前進

「おーい!もう行くよー」

タクシーのトランクに大きな荷物を詰める。

「テンちゃん、行くよ」リョウカが階下から声をかけた。

「うん、今行く!」

テンは藤木さんの写真に語りかける。

「パパ、明日からロサンゼルスだよ」





藤木さんの三回忌を終えて

ジンの高校入学を機に、俺たちはロサンゼルスに引っ越すことにした。

家は兄貴の家族に使ってもらう。

いずれは戻るつもりだ。

子供達にとって、ここは生家だから。


向こうにもみんなで暮らせる家を買った。


日本を発つ前に

子供達にお願いして親父に会ってもらった。


「リツ兄ちゃんのパパに会ってみたい」

そう言ってくれて嬉しかった。


「じぃじ!」本当にこの子達は人懐っこい。


「いつでも遊びにおいで。日本に帰って来たときは家に泊まってくれよ」


親父は喜んでいた。



俺達は『家族』だった。

夫婦じゃないし、血の繋がりもないけど

心が繋がっていて

温かくて

楽しいときは倍になって

悲しいことは半分になる。



俺が欲しかったものは、これだったんだ。

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