲骨の下まで届く長い黒髪の少女だった。
不良たちは「三人のうち誰が一番最初にA子を口説き落とすか」という
「おいっ」不良の一人が僕を呼んで言った。「お前も賭けに参加させてやろうか?」
僕は「いえ、結構です」と丁寧な口調で断った。
それからしばらくして、同じクラスのB夫くんが僕の所へやって来て「さっきの授業で分からない事があるから教えてくれ」と言った。
僕は教科書を出して机の上に開き、B夫くんに教えてあげた。
突然、頭の上から女の子の声がした。
「この間の件、どうなった?」
見上げると、A子が机の横に立っていた。
僕は(そう言えば、次の土・日、買い物に付き合ってくれって言われてたな)と思った。
次の週末A子の買い物に付き合ったら、土曜の夜はA子の家に泊まって良いと言われていた。しかも晩御飯まで振舞ってくれるらしかった。A子は一軒家に一人で暮らしていた。
とりあえず返事を保留にしたまま、僕はその件をすっかり忘れていた。
僕は「うん。良いよ」とA子に答えた。
A子は「わぁ、ありがとぉ、恩に着るわぁ」と嬉しそうに言って、椅子に座っている僕の後ろから抱きついて頰にキスをした。
相変わらずA子は良い香りがした。
僕は「朝ごはんは僕が何か作るよ」とA子に言った。最近イタリア料理に凝っているから、その腕前をA子に披露したかった。
「A子ん
「いきなり何さ……
(ネギと大根かぁ……あとで『ネギと大根で作るイタリア料理』をネット検索しなきゃ)と僕は思った。
「じゃあ、そろそろ自分の教室に戻るわ」とA子が言って、最後にもう一度、僕の頰にキスをして教室を出て行った。
教室中が、シーンと静まり返った。
そこにいる全員が、僕を見つめていた。
B夫くんが驚いた顔で「〇〇くん(僕の名)、A子さんと付き合ってたんだ……」と言った。
僕は「うん。まあね」と
さっきA子に声を掛けられるまで、僕自身、彼女と付き合っている事をすっかり忘れていた。
ふと、不良転校生たちを見ると、三人とも暗い目つきで僕を
僕は内心『やばい』と思った。
こんな夢を見た/A子と三人の不良 青葉台旭 @aobadai_akira
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