第6話 2-5
会場内は、すでに人であふれていたが、今年デビュタントの令嬢は、白いドレスを着ているので一目でわかるようになっていた。
「まずは王族の方々に挨拶にいくぞ」
ジョルジオがエマリアと共に、王と王妃のもとへ向かう後ろから、ディミトリアスはクロエをエスコートしながら進んでいく。
(やはり何人かの男たちはクロエが気になるようだ…)
自分に向けられる令嬢達からの秋波は視界に入らないのに、彼女に向けられる視線には敏感に反応してしまい、顔に不快感が滲み出る。
「....やっぱり私よりお姉様の方が良かったですよね」
クロエの呟きに、ディミトリアスはハッとなり視線を向ける。
「……会場に入ってから、お顔がずっと強ばってらっしゃいますわ…やはり私はお父様にエスコートしてもらって、デミ兄様はお姉様を「いや違う!」……えっ?」
クロエの言葉を遮るように出した声が思ったより大きく、周りの視線が一気に集まる。
「どうかしました?」
前を歩いていたエマリアが振り向き、心配そうに尋ねる。
「ゴホン…あぁ…何でもない」
「本当に?」
今度はクロエに尋ねた。
「あ…はいっ!」
慌てた彼女は元気のいい返事をしてしまい、再度視線を集めることとなり、顔を赤く染めた。
「…そう…なら参りましょう」
エマリアは彼女の様子に頬をゆるませると、
何事もなく挨拶は終わり、会場にいた知り合いらと言葉を交わしてうちにダンスの時間を告げる音楽が室内に鳴り響いた。
ディミトリアスは宣言通り、ファーストダンスを踊るためエマリアをホールへとエスコートする。
彼女のとても嬉しそうな顔に、自分も自然と笑みになり、気づけば2曲踊っていた。
「今夜はありがとうございました…そろそろクロエに変わりますわね。一人で心細そうにしてますから」
エマリアの視線を辿れば、確かにクロエは壁の花となっていた。どこぞの子息が声をかけていたが、頚を横に振っている…断っているのだろう。その姿にディミトリアスはホッと胸を撫で下ろす。
「ふふ…過保護な父のようですわ」
「いや…そんなことは」
「……早く行ってあげて。貴方と踊るの…楽しみにしてましたから」
婚約者の許可を得たディミトリアスはクロエの元に向かった。無意識に早まる足。その後ろ姿をエマリアはどんな
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