アクアバレット そのⅣ
残った四人が校舎内にいないため、粒磨は外を探すことにした。昇降口で靴を履き替えると、後ろから何かが飛んで来た。
「不意打ちか…。可能性はある攻撃。だが言い換えれば、それじゃないと俺を倒せないと言っているようなもの。違うか、四葉、衝三!」
飛んで来たのは、ヤシの実だった。予測できない動きではないので、粒磨は反対を向いていながらも余裕でかわす。
「おかしいよ様子がさっきから」
四葉が言う。続いて、
「変な薬でMO、打ったのかYO?」
衝三も言う。二人は先ほどの攻防を離れたところで見ていたのだ。そして後者をうろつく粒磨から逃げ、昇降口で攻撃を仕掛けることにした。クラスメイトには全員にメールをしたが、返事が返って来たのは真沙子と小豆沢だけだった。
「ちょうどいい。ここでお前たちを倒す」
「へE、やる気満々かYO? じゃあ俺も行かせてもらうZE!」
スケッチブックを開く。画用紙から飛び出したのは、拳銃。モノクロではあるが、原寸大なので本物と威力は変わらない。水鉄砲よりも本物の銃の方が、弾丸が速いと考えての選択だった。
「効かん!」
だが、弾丸は撃ち落とされた。粒磨の動きが速すぎる。それに迷わず、距離を詰めてくる。
「くSO! これも駄目かYO…」
「よこして次の」
四葉は衝三から植物の種を受け取った。もちろん衝三の描いた絵だが、色がないだけで、実際の物と用途は変わらない。さっきもヤシの木を一瞬で生やしたぐらいだ。
「行くよ粒磨」
四葉が成長させたのは、松ぼっくり。その葉っぱは針のように尖っている。これを粒磨に向け、発射する。さっきの戦いを見ている限りでは、海水は用意していないはず。水が尽きるまでこの葉を飛ばすのみ。
松の葉が一斉に、粒磨目掛けて宙を舞う。対する粒磨はまず一発、水を撃った。
「狙ってるのどこを?」
しかしそれは、葉を一枚も撃ち抜くことすらしない。続いて水を散弾させると、初めて葉を防いだ。
「あっ」
最初の水が、四葉の手に当たった。でも力を感じない。これは誤射か? 近くで見ていた衝三すらそう思った次の瞬間。
水がまるで生き物のように跳ね、四葉の手の松を叩き落とすと、衝三のスケッチブックを貫いた。
「何だTO!」
新しいスケッチブックを出さなければ。衝三の次の行動は単純だが、粒磨の銃口は彼に向けられている。この近距離では、射撃は正確だろう。とすると、出すのがメモ帳でも自由帳でも、スケッチブックでもページをめくる前にやられる可能性が高い。
「…でもNA、これぐらいは想定内だZE」
「何だと?」
粒磨が衝三の言葉に、一瞬だけ待った。その直後、粒磨の両腕は太い樹木に縛られた。
「成功したやっと」
四葉は、手に杉の種を忍ばせておき、それを成長させて粒磨を縛り上げた。これは粒磨が動くと失敗する確率が格段に上がるため、最初の一撃をワザと失敗したかのように見せ、隙を作らせる必要があった。
「さA、どう料理してやろうKA?」
「さあな」
粒磨の腕は自由ではないが、まだ水鉄砲を握っている。これで水の刃を作ると発射する。
「ないよ意味が」
「大あり、だ」
放たれた水の刃は軌道を変え、粒磨を縛る樹木を切り裂いた。
「そんなNO、アリかYO!」
水の刃の、魔法の弾丸。水が真っ直ぐ飛ぶとは限らない。
「まず衝三」
衝三は、瞬時に描かれた水の渦に飲み込まれた。
「うごおおおおおO!」
そして回転しながら、下駄箱に衝突した。
「大丈夫衝三…」
四葉が彼に駆け寄ろうとしたが、粒磨が間に割って入った。そして水鉄砲の銃口を、四葉の首筋に押し付ける。
「待ってちょっ…」
ゼロ距離射撃。四葉のそれほど重くない体が、いとも簡単に反対側の下駄箱に向かって吹っ飛ぶ。
「後は二人だけだ」
粒磨は昇降口から、校庭に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます