突撃! 隣のおじさん部屋

 三行くらいでわかる前回の神薙


 華凛かりんがお弁当を作ってきてくれたので、一緒に食べた。

 そよぎが夜ご飯を作ってくれた。


 ○


 うどんを食べた後、俺は夜に備えて、数時間の仮眠をとった。

 仮眠と言ったが、これが一日のメイン睡眠である。


「そろそろ行くか……」


 今の時刻は二十三時を少し過ぎたあたりだった。

 俺は自室から出る。


「お兄ちゃん、何かある」


 見れば――狭いリビングのテーブルの上に、包装紙に包まれたものが置かれていた。


「Whatイズ何これ? あの男の人からかな?」


「だろうな」


 橋から投身しようとしていた男に「お礼に伺う」と言われ、住所を聞かれていたのだ。

 でも、おじさんのものかもしれないから、一応確認しておく。


 おじさん部屋の扉の隙間から、光が漏れていた。まだ起きているようだ。

 ノックする。中から返事がしたので、扉を少し開ける。


「失礼します。これ、なんですか」


 扉の隙間から、縦にした菓子折りを少し覗かせる。

 俺の背後では、梵が部屋の中を覗こうとして、ぴょんぴょん跳ねていた。


「……菓子折りだ」


 んなの見ればわかる。

「どういうもので――、」じゃない。「誰からの誰宛のものですか?」


「鈴木からだ……。さっき来た……。凪宛だ。この前のお礼、だそうだ……」


「わかりました、ありがとうございます」


 扉を閉める。

 おじさんとは久し振りの会話だった。俺が深夜出かけていることは、物音などから把握しているだろうが、特に言及されることはなかった。


 ○


 今日も今日もて蠱物退治。

 俺達は、夜の加増を歩いていた。


「梵は初対面だよな?」


「繧上☆繧後↑縺?〒~」


 蠱物まじものがいたので倒す。蠱物、話にならないほど弱い。


「おじさん? 初対面じゃないよ。屋敷で暮らしていた頃、ウチに来て、君影と話してたのを見た」


「そうだったのか」


「お兄ちゃんは、まったくおじさんとは喋らないよね」


「ああ。おじさんは俺以上に喋らない人だからな」

 それに多分――おじさんは俺の事が嫌いなのだ。


「うーん、お兄ちゃんがおじさんと話してるの想像すると……なんか嫌かも」


「なんかって、なんでだよ」


「おじさんの見た目が、私の嫌いな人にそっくりだから」


「嫌いな人?」


榮一えいいち


「誰だ」


「この呼び方はしたくないけど――お父さん」


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