ドリームドロー そのⅥ

 衝三たちが俺に向かって突進してくる。面倒だ、まとめて葬ってやる!

 俺は水の刃を一メートルぐらい伸ばすと、その場で横に一回転した。衝三たちは体を切断されるが、誰一人として出血していない。俺の読みが当たった。

「さあて、衝三! 隠れてるだけじゃ、俺には勝てないぜ? それとも、白旗でも即興で描いて、掲げて降参しようとしてんのかよ? みっともねえな!」

 今度は俺が言う番だぜ。さあ、どう出る?

「いいYA、粒磨お前の負けだZE! 絵は何でも描けRU。存在していないものでもNA!」

 何が言いたい…? だがその疑問は、一瞬で消えた。急に日陰になったからなんだと上を見上げると…。

「ドラゴンじゃねえか…。こりゃまた、派手に…」

 全長で言うなら、十メートルぐらいか? 胴体の長い東洋系の奴。アレが俺の目の前にいる。

「……あの鱗、硬いな」

 俺は水の刃を飛ばしてみたのだが、通じない。鱗が硬くて何も切り裂けないのだ。

 口を開けた。息を吸い込んでいるようにも見える。だとしたら……。

「あ……危ねえ!」

 横に飛んでいなければ、俺の体はモノクロの炎によって炭に変わっていたかもしれない。

「これは厄介だぜ。俺の水は効かねえし、火は吐くし…」

 こうしている間にも、衝三は次の絵を完成させているかもしれない。このドラゴンは無視して、衝三を叩かねば!

「そこか!」

 ドラゴンの後ろに、衝三を発見した。鉛筆でスケッチブックに凄まじいスピードで何かを描いている。

「ここで…潰す!」

 俺は大型のウォーターガンをアポーツで取り寄せた。さっき偽物が持っていたアレだ。

「そんなもんJA、このドラゴンは倒せないZE!」

 確かに衝三の言う通り。水は通じない。

「これで戦うとは、一言も言ってないぜ?」

「何だTO?」

 俺は、ドラゴンが息を吸い込むまで待った。そして口を開け、空気の流れを肌で感じる。

「今だ!」

 ドラゴンが炎を吐き出すと同時に俺は反転し、ウォーターガンを地面に向けてそしてトリガーを引くと、ジャンプした。水の勢いを操作してあるので、俺の体が浮く。ドラゴンを飛び越えて衝三の方に向かう。

「こっちに来TE、俺と勝負する気KA? だがYO、ドラゴンが計算に入ってないんじゃないのKA?」

 それは俺の勝算に入れてあるぜ。

 ドラゴンは振り向いた。当然だ、俺が後ろに回ったから。だが、まだ炎を吐いている途中だよな?

「熱I! おI、やめRO!」

 だが遅い。衝三は火傷もしないで済みそうだが、スケッチブックはそういうワケにはいきそうにない。炎で燃え上がる。

「しまっTA!」

 スケッチブックが燃えると、ドラゴンの方にも火がついた。どうやら、画用紙が駄目になると実体化している絵も終わりらしい。

「だGA、すぐに鎮火してやるZE! 待ってろYO…」

 三冊目のスケッチブックをアポーツで取り出すと衝三は、それを開く。実体化したものは白黒だったが、俺でも何であるのかがわかる。

「おいおい、衝三…。水を操る俺の前で、水で鎮火しようとするのか?」

「!」

 反応するのが遅いぜ。衝三が実体化させた水は、衝三に向かって逆流させてやった。

「うBA!」

 水流で後ろに下がる衝三。そして俺が、衝三と燃えるスケッチブックの間に割って入る。

「もらったあああぁあ!」

 後は何も考えずに、撃ちまくるだけ。

「どわわWE…」

 衝三が耐え切れずに崩れ落ちた時、ちょうどスケッチブックも燃え尽きた。


「何とか、なったな…」

 俺はびしょ濡れの衝三の体を起こした。気絶してるだけだな。そして白い球体が、飛んで行く。

 俺はこの時、不安になった。

 あとクラスメイトは鍵下太陽しか残っていない。だが鍵下からも、この白い球体が飛んで行ったら、どうすればよい? 真実を鍵下は、本当に知っているのだろうか…?

 とにかく俺は、最後の一人である鍵下に備えよう。今できる最善の策は、それしかない。

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