第5話 エデンの東

『エデンの東』(East of Eden)



もう一度見てみたいか、もう見なくてもいいか。


もう一度見てみたいと思う映画。

そして「見た?」と聞いてみたい映画。


それが「名作」として時代を超えて語り継がれる映画の基本条件と言えるだろう。


ジェームズ・ディーン

24歳という若さで去って行った孤独なスター。


あの上目遣いの傷ついたまなざし。


無賃乗車で列車の屋根の上にうずくまる雨宿りする野良猫のようなその孤独な姿に観客は瞬く間に心を奪われてしまうであろう。

そして小学生の私がそうであったように、キャルとともにこの20世紀初頭のアメリカ合衆国カリフォルニア州のサリナスに降り立つであろう。


なにかにつけ聖書からの引用を聞かせる父親に対する苛立ち。

キャルが欲しいのはあるがままの自分を受け入れてくれる暖かい愛情であって、

押しつけがましい正義ではない。

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ジェームズ・ディーンの魅力を言葉で表現できる?


小学校の頃の私は「エデンの東」という題名を聞いて聖書と関係があるらしいと感じながらも聖書そのものを知りたいとは思わなかった。

ジェームズ・ディーン演じるキャルがその物語の中の「カインとアベル」のカインの方らしい、と。


わからないなりにジェームズ・ディーンが演じた青春像は彼がのちに主演する「理由なき反抗」の主人公へと繋がっていき、若者たちの大きな支持を集めた。

現実社会の自分と重ね合わせて、幼いながらいや若いからこその荒削りの感性そのもので、映画全体を貫く大きく重いテーマを受け止め理解した、といえるだろう。


私自身はジェームズ・ディーンのあまりのカッコよさに当時の映画雑誌「スクリーン」などで写真やプロフィールなどを追いかけた。


ジュリー・ハリス(アブラ役)との観覧車での甘くはかなくせつないキスシーン。

このシーンだけがこの映画の名シーンだというわけではないのだが、あまりの見事な二人の演技は永遠に脳裏に焼き付いている。


そんなふうに影響を受けたのは、ファーストシーンからラストにかけての見事な人間描写、ストーリー展開があるからこその名シーンであるのだから、これはもう、言葉で説明してもしきれない。


「どうぞ、自分の目で見てください」と言うしかない。


渥美清の「男はつらいよ」シリーズの沢田研二と田中裕子が全くの同じシーンを演じていた。この映画が初共演だったようで、そんなシーンを演じさせられて、本当の恋人同士になってしまったというわけなのだろう。

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旧約聖書の冒頭の書「創世記」


アダムとイブ そしてその息子のカインとアベルの物語


アダムとイブは罪を犯したのちに楽園の地であった「エデンの園」から追放され、子供を産んだ。

その長男カインは弟アベルを殺した。


人類最初の殺人である。

なぜ、人は人を殺すのか。

その後、


「カインはエデンの東方の”逃亡の地”に住みついた」とある。


楽園から追い出された人類全体が住んでいるこの世界こそが

「エデンの東」ということになる。


キャルは(ジェームズ・ディ―ン)はアダム(父)から愛されていない苦しみを背負って 生きて行かなければならないのか。

そこに救いはあるのか。


スタインベックが書いた原作をもとにした作品。

エリア・カザンによる独自の新しい家庭の愛憎劇。

I

もう一度見てみたい映画であるとともに、

もう一度じっくりと考えてみたいテーマ。


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