ある少女の決意
pizmo
いじめを受けていた、ある少女の話です。
「また〇〇が囲まれているよ」
そう言って友人が校門を出た先にある小さな公園を指さした。
同じ学年の〇〇が女子生徒十数人に囲まれ、罵声を浴びていた。
こんな光景を何度見たことか。
「あそこまでやらなくてもいいのにな」
ポツリと呟いて友人と逃げるようにその場を離れた。
ここは、とある郊外の規模の大きな中学校。
生徒数は全部で1000人くらいで、ひと学年350人いる。
〇〇は小柄で成績は良くなく、友達もほとんどいない。
いわゆるいじめられやすいパターンの女子生徒だった。
トラブルがあったとか、いじめられる要素があったわけではない。
本人に全く落ち度がないのに不本意ないじめを受けていた。
その当時はいわゆる校内暴力が大きな社会問題になっていた。
当然ながら他にも大なり小なりのいじめがあり
中には不登校になってしまう生徒もいたようだ。
そんなわけで、〇〇がいじめを受けているところを見かけても
見て見ぬふりをしていた。他の大部分の生徒と同じように。
普段の〇〇は、からかわれたり避けられたりしてはいたが
自分から話しかけたり目が合うと微笑んだりしていた。
でも巻き込まれたくないから誰もが無視して、いつもひとりだった。
こんな状態が3年間続いた。
卒業式の前日の全校生徒を校庭に集めての朝礼。
校長先生が卒業生にありがたい言葉を投げかけていた。
もちろん、そんなの聞くわけもなくザワザワしていた。
「卒業生の中に3年間無遅刻無欠席の生徒が3人いる」
と言って、その3人を讃えるために名前を読み上げた。
その中のひとりに〇〇がいた。
その瞬間、ざわついていた校庭が一瞬静かになった。
「すげーな」そんな声があちらこちらから聞こえた。
一方的な負け戦のような中学校生活だと思われたが
勝ったのは〇〇だったのだと思う。
ちなみに、〇〇は進学はしなかった。
ある少女の決意 pizmo @pizmo
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