託されたもの

土方さんが心配して医師を手配してくれた。

週に一度、往診してくれて、薬をもらって少し落ち着いてきたようだ。

さくら、僕はいつも傍にいるよ。

もう悲しまないで。








さっき、目が覚めて


コーヒーを淹れよう


そう思った。


コーヒーを淹れよう。

それだけでいい。

まずはコーヒーを淹れよう。

今日はそれだけでいい。

明日、調子が良ければ

パンも焼いてみよう。


久しぶりにリビングへ降りてキッチンへ向かう。


ソファーでリツさんが眠っていた。


疲れているんだ…

仕事だけでも大変なのに、家へ毎晩通ってくれている。

本当にありがたい。

リツさんに、コーヒーを淹れよう。

せめてものお礼に。




「さくらさん…」

リツさんが目を覚ました。

「リツさん、いつもありがとう。頼りなくてごめんなさいね」

私はコーヒーを淹れようと、マグカップを取り出す。

「いいよ、俺やるから座って」

リツさんにマグカップごと抱き締められる。

確かにリツさんに抱き締められているのに

直幸さんに抱き締められているような気がする。

「悪いのは私なのに…ごめんなさい…」

座り込んで泣く私を優しく包み込むように抱きしめる温もりは、どうしても直幸さんのものに思える。

「預かってるものがあるんだ」


リツさんは、直幸さんからの手紙を差し出した。

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