professional ~非人称的な他者~

先程、「自己従属主体化」による「管理社会の成立可能性」を主張するために、パノプティコンの例を取りあげたが、ここでもう一度よく考えてみてほしいことがある。

例えば、パノプティコンに収監されている囚人に対して、「お前たちはいつも監視されている(Your behavior are always monitored by us)」という張り紙が、室内に貼られていたとしよう。恐らく、彼らは震え上がるはずである。しかし、同時にこれは、看守が実際に展望台で監視していても、していなくとも、「監視」が成立する可能性を示唆している。何故ならば、囚人が実際に、看守の存在を「見ている」のではなく、「看守がいる」という事実を「知っている」だけであるからだ。したがって、看守という「他者」が存在している可能性を疑ってみることもできる。

そして、この「他者の存在」を疑い、「模範囚でいる」という行為を、自ら「放棄」することが、「自己従属主体化」を止めることであり、管理社会の成立条件を崩すことにつながるのである。

管理社会と、これまでの「封建社会(a feudal society)」の違いは、支配構造の可視性である。何故ならば、封建社会においては、「王が〇〇せよと民に命じる」という、支配の様式が、民衆自身が自覚できるのに対して、管理社会においては支配の様式があまりにも複雑(手続き主義)で、「〇〇が〇〇せよと我々に命じる」ことがあり、非人称的他者が、我々を従属させていることがあるからだ。その非人称的な他者における、行動の強制から、自らを解放することが、管理社会の暴走を止める手立てとして有効なのではないかと考える。

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