第108話 驚愕

 動画サイトで小動物と飼い主が戯れる動画を、仕事の疲れの癒しとしてよく見ていた。しかし、ソラときたら食っちゃ寝の生活を、満喫していらっしゃる。飼い主とじゃれ合って遊ぶなど、だいぶ先の出来事のように思えた……。そこで指で摘んだ虫をソラの前でブラブラさせて、すぐに食べさせないという悪戯を仕掛けてみる。最初は上手くはまり「キューキュー」と声を上げながら食事をくれとせがむ。そんな愛くるしい姿を楽しんでいたが、ソラは餌が貰えないと分かると思わぬ行動に出た。餌のつまった袋に、自ら頭を突っ込み一人で食べ始めた。 


「犬より頭が良いんじゃないか?」


 その様子を間近で見ていたレイラは、愉快そうに笑い声をあげる。そしてむんずとソラの身体をつかんで、袋から引っ張り出した。ソラは「グギャーー」と、彼女に抗議でもするかのように鳴き続けた。


「分かったから、そんな大きな声を出すな」


 そう言って、レイラがソラの頭を優しく撫でてやると、ソラは嬉しそうな顔をして、彼女の手からバリバリと虫を食べだした。


ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく


「ソラたん……ご飯は美味しいでちゅか~」


ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく


「次はこの大きなバッタをあげまちゅ~よ~」


ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく


「たくさん、食べまちゅねぇ~~~」


ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく、ぱく……ぱく…………ぱく…………ぱく………………ぱ……………………


「あらら、もうお眠でちゅか~~?」


 無邪気な顔をしながら餌をやってるレイラをぼんやりと見つめていた。彼女は俺の視線を感じたのか、真っ赤な顔になった。


「ば、ばか!? こっちを見るなよ!」


 何故か怒られてしまった……。俺はお前のもっと恥ずかしい××を見てるんだぞなんて言えるはずもなく


「すまない」


 肩をすくめながら彼女に謝罪した。


 レイラがうとうとしているソラを膝に置きながら朝食を食べている。俺はそんな彼女に優しく声を掛けてやった。


「レイラたん、ご飯は美味しいでちゅか~~~~~~」


 そのとき彼女の食べかけのパンが、手からぽろりと膝に転げ落ちた。彼女がそれを拾った瞬間、そのパンにソラが食いついていた。


「ソラがパン食ってるぞ!」


「うえーーーー!?」


 俺はあまりの出来事に、目を丸くして驚いた。


 ソラは美味しそうにレイラから、ちぎったパンを貰って食べていた。俺は台所に行き、葉もの野菜をソラに与えてみる。


 それはガツガツと食べましたよ! ガツガツとね! しかも生肉など与えてみると、虫餌以上に喜んで食べる始末……


 このトカゲ雑食でした――


この数週間の苦労を返してくれ!! 俺はに向かって声を上げた。

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