BAR Mont Blanc

みずかん

第1夜

ふぁぁぁああああ!!

いらっしゃああああああい!!


じゃなかったぁ...


ふぁぁぁ、いらっしゃぁいー


だったにぇ!


BAR Mont Blancへようこそぉ!


あれ?ジャパリカフェはどうしたのかってぇ?あれは昼のお店なんだよにぇ。

夜にも営業を始めたんだあ!

やこーせーのフレンズにもお店に来てもらえるようにねえ!


昼間のカフェと違うのは、お酒を出すってことかなぁ。


ハカセにねぇ教えてもらったんだぁ。


作り方とか~、いろいろ?

勉強してやっと出せるようになったんだよぉ!


でね、お店の名前はねぇ、かばんちゃんが決めてくれたんだぁ!ふらんす?てところの言葉で、白い山って意味があるんだってぇ!白いますたーがいる山!

オシャレでしょぉ?

色々手伝ってもらって、夜に営業できるようになったんだぁ!

さあ、今日はどんなお客さんが来るかなぁ?


カラン...


「ふぁぁぁー、いらっしゃぁーい!」


「こんばんは...」


これは珍しいねぇ〜、かばんさんだにぇ〜。


「はぁ...」


んー...、何か思い悩んでそうだねぇ。

フレンズも飲めるお酒で楽にしちゃおうね〜。


慣れた手つきで、カクテルを作り差し出した。


「あ、ありがとうございます...」


オレンジをメインにした柑橘系のカクテル

黄色で、口当たりは甘く後味スッキリ。


彼女は一口飲んだ。


「それでぇ?

浮かない顔してたけどどうしたのぉ?」


コースターの上にグラスを置き頬杖をつく。


「自分の存在意義って何かなって...」


「んー、存在意義?」


「そうです...。

このチラシ見ましたか?」


アルパカに1枚の紙を見せた。


「これってぇ、サーバルちゃんとかPPPのみんなが描かれてるけどぉ...」


「新しくやるそうです。

そこに僕が出ないんで...、ちょっと思い悩んじゃって...」


「あー...、難しい話になりそうだにぇ」


カウンターにアーモンドチョコを入れた小皿を置いた。


「まあ、つまみながら話してよぉ」


「...」


そう言うと1粒、口の中に入れた。


「僕のことを気にかけてくれたり、

好きだって言ってくれるのは嬉しいんです。だけど、それが過剰っていうか...

なんか、僕がいるせいでサーバルちゃん達に迷惑をかけちゃってそうな気がして...」


「うんうん」


「なら、最初から僕なんて出さなきゃ良かったんじゃないかって思って...」


「かばんちゃん自身どうなる事を望んでるのぉ?」


「僕は...、ただ...、

死んでもいないし、消えてもいないので、

僕がいないからって理由で残念がらないでほしいんですよ。まるで僕ありきの“けものフレンズ”じゃないですか」


「なるほどにぇ...」


「出れればこんなことには...

いや、出なければよかったんですよ...」


「そんなネガティブになることないってぇ。“平家物語”ってぇ、知ってる?」


「へい...なんですか?」


「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる人も久しからず、

唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ...」


急に暗唱したので驚いた。


「っていう、書き出しから始まるんだよお

要約すると“世の中は絶えず変化している。どんなに勢いがある人でもいつか必ず衰える、それはまるで春の夜の夢のようだ”って意味なんだぁ」


「...はい」


「もうかばんちゃんは居るんだよ?

今更悔やんだってしょうがないことだよぉ」


「それも...、そうですけど...」


「自分を気にかけてくれる人がいるなんて幸せな事だよぉ。あたしだってぇ、

トキちゃんが急にいなくなったら嫌だから、そういう人達の気持ちわかるよぉ。

もし、かばんちゃんは自分を心配してくれる人がいなかったらどう思う?」


「...寂しい」


「そうだよぉ。ただあたし達と違うのはぁ

やっぱり、特別だからだとおもうんだよねぇ」


「特別ですか...?僕が?」


「仮にあたし達だけ出れなかったら、

そんなにかばんちゃんの言った様な人は現れないよお。だけど、かばんちゃんは

物語の主人公だからにぇ」


「...」


「それ程特別な存在だからぁ...

まあ、誇張されがちって言うのかなぁ?

ともかく、かばんちゃんの言いたい事はわかるよぉ。でも具体的に対処出来ないにぇ。そこは、さっきも言ったように、

世の中ってのはぁ、絶えず変化しているものだからねぇ」


彼女はカクテルを飲む。

そして、チョコを食べる。


この感じ、絶妙だ。


「極論を言っちゃえば、漫画版で出れなかった子もいればぁ、フレンズの姿で出れなかった子もいるしねぇ。かばんちゃんだけでざわつくのはどうなのかなぁって思うけど...、まあ、事情を加味したらしょうがないよねぇ」


「アルパカさん...、僕、これからどうすればいいですか?」


「昔のアニメに出てきた赤と青のモンスターとか、あのアイドルみたいに存在を

消されたわけじゃなくてさぁ、

ちゃんと君の残した旅の足跡は形として残ってるんだからぁ。それに今、コッチの世界で大忙しでしょお?」


「ええ...」


「それもまた人生だよぉ。

出世街道を安全に行ける人なんて極わずかだしぃ、与えられた運命にしか、行けないんだからぁ」


最後にカクテルを飲み干した。


「何が起こるかは、神様次第だにぇー。

人生ってそんなもんよぉ」


「ありがとうございます...。

思い悩んでも仕方ないですね。

決められた運命の上でしか進めないし」


「そうそう!

あっ、これ、飲んでみるぅ?」


「何ですか?」


「ウォッカって言うアルコールが強いお酒だよぉ。きっと、スッキリするはずだよお」


「えっ...、僕が飲んでも...?」


「ちょびっとなら問題ないよお」


コップに酒を注ぐが、意外と量が多めな気がする。


「はいどおぞお!」


「これが、ちょびっと?」

(明らかに多い気が...)


「飲んで飲んで!」


「あ、はぁ...」




数分後、かばんは酔い潰れてしまった。

まあ、こうなれば、色々忘れてるだろう。

仕方なくアルパカはカフェを改造した時に作ったベッドルームに運んだ。


そうして、高山の夜は更けていくのだった。


また次の夜に会おうにぇ〜。

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