13:「後輩っていうのは、いいものだなあ」と自分でも錯覚をしてしまったのですよね。
彼が文芸部に入るかどうかが、正直自分ではいちばん気になっていました。
私は、高校からはすごく明るい性格になっていて、ひとのことも気にしていて、すぐに「○○ちゃん!」「○○くん!」と話しかけるような感じだったので、彼から見たらたぶんですが「たくさんいる新入生のなかのひとりとして、声をかけられている」という感じだったかも、しれません。
でも、私は、おとなになったいまでもよく覚えてます。
私は、あのときたくさんいて、みんなけっこう独特でいい子たちばかりだった新入生のなかでも、
彼を、後輩くんを、やたらと意識していました。
家に帰ってベッドに寝転がって天井などを見ていても、「あー、後輩くん入ってくれるんかなー」とか、思ってました。
私は中学の部活を途中で辞めてしまったので、後輩というものが高校まではいなかったのですね。
高校に入って、付属中学の中学生の後輩たちとはかかわりができたんですけど、やっぱりなんというか……自分が高二のときに入ってくる新入生、というのは、とくべつな感じはしていたんですね。それはそれで、その、ほんとうではあったんですけど。
だから、「後輩っていうのは、いいものだなあ。楽しそう。それに気になるものなんだねえ、なんかあんなんで高校生活だいじょうぶかとかさあ、まあこっちのほうが一年も多く生きてるしなあ。先輩だもんね」とか思っていて、その気持ちじたいはほんとうでしたけど――この気持ちは数年後、いざつきあうとなったときに、私の心に大混乱をもたらします。
まあ、それはそれで、またあとで書いていくと思います……。
私は、とかく彼の「先輩」になりたくて、なってからもそうありたくて、しばらくは必死でした。すくなくともこの出会いのときから、高校生活二年間、それは、ずっと、ずっとそうだったんですよね。
だからまずは文芸部に入ってくれなければ、あの子の「先輩」にさえ私は、なれない。
――考えに考えたすえ勉強時間の確保がおもな目的で退部したばかりの演劇部、その決断が、新入生の彼の登場したこの時点ですでにちょっとぐらついたのも、ほんとうです。私も、高一のときには一年間、がっつり演劇部でした。
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