103:私にとっての高校生活の完全なるエピローグ。
これは、私にとっての高校生活の、完全なるエピローグになるのですが。
卒業式のあとすぐ、なにか先生に用があって、高校を訪ねました。なんの用であったかはよく覚えていません。ただお相手は担任の先生だったのかなということはぼんやりと覚えています。
制服ではなく私服で来い、と言われました。学籍は三月いっぱいは学園にあるけど、もう卒業生だから、と。
私服で学園に行くのは変な気持ちでした。三年間、制服で通いつめたのです。帰り道に着替えて遊びに行こうと私服を持ち込み、それがバレ、こっぴどく怒られたことだってありました。だから私服で学園にいたら意味もなく怒られるような感覚さえありました。もちろんそんなことはなく、卒業生となった私が私服で学園に来ること、職員室に訪ねることを、咎める教師はもうだれもいませんでした。
職員室前のQ&Aコーナーで、制服姿の駆けるひとたちとすれ違いました。
……その日、彼に会ったのかはよく覚えていません。ひょっとしたら、どこかですれ違ったのかも。
でも、会ってない気もします。
ただ、私が制服姿のひとたちを前にして思うことといえば、私はもう、高校生ではなくなってしまったと――ただ取り返しのつかない、気持ちでした。
……もう、彼とおなじ立場ではない。いま振り返れば微笑ましいほどの些細な差でも、当事者にとっては、高校生と大学生という隔たりは大きかったのです――。
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