第八話 重力と骨破守

グラビティダンス そのⅠ

 空飛と開が不安だったが、次の朝にはちゃんと姿を見せたので安心できた。どうやら、いらぬ心配だったようだ。

「空飛…お前は本当に何も知らないのか?」

「何度も言わせるな。私がお前に負けたのは認めてやるとしても、それ以上はお前に答えることはできん…。私が知りたいぐらいだ」

 空飛も、

「質問ノ入力ヲ確認…。該当データ…ナシ。ソノ質問ニハ、答エラレナイ…。他ノ質問ノ入力ヲ…」

 開も駄目だった。こうなると、残りの三人に聞くしかなさそうだ。だがその三人は揃いも揃って、欠席。これは確実に、俺を避けている。

「ということは、三人の中で確実に知ってる奴がいるな。特に鍵下。一番怪しいのはアイツだ」

 俺は確信する。


 放課後、俺は真沙子に聞いた。

「あの三人の住所って、どこかわかるか?」

「知ってる、けど…。本人の許可なしには、教えられない、わね! プライバシーって、知ってる、わよね?」

 教えてくれないのか、と思ったが、よく考えなくても当たり前の発言だ。

「毎日欠席するのは無理、じゃない? きっと明日は来る、わよ」

 真沙子の言う通りか。俺は真沙子に礼を言うと、教室を出た。

 空飛と鍵下が一緒にいた教室があったはず。そこに何か、あるかもしれない。いや、絶対にあるはずだ。

「…?」

 どこか、視線を感じるな。だが振り向いても、誰もいないぞ?

「気のせいか…?」

 自分でもわかるのだが、最近の俺の警戒心は異常だ。四六時中水鉄砲を構えているほどだ。そんな俺の本能が、今ここでアラームを鳴らしている。

 近くの教室に入った。隅々まで探したが、誰もいない。だが気のせいとも思わない。

「誰だ? いるんなら、出て来いよ! それとも何だ、卑怯にも不意打ちしか自信がないのかよ?」

 返事がない。この教室にはいないようだな。でも視線を感じるのは、間違いない。

 教室を出て、廊下を歩く。そしてまた、振り返る。

 後をつけられている気がするのだ。でも誰もいない。

 何かがおかしい! この違和感は、原因があるはずだ。だがそれが何なのかがわからない!

 俺は壁に向かって拳を振った。ドン、と音がする。

 その時だ。コロン、と何かが落ちる音がした。

「これは…ネジ?」

 なぜネジがこんなところに落ちている…違う、落ちた? 機材を持った人とは、すれ違ってはいないはずだが…。じゃあこのネジ、どこから出て来たんだ? 近くにそれが使われていそうなものはないのだが…。

 俺は上を向いてみた。天井から落ちて来た、とは考えにくいが、そこ以外には何も思いつかなかった。

「(*∩ω∩*)」

 いた…! 違和感の正体が、天井に! コイツは確か、骨破守。天井にヤモリのごとく張り付いている。

 やはり、後をつけられていたのだ。周りを探しても追跡者を発見できなかったのは、天井にいたからだ。感じた視線は、やはり勘違いではなかった。

「守…。俺をつけて、しかもバレたからには、わかってんだろうなぁああ?」

 俺は懐から水鉄砲を取り出す。

「(๑ÒωÓ๑)」

 どうやら守も、戦う気があるらしい。

「ならば…くらえ!」

 俺は水を発射した。

「( ̄◇ ̄;)」

 守は逃げ出す。天井を地面のように走り出した。

「待て、コイツ!」

 しかし、守の超能力は一体何だ? 超能力で体を浮かすこと自体は難しくはないが、長くは続けられない。じゃあ、張り付くことか? でも今、両足が天井から離れたのに、落ちてこなかった。

 その正体がわかならないが、俺は追いかける。戦っているうちに明らかにすればいいか…。

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