魔法学園入学試験⑥
さて、ネスとケプリには大丈夫と言ったけど、正直緊張するな。
「僕はほんとに勝てるのだろうか?」
僕は雷魔法以外にも一応火魔法と水魔法もそこそこ使えるのだが、雷魔法程とはいかない。どう攻めるのがいいだろうか?
「エイク君、時間ですよ。」
後ろからロック副団長の声が聞こえた。
「はい。行きます。」
「エイク君、そんなに気張らなくてもいいですよ。すぐに終わりますから。」
「何故ですか?」
「師匠が言うにはネスは神から贈り物を貰ってますが、あなたは何も持ってないそうじゃないですか。エイク君は私には勝てない。」
さすがにこれはきれるね。この女だけには絶対に勝ってやる。
「何も言わないですか。いいでしょう。入る前にルール説明をしておきましょう。ルールは一つ。」
「先に相手を殺した方が勝ちだよ。」
嘘だろ?
「いいのですか?殺しをしても。」
「ここでは、殺しても死なないから昔からよく物事を決めるために使われてきたんだ。首とか切っても血は出ないようになっている。そろそろ行くよ。」
「はい。」
絶対倒されてたまるか!
――――――――――――
わあああああああ!
歓声がうるさいな。まあ、いい。集中を途切らせるな。
「学園長、合図を!」
ロック副団長が言うと、皆が静まり返った。
すると学園長と思わしき人物が立った。
「二人とも用意はいいか?」
「 「はい」 」
「では試合開始!」
わあああああああ!
再び歓声が上がる。先に仕掛けたのはロック副団長。
「フレイム・スピア!」
ロック副団長の周りに火の槍が数本できて、こちらに飛んでくる。
「ライトニング・ランス」
僕は、全ての火の槍に雷の槍をぶつけた。
ドン!!
全て相殺出来たようだ。
確か、フレイム・スピアは上級魔法だったはず。詠唱破棄が無い限り、詠唱は必須のはず。
「エイク君も詠唱破棄を持っているようですね。」
「という事はロック副団長も・・・」
「ええ。この前、習得したばかりですよ。それよりも、その年で、詠唱破棄を持ってるとはなめていた自分に腹がたちます。だから」
「だから?」
「エイク君、あなたを全力で倒しにいきます。」
「我が火属性を糧とし現世に顕現せよ!フェニックス!」
そう言うと、ロック副団長の胸あたりから赤いコアが出てきた。そのコアが徐々に火を纏い始め、鳥の形をした。
「でたー!ロック副団長の精霊フェニックス!」「あいつ終わったな」「所詮は茶番だったな」
「うるさいな。精霊を出したくらいで」
実際、僕は結構焦っている。ここにいるだけでも、焼けそうだ。
「そんな余裕を持てるのも今のだけですよ。」
ロック副団長がそんな事を言ってきた。
「ファイア・ブレス!」
フェニックスが炎の吐息をかけてきた。
あの炎に当たるのだけは多分やばい!絶対に回避しないといけない。どうする?どうする?どうする?
「アクア・ライド!」
水に乗ってかろうじて、回避した。
「惜しいですね。フェニックスの炎は決して消える事は無い。なので当たったら終わってたんですがね。」
まじかよ。回避して正解だった。
「わざわざ、ご丁寧に説明ありがとうございます。」
でもどうする?どうする?どうする?
そうだ、僕も精霊魔法を使えばいいんだ。精霊魔法は一度試して成功したからいけるはず!
「我が雷属性を糧とし現世に顕現せよ!ライトニング=ドラゴン!」
僕の胸あたりから黄色いコアが出てきた。そのコアが徐々に雷を纏い始め、ドラゴンの形をした。
「嘘でしょ・・・、精霊魔法ではドラゴンは召喚出来ないはず」
ロック副団長がなんか言ってるな。
また呼んだか小僧。
頭に声が聞こえてきた。これは最初に呼び出した時もあった。ドラゴンが僕に頭の中に話かけてるのだ。
「ごめんね。前は試しだったけど、今回はほんとにやばいんだ。助けてくれないかい?」
いいだろう。手を貸そう。我の頭の上に乗るがいい。
ドラゴンが頭を下ろしてきた。折角だから乗ろう。
「ありがとう」
一撃で終わらすぞ。フェニックスの炎は我でも危ない。
「当たったら終わり?」
いや、少し火傷する。
「じゃあ大丈夫だね。」
「はあ、少し驚かされましたが、もう終わりにしましょう。」
ロック副団長が言っている。終わるのはあなただけどね。
「サンクチュアリ」
ロック副団長から光の円みたいなのがでてきて、僕の所まできた。
小僧!すまん!この魔法には「抗えん」
それだけ頭の中に話しかけるとドラゴンは崩れてコアが僕の所に戻った。
「何をした!」
「よかった。そのドラゴンも魔法で呼び出したから」
「僕の質問に答えろ!」
「私がステイシア様から貰ったスキル「サンクチュアリ」を発動したんですよ。簡単に言うとこの場の魔法は強制解除をかけられる。」
なら、もう一度呼び出せばいいはず。
「我が雷属性を糧とし現世に顕現せよ!ライトニング=ドラゴン!」
何も起こらない。
「あと言い忘れましたが、発動中はあなたは身体強化魔法しか使えません。」
「嘘だろ・・・」
「あなたは充分健闘しました。もう終わりにしてあげましょう。」
「フレイム・ブレス」
炎がこちらに迫ってくる。
――――――――――――
いいのか?それで倒されても?
頭の中にドラゴンとは別の声が入ってくる。
お前が望めばこいつは倒してやろう。
「ほんとなのか?」
ああ、本当だとも。
「お前は誰なんだ?」
お前は俺、俺はお前だ。
「いまいちわかんないな。だけど僕はこいつに絶対に勝たなきゃいけないんだ。」
いいぜ。お前の言う事は何でも聞こう。
それが「あいつ」との約束だからな
――――――――――――
「ブラック・アウト」
フェニックスの炎が消えた。
「エイク君、今さら悪あがきはおもしろくないですよ。それに今、何故魔法が使えたんです?」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ、小娘が。それに俺はエイクでは無い。」
「小娘っ。ではあなたは誰なんですか?」
指を指して俺は言った。
「俺はお前を殺す者だ。」
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