121:つまり、とても、だめでした。

 とはいえ、後輩くんとの電話の頻度は、そのときにいつも電話につきあってくれていたひとたちのなかでは、もっとも低いほうに入りました。

 それはまあ彼が高三で受験生で当然といいますか実家暮らしで遅くまでうるさくできなかったらしいということもありましたし、私のほうも多少は遠慮していたと思います。

 二十代も後半に差しかかったいまでは正直「高三も大学一年もおんなじ十代ならほぼ同じ」みたいに見えてしまうのですが、当時はその年代の当事者だったので、やっぱり――私生活のうまくいってない大学生が夜な夜な通話相手を求めてさまよっているところに「まだ若くてピュアな高校生」を巻き込む、というのは、なんかすごくとてもだめなことのように、感じていたのですね。


 いまにして思えば、だめなのはべつに高校生だからうんぬん、歳がなんとかだからうんぬん、ということではなくて、相手をそういうことに利用しようとする、そのことそのものです。

 いまだからすこし言えるのですけど、当時の私は年上のかたに対する依存心がとても強かったように思えます。年代の差は、さまざまだったのですが。

 そして、とくだん選んだなどというつもりはないのですが、結果的にその八割くらいのかたは異性の、つまり男性のかたで、そういう相手がまあ何人かいらっしゃって、なんとなく夜に話を聴いてもらう――みたいな、そんな感じの毎日を送っていました。




 つまり、とても、だめでした。

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