ひざまくら

「リツ兄ちゃん、お馬さんして!」

「ダメ!私とババ抜きするの!」

「はいはい、順番ね」

「リツさん、それが終わったらゲームしよ」


リツが子供達に引っ張りだこなのを見ながら

僕達三人はダイニングで宴会。さくらさんは手際よくどんどん料理を出してくれている。

「イケメンは子供にもモテんだなー」

「リツくん、面倒見いいね」

「そうですね、親戚で集まったときも子供達はみんなリツに群がりますよ」

「何だよ、もう俺には見向きもしねぇ」

佐藤さんは、シルバーバックを小さく丸めて寂しそうだった。


「ハイボールおかわり!」

「ハイ!喜んで!」

「お酒も作ってくれるし、よく動いてくれるよ」

ハイボールを持ってリツが来る。

「仕事離れたら自分が一番年下なんで動きます!」

「いいねー!その体育会系精神!」

「あざーす!」

違う。おまえはさくらさんのそばに居たいだけだ。


藤木さんの肩越しに、キッチンにいるさくらさんとリツが見える。

リツがさくらさんにあーんをねだっている。

さくらさんが箸で唐揚げを摘まんで、リツの口元へ持っていく。

まずい…藤木さん、今振り向かないで。

「藤木さん、コレすごくおいしいですね!」

「それウマイよね。俺も好き」

取り皿に料理を取り分けて、藤木さんに手渡す。リツは嬉しそうに唐揚げを頬張っている。なんで俺がフォローせにゃならんのだ。

イチャコラするな!早く離れろ!







椅子で寝てる兄貴と佐藤さんを和室に連れていって、藤木さんは寝室へ行くように促した。流石に二人の寝室は直視できない。

リビングで片付けている花さんを手伝う。


「さくらさんって言うんだ」


「そうなの」ふふっと笑う。


「会いたかった」


皿を洗うさくらさんを後ろから抱き締める。


「ダメですよ」皿洗いの手を止める。


「少しだけ。俺、今日頑張ったでしょ?ご褒美」


「少ししたら、おしまいにしてね」


「なんか、子供に言うみたいだな」



一年ぶりの花さんの柔らかな温もりに、安堵と眠気が襲う。この温かさに包まれて眠りたいと何度願ったことか。


「眠くなったから、ひざまくらして」


「ほんとに子供みたいね」


久しぶりのひざまくらで、子供のように眠る。

さくらさんが優しく髪をなでる。

なんだろう、この感じ…

すごく温かくて気持ちよくて安らぐ。

これが『幸せ』ってヤツなんだろうか。

快楽とも、快感とも違う心地よさ。

俺は今までにないくらい

深い眠りに落ちた。

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