月刊ショートストーリー

ゆうしゃアシスタント

「私はコーヒーが苦手だ」

 私はコーヒーが苦手だ。


 特にブラックコーヒーは人が飲んでいい物ではないとさえ思う。あの独特の苦味や渋味はかつて拷問に使われたと言われても難なく信じてしまう程には嫌っている。

 そういえば私の兄はブラックコーヒーをよく飲んでいた。幼い頃の私は好奇心旺盛で学ぶと言う事を知らないバカだったが故に、兄に一口ねだってはその風味に悶絶していたものだ。

 兄はたまに砂糖をたっぷり入れたカフェオレを作ってくれた。牛乳で苦味を打ち消し、砂糖で飲みやすく仕上がったそれは私の子供舌にはぴったりで、あっという間に飲み干してしまえた。

 だが、もう兄が作るカフェオレを飲める事は無い。兄は3年前に交通事故で死んでしまったのだから。

 何故、神様が数多くいる人間の中から兄を気に入ってしまったのかはよくわからない。とかく人の命はすぐに潰えてしまえる程には脆い。そう3年前の私は思い知ったのである。

 そういえば。明日は兄の命日だ。そして今日も変わらず、ブラックコーヒーはクソ不味い。


2018/11

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