第二夜 手紙



僕は手紙を書いた

黒いスピーカーから流れるBGMに乗せて

「レポート用紙」と表題があるレポート用紙に

0.5mmの芯のシャープペンシルで 手紙を書いた



今日あったこと

昨日あったこと

数分前に思ったこと

ずいぶん前のことで思い出したこと



話題は何でもよかった

最後に「!」マークをつけても つけなくても

最後に「?」をつけても つけなくても

その瞬間だけ 重要な意味があった



横顔を思い出しながら書いた

ブラウスの背中を思い出しながら書いた

変な鉛筆の持ち方を思い出しながら書いた

雪に残る足跡を思い出しながら書いた



等間隔で引かれた横罫いっぱいに文字を書いて

それが2~3枚になったら

最後に「今日はこれでおしまい。おやすみ。」

って 書けばよかった



ごくたまに

聴いたことのある曲が黒いスピーカーから流れると

シャープペンシルの動きを止め

目の前の真っ暗窓の向こうを見ることなく見た



手紙で何かを伝えたいんじゃない

言葉にしにくいことを手紙にしてるわけでもない

シャープペンシルを持っている間に

感じたことを ただ 文字にする



日中 話しても足りないから

夜に 話せないもどかしさを

さも 目の前に彼女が居るかのように

話すように 頷くように 笑うように…



明日も封筒に入れずに渡す

このレポート用紙を4つに折って渡す

真っ暗窓に彼女の顔が浮かべばいいのに



しょうがないけど 間抜け顔の僕が写っている





♪♪♪

Deniece Williams「Free」

https://www.youtube.com/watch?v=dH5cJgeHm98

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