Big Girls Don't Cry その⑤

 ──翌日


 クロウはジョージと一緒にウィルマを教会へ送っていた。学校の無い土地の教会では、シスターが子供に読み書きを教えるということがしばしば行われていた。

「じゃ~ね~」

 教会の入り口で、逆にクロウたちを見送っているようにウィルマは大きく手をふり、そして子供たちと教会に入っていった。

「……こっちへ」

 ジョージは馬車をつなぐと、教会の別館へと歩き始めた。

「……どうした?」

 ジョージは「ここで待っていてくれ」と言うと、別館の中に入っていった。

 しばらくして戻ってきたジョージの手には、一枚の巻紙とひと・・房のリンドウがあった。

「……それは?」

「君は昨晩言ったね、自分の感情をもっと素直に出すべきだと」

「……ああ」

「ぼくの正直な気持ちだ」

 そう言ってジョージはリンドウをクロウにさし出した。

「この婚姻届けには、もうぼくの名前ががある。後は君にサインをもらうだけだ」

 ジョージは胸に手をあてる。

「ミセス・ブランズになってくれ」

「……そうきたか」

 この男の気持ちを正直にし過ぎてしまった。まさかここまで積極的になるとは、背中を押しすぎて全力で走り始めている。クロウは自分で言ったことに少しの申し訳なさを感じていた。しかし、その責任を取らないわけにもいかないのだろう。

「少し……考える時間をくれないか」

「……どれくらいだい?」

「独りが長かったんだ、いきなり誰かと歩む道を選ぶのには、心の準備がいる……。」

「そう……か……。」

「でも……悪い気はしていない。これは多分、嬉しいと言っていい気持ちだろう」

「そうか」

 クロウはジョージの手を軽く握るにとどめた。口づけまでしてしまったら、求婚を受け入れることになる。

「お、おおい……! 大変だぁ!」

「……あれは」

 そこへ、返り血を浴びた保安官の男が足を引きずりながら走ってきた。ただ事ではない雰囲気は、一目でわかった。

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