赤点解答
「ちょっと話があるので今から行くから。」
珍しく電話が鳴り、いつもなら合鍵を使ってアポなしで我が家に上がりこむ彼女がそう言った。
やべえ、何かやらかしたか?
思い当たる節は山ほどある。しかし、今まで彼女が怒った様子はなかった……。
やべえ、何をやらかした?
ベッドの下に隠してあったエロ本、何故か綺麗に本棚に並べてあったあの件か?
それとも、一昨日彼女がうちに忘れたスマホでエロ動画を見たのがバレたのか?
それとも、昨日ネットに彼女もいないのに「俺の彼女が言うには」とか見え張って書き込みしたのがバレたのか?
「それともあれか、冷蔵庫にあったプリン!」
昨日何故か冷蔵庫に保管してあったふたつのプリン。
駅前の専門店の限定品だ。
焼きプリンとノーマルプリンのふたつがあったが、俺はその両方を平らげた。
「しまった、片方はあいつのだったか。」
普通に考えれば秒で分かる事である。
「まてまて、とりあえず落ち着こう。」
ネガティブなのはダメ。人生、常にポジティブに生きようが俺の生き様だ。
今回の件、とりあえず前向きな気持ちで考察してみよう……。
「そうか、愛の告白だ!!」
なんとなく思いついた言葉を口に出す。
しかし、それは毛ほどにもありえない可能性だと思い出す。
あいつ、俺が他の女の子に惚れましたって言っても無関心だったんだよな。
「それで、その子と交際したいんだ。」
くらいの薄い反応だったよな。
一緒の高校受験するって時は嬉しかったのにな。絶対合格するって思ったもんな。
一緒にお昼ご飯食べようとか誘われて嬉しかったよな。
不意に「今夜は月がきれいらしいよ」なんて言われて勘違いしそうだったよな。
彼女が口をつけたペットボトル、手渡されてあたふたしたっけ。
思わず間接キスに照れて、全部飲み干したよな。
手を引かれてのジョギングはドキドキしたな。ドキドキしすぎて軽口叩いたっけ。
弁当作ってくれるって言われた時は嬉しかったな。
欧米人に比べりゃ小さいけど、おっぱいは大きいほうだし、スタイルも凄く良いんだよな……。
「あれ、俺、あいつの事大好きすぎじゃね?」
思わず自問自答する。
「あいつにだけは嫌われたくないよな。」
頭を抱え、色々と思い出して考えてみた結論である。
「よし、とりあえずプリンと土下座の準備だけはしておくか。」
彼女が来るまで残された時間はあとわずかだ。
俺はサイフと鍵を握り締めると、駅前のプリン専門店へと走り出した。
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