転生したら最強少女になれました

村雨 灰都

第1話「とても、楽しいです」

初めまして。レイです。

今、このダンジョンの奥にいます。

突然で申し訳ないのですが、もしこれを読んでいるのならば、助けてくれないでしょうか?

実は…

パーティーメンバーはどうした?

あぁ、残念ながら、私以外は全員死んでしまいました。

とまぁ、そんな感じなのですが、このままだとモンスターに襲われて死んでしまいます。

どうか、私を助けてください。


「ふぅ。こんなもんでしょうか」

あとはこれをダンジョンの前に置くだけですね。なんと簡単なことか。

これで馬鹿な勇者の方はたくさんのお金を持ったままこのダンジョンの中に入ってくれるはずです。

まぁ、ここ。ダンジョンのように作った私の狩場なんですけどね。

魔王に征服されてしまったこの世界はたくさんの勇者が魔物を狩ってギリギリ魔王軍を抑えているというなんとも平和な世界です。

そして、私はその中で、世界中を旅しながら、正義感溢れる勇者から少しお金をもらって暮らしているただの魔法使いです。

なんと愛でできた世界なんでしょうか。

あ、もちろん冗談ですよ?

お金をもらってるわけではなく強奪しています。

はい。

「早速来ましたね」

先日、この近くの村には「近くにダンジョンが出来た」と言っています。

ダンジョンとは、魔物やボスが住んでいる所です。

そんなものが出来たと知れば正義感あふれる勇者の方々は絶対に攻略しにきます。

あとは、来た勇者の方を後ろから睡眠魔法。金目の物をいただいてから空間移動魔法で村の教会へ送って差し上げます。

そうすると勇者の方は、

「なっ…この私が殺された…だと…!?」

などと言ってからレベル上げしたり装備を強化してまた来てくれます。それを繰り返して頃合いをみてダンジョンを崩します。

なぜダンジョンを崩すのか。強すぎるとギルドというとても強い方々が来てしまうのでその人たちがくるまでに逃げるためです。

なんて頭の中でこの作戦を謎に解説しているうちに勇者様はダンジョンの中にはいられたそうですね。


ダンジョンのかなり奥の方まで入っていった勇者様を私が後ろから催眠魔法を撃とうとした時でした。

「後ろにいるのは分かっているぞ。魔法使いの犯罪者」

おっと。私の事バレてましたか。…逃げましょう。

そう思った刹那。私の意識は途絶えてました。


それから約1ヶ月後。

私は処刑されそうになっていました。

というか、処刑当日でした。

どうやら、私のダンジョンに入った人は勇者などではなく、かなり強いギルドのギルド長だったとか。

気を失ったあと、被害があった貴族様のところへ私を送ったそうです。

紳士の貴族様方は、勇者様から金を巻き上げたという刑で理不尽なことに処刑を言い渡しました。

私もそれなりに抗議したつもりでしたが

「随分横に大きいですけど、きちんと運動していますか?」

と聞いたあたりで、執行までの期間を半分にするというなんとも理不尽なことを言い渡されました。

私が何をしたと言うのでしょう。

「首をかけろ」

後ろから声が聞こえました。

私は上に鋭い刃がかかっている台に首を乗っけます。

なんというか、短い人生だったなと思います。


最後に、言い残すことはあるか。

私よりも高い位置に置かれている椅子に座った太ったお方…貴族様がそう言いました。

言い残すことですか…まぁ、いうとするなら。

「本当に平和な世界に産まれたかったです」

瞬間。視点が回ったと思うと私の首がついていた断面がとてもくっきりと見えました。


あれから、どのくらい時間が経ったのでしょうか。

感覚は残念ながら全くありません。でも、今のように考えることは出来るようで。

なんというか、とても不思議な感覚でした。


声が聞こえ始めたのは、それから体感的に2日ぐらい経った時でしょう。最初はなんと言っているのか全く分かりませんでした。けれど、その声はいきなり止まります。そのあと数秒のラグの後、私は誰かに上から何かを剥ぎ取られたあととても大きな声で怒鳴られました。

「いつまで寝てんの!?遅刻するよ!!?」

私の意識はその声により覚醒しました。

「なんですか!?だれですか!?」

久しぶりの体を動かす感覚に少しの嬉しさを感じながら、私は目を開けて叫びました。

最初に目に映り込んできたのは、見たことの無い黒い髪の女の子。私より少し年下あたりでしょう。

見たことの無い服を着ていました。かなり可愛い服を着ておられます。

ちなみに、私も見たことの無い服を着ていました。

切られたはずの首も無傷です。


えっと、新しい情報が多すぎて頭が追いつかないので、少し落ち着きましょう。

死んでしまった時に別の世界へ行ってしまうという話を聞いたことがあります。生まれてすぐこの身長ではないでしょうし、多分その現象が起こったのでしょう。確か…転生と言ったはずです。

遅刻する。と言っていたので、どこかへ出かけるところだったのでしょう。寝ているということは私はずっと寝ていたのでしょうか。

「どのくらい寝てましたか?」

一応目の前にいる女の子に聞いてみます。

「はぁ…そのぐらい自分で確認してよ。あと、なんで敬語なの?」

自分で確認ですか。まぁ、なんでもいいか。

「敬語は気にしないでください。長い間使っていて癖になってしまっているだけなので。あなたが私をここに転生?させてくれたのですか?」

「今日ちょっとおかしいよ?まぁ、いいや。とりあえず早く着替えてきてね」

話が噛み合っていないことだけはわかりました。

とりあえず、こういうものは、落ち着いて相手に合わせることが大切なのでしょう。

そうなると、着替えなければですね。

部屋から女の子がいなくなったあと、私は部屋に1人なりました。

とりあえず立ちます。床にはモコモコした絨毯のようなものが。周りを見渡すと机やクローゼットなど、前の世界で見たことのあるものがいくつかありました。

前の世界では、クローゼットの中に服を入れていましたが、ここではどうでしょう。

開けてみると思った通り服がいくつも入っていました。え、これ全部服ですか。まじですか。

…どれ着ればいいのでしょう。

いくつもある服を掻き分けていると女の子が着ていたものと同じ服がかかっていました。

とりあえず同じものを着とけばいいですかね。

これ、どうやって着るべきなんでしょうか。

というか、このヒラヒラしているものは着るべきなんでしょうか。

まぁ、同じようにしなければいけないのでしょうし、着ましょう。

女の子のことを思い出しながら、なんとなくで来てみます。

「こんな感じですかね」

我ながら上手に出来たと思います。近くにあった鏡で自分の姿を見てみると、きちんときれていました。

そして、私はそこで自分がどのような姿をしているのか初めて見ました。

なんというか、これが自分だときずくのに少し時間がかかりました。茶色いボサボサの長い髪にとても可愛い眠そうな顔をしている女の子がそこにいました。

さっきみた子よりも、小さくみえました。

「……え?」

見た目的に140後半あたりの身長。え。まじですか。


そういえば、魔法は使えるのでしょうか。

私は頭の中で前の自分の姿を思い出しながら、魔法を使います。使う魔法は、変身魔法。前の自分と今の自分を見比べるついでに魔法の確認もしておく感じです。

「着替えんの遅いよ…ってだれ!?」

ドアが開いたかと思うとさっきの人が出てきました。

とりあえず魔法は使えるようですね。


パンを四角くして作ったような食べ物を貰った私は、起こしてくれた(?)女の子と一緒に学校というところに向かっている最中でした。

外の世界は全く見た事のない世界でした。

地面はとても硬いタイルのようなものが敷き詰められていて、上をみると謎の棒と線がそこらじゅうにありました。何故か道の真ん中ではなく端を歩いていると、硬そうな素材でできた…なんですかこれ。見たことの無いタイプの魔物なんでしょうか。しかし、中に人がいて、まるで操っているようでした。他にも、とても高くて大きな建物や赤と青を繰り返して光らせる棒など見たことの無いものがたくさんありました。

最初のうちはそれがなんなのか考えていましたが、考えているうちにまた新しいものが現れるの連続で途中から考えることをやめました。

前いた世界と今いる世界とでは、文化にかなりの差があるようです。

遅刻すると言う割には全く急ぐ素振りをみせない彼女は一体何を考えているのでしょうか。家を出てから一言も喋っていませんでした。

「あの…大丈夫ですか?」

「え?あぁ、うん大丈夫だよ」

大丈夫と彼女は言っていましたが、見る感じ、あまり大丈夫そうには見えませんでした。

見るからに緊張している彼女がそこにはいました。

「随分と緊張しているように見えますけど…」

そういうと彼女は涙目でこちらを見ながら言ってきました。

「私、今日の言わなきゃいけないやつ、全然考えてなかった…」

はて、今日の言わなきゃいけないやつとはなんのことでしょうか。というか、何を言うのでしょうか。

「どうしよー!!やばいよ!これ終わったよ!!」

あなたの語彙力の方がやばいので安心してください。と言いたかったですが我慢しました。

「今日何か言わなくてはいけないものなんてありましたっけ?」

「零にはないけど私にはあるの!!てか、この話昨日もした!!」

なるほど、私の名前は零というのですか。前の世界と同じ名前のようです。あ、今はそれどころじゃないですよね。

「まぁ、なんとかなるんじゃないんですか?」

そういうと彼女は「そうかな」とか「でもな」とか色々言った後、「まぁ、大丈夫か」という結論にたどり着きました。


学校と呼ばれていた所はとても大きな建物でした。

5階建てでいくつ部屋があるのか分からないほどの窓の数。横、奥行きもかなりのものでもしかしたら今まで見たものの中で1番大きいかも知れません。

学校の近くまで行くと、同じ服をきた人がたくさんいました。小さな村ぐらいなら余裕で出来そうなくらいの量です。でも、全員私たちぐらいの若さで、大人やご老人は全くいませんでした。

私が、その迫力に圧倒されていると、一緒にいた女の子から「こっちだよ」と声をかけられました。

そういえば

「あの、貴方なんていう名前でしたっけ」

かなり失礼な質問ですが、これは絶対に聞かなければいけない気がしたので。

「今日、本当におかしいよ…中3初日そんなんでいいのかな…ネタだと言うことを信じているけど一応私の名前は梓(あずさ)だからね」

なるほど梓ですか。


まぁ、なぜこうなってしまったのかは最終的には全くと言っていいほど分かりませんが、とりあえず死んでしまったら別の世界に転生してしまい、美少女になってしまったようです。

先に言ってしまった梓を追いかけながら、私は小さな声で言ってしまいました。心の中で抑えることがでませんでした。


「とても、楽しいです」

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