英雄裁判

水無月暦

英雄裁判

日本を震撼させた大規模連続強盗殺人事件の容疑者が逮捕された。テレビや新聞にネット、あらゆるメディアが連日の報道を開始。それにともない徐々に今回の事件の概要が明らかになっていった。


・犯人は比較的警察の介入のゆるい、という理由で離島を犯行現場に選んだ事。

・犯人は日本刀などを所持し、最初から相手を殺し金品を奪う目的だった事。

・犯人は単独犯だが、最初から複数人を襲う計画だったので猟犬を連れていた事。

・犯人は奪った金で両親に豪遊させていた事。


島民のほとんどが惨殺されたその残虐性と強盗目的という利己的な理由、用意周到な計画性から世論も極刑を望む声が多かった。

そんな裁判である、弁護につきたいという弁護士も存在せず困り果てていたところ、

一人の弁護士が犯人の弁護に名乗りを上げた。


彼は弁護の世界に新しい風を吹き入れるという触れ込みで売り出し中の若手弁護士。

彼の弁護は独創的で、法律の解釈や事件の内容など目をつけるところが全てにおいて異端であった。


「僕に任せていただければ大丈夫ですよ」


裁判を前に、被告人に自信満々で宣言する若手弁護士。

そして裁判の日、起訴状が朗読され冒頭陳述が開始されると意気揚々と弁護士はこう言い放った。


「僕は過去の事例で、今回の件と似たような容疑にも関わらず無罪になっている人物を知っています。だから彼も無罪にすべきです。」


騒然とする法廷……

その人物は日本人では誰でも知っているほどの有名な人物であり、そしてその事件とは、日本ではあまりにも有名な物語であった。


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英雄裁判 水無月暦 @yuo626

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