第82話 呪文完成!!
「さて、これからが本番なんだ。これを一本の呪文に纏める。当然、複数人の合成魔法になるけど、何人でいけるかが勝負だね」
僕は山になった紙を見て、笑みを浮かべた。
「……楽しそうな上に、燃えてるぞ」
「うむ、そりゃ魔法使いの醍醐味であり、腕の見せ所だからな。これがヘボだとなにやったってヘボな魔法にしかならん。その点、コイツは折り紙付きだぞ。大賢者と呼ばれる魔法使いの中でも、トップクラスじゃろうな。ワシじゃ到底及ばん」
アルマが師匠を掴んだ。
「うちの子を出来る子にしすぎじゃ。私がどんどん寂しい子になっていくぞ!!」
「うむ、魔法が通じないヤツの時に頑張れ。それに、コイツは魔法を作る事に関しては天才的だが、使う方は大賢者では標準的だな。全然、大した事はないぞ」
アルマが師匠を放り投げた。
「馬鹿野郎、アレで大した事がねぇってどういうことだよ。もっともっと寂しい子になっちまったぞ!!」
「うむ、魔法とはそういうものじゃ。どうやったって、剣より派手になってしまうからな」
僕は笑みを浮かべた。
「……アルマには勝てないよ。戦闘は苦手だもん。気合いで負けてたら、なにやったって負けるよ」
「馬鹿野郎、私が勝てるところは気合いだけかよ!!」
「……エルドラドをバラバラにしたのはアルマだよ。僕は小技は使えたけど、そういう所で負けてるんだ。一生、相手に勝てないんだよ」
「……魔物を粉砕とかやってたけどな」
アルマが笑みを浮かべた。
「仕留める瞬間は何も考えるなってな。考えたら、動きが止まっちまうからな!!」
「それが出来ないんだって。だから、こうなったんじゃん。仕留めようと思えば仕留められたはずなんだよ。せっかく物質崩壊魔法のデータが揃っていたんだよ。問答無用で撃つ気合いが足りなかったんだ。要するに、そういう事」
僕はパイプを一吸いした。
「よし、始めるよ。出来るだけ急ぐよ」
僕は紙束に呪文を掛けた。
「……」
僕はパイプをバカスカ吹かしながら、半分笑みを浮かべて魔法筆記されていく一本の呪文を見つめていた。
「……ヤバいスイッチが入ってるな。ついでに、煙い」
「うむ、ノリノリじゃな。こりゃ、とんでもないのが出来るぞ」
アルマが恐る恐る、机にお茶を置いた。
僕はカップを持つと、一気に飲み干した。
「……あ、あれ、猫舌は?」
「うむ、それすら忘れておるな。恐るべき、集中力だ」
師匠が酒瓶を取り、ショットグラスに注いで机に置いた。
僕は一気に飲み干し、タンっと音を立てて置いた。
「……おいおい」
「うむ、置けばなんだって飲むから面白いぞ。しかも、酒を飲んだところで変わらんのだ」
アルマが師匠を掴んだ。
「うちの子に、酒を教えるな!!」
「うむ、最初から酒だと思ってない。いくら飲んでも、ほろ酔いにすらならないし問題はなかろう」
やがて、紙に長い呪文の列が一本出来た。
「基本形は出来たよ。まあ、これじゃ封印するだけだね。酷い事をしてやろう。結界内をとびきり臭い漬け物で満たしてやろう」
「……うわ、地味に嫌だぞ」
「うむ、ナイスアイディアじゃ。そんな結界、誰も作った事がないな」
僕は笑みを浮かべた。
「これが限界なんだよ。次元断層結界でさいの目切りにでもしてやろうかと思ったけど、それだけで術者が二十人は増えちゃうからね」
僕は最終的な呪文が書かれた紙を師匠に渡した。
「……なにが漬け物じゃ。これをやって、たった十名か。やはり、大したものじゃ。珍しく感情が呪文に出てるぞ」
「……これだけやっただけでも許せないけど、アルマまでよく分からない存在にしたんだよ。僕はどうだっていいけど、これでも甘い方でしょ。術者がいくらいても足りないから、最低限にはしたけどね」
僕は最後にパイプを一吸いして、中の煙草を捨てた。
瞬間、アルマにパイプを取り上げられ、思い切りヘッドバッドされた。
「そ、そうきた……」
アルマは何も言わず、僕を抱き上げた。
「今度、僕はどうだっていいとかいったら、ヘッドバッドじゃ済まさないぞ!!」
「……」
僕は何も言わず、アルマの体に顔を押し付けた。
「それでいい!!」
アルマは笑みを浮かべ、僕を撫でた。
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