グラビティダンス そのⅡ
少し逃げたと思ったら、守は反転した。俺と向き合う。
「来るか…。だがはたして上手くいくかな? お前は不意打ち前提で俺を追尾していたんだろう? バレちまったんなら、その作戦は失敗だぜ?」
「╰(*゚x゚*)╯」
おお、怒っている。表情が豊かだから、開と違って読みやすい。これはもしかして、俺が思っているより戦いやすいかもしれない。
「俺から行くぜ!」
俺は水の球を撃ち込んだ。対する守は、糸鋸を投げた。
「何?」
水の球は、糸鋸によって二つに切られた。二つになったその両方が、意味のない方向に飛ぶ。かわされた。
「⊂(・ω・*)∩」
来る。守の攻撃が!
何が来る…? 守が今までに使ったのはネジと糸鋸。金属に関する超能力か? だがそう決めるのはまだ早い。どうやって天井に張り付いているのかが、まだわかっていな…。
俺は、冷や汗が出た。釘が凄まじい速さで、俺の横を通り過ぎたからだ。
俺の視線は、釘よりも守に向いていた。コイツの超能力は何だ? それがわからない。金属を操る超能力か? でもそれなら、さっき使った糸鋸で、防御と共に攻撃もできていたはず。それをしないということは、金属…ではないのだろう。
だが今、釘が飛んできた。守は釘を、手から放しただけのようだったが、それであのスピードだ。
金属を加速させることができるのか? でも仮にそうだとしたら、一体どうやって天井に張り付いている? 駄目だ、金属は答えじゃない。
俺は釘を、床から抜いた。普通に触ることができる。拾うこともできる。
「これを、どうやっ…」
首を守に戻すと、ビー玉が俺の腹を目掛けて飛んできた。
「ぶ!」
滅茶苦茶痛い。吐きそうになるぐらいだ。大丈夫か、俺の腹…。
だが今のでわかったことがある。
「守…お前の超能力は、金属には関わってないな? ビー玉はガラスでできている。それを釘と同じ速度にしたということは、そういうことと判断できる!」
「(゚ロ゚; = ;゚ロ゚)」
その慌てる表情を見るに、図星のようだな。候補を潰したところで、超能力の正体を探ろう。
守の攻撃は、至って簡単だ。飛び道具を使うだけ。だがそれを、投げるようなことはしない。指から放すだけだ。それだけなのに、スピードも威力も半端なものではなくなる。
「もしかしてだが…」
俺の中に、ある候補が浮かんだ。それを証明するために、俺は少し助走をつけて、
「うりゃ!」
俺はジャンプした。そして守の腕を掴んだ。
「∑(゚◇゚///)」
驚いている。だがそれは、俺も一緒だ。
俺の体は、天井に向かって落ちた。
「なるほどな…。重力。それがお前の超能力の正体か。だが操れるのは、自分に対する重力だけのようだな。今こうして俺がお前の腕を掴んでいるとお前の超能力には俺が、体の一部かもしくは、持っているものと判断されているらしい…」
おかげで、俺も天井に足をつけることができているぞ…。
「手から放れれば、重力は普通に戻る。それを利用して、飛び道具で攻撃してきたのか」
だがどうやって加速させた? それも重力に関する超能力ならではのことなのか?
「(#^^#)」
少し怒った守は、俺の手を強引に振りほどいた。守の体から放れた俺は、勢いよく床にぶつかった。
「何だと…?」
天井から落ちたのなら、こんなに痛くはないだろう。だが衝撃が強い。強すぎだ。もっと上から落ちて来たみたいだ。
「重力に逆らっている間、力でも蓄積されるのか? それが手を放すと、一気に解放される…?」
そうとしか考えられない。それはおそらく、守自身には働かないのだろう。自分以外は、守が持たない限り重力には逆らえず、手を放すと逆らっていた間に働くはずの、下に向かう重力を一気に受ける…。そんな感じか。今、守は天井に足をつけている…つまり本当の重力とは真逆の方向に力が働いている。だからわずか数秒でも、強い力で地面にぶつかる…。
「(*´∨`*)」
「何笑ってやがる?」
いや、笑うだろうな。守が持っているものは、ボルト。最初のネジ、防御した糸鋸、そしてさっきの釘よりも威力が上がっている。次に手を放すそれには、今まで以上の力が働くはずだ。
「クソ…。長引くだけで、俺が不利になるのか…」
思ったよりも、本当に厄介だ。
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