パラレルワールド

勝利だギューちゃん

第1話

夢を見た。

それが夢だと自分でも理解できる夢。


明晰無って、いうんだっけ?


夢の中で、僕は高校の校舎の前にいた。

母校の校舎の前だ。

日日は、昭和6×年9月となっている。


「高1の頃か?校舎内に俺がいるのか?」

僕は自分のいたクラスに向かって歩いていた。


誰も僕には気付かない。

見えないのか?

まあ、そのほうがいいのだが・・・


自分のいたクラスに辿り着いた。

僕は・・・いた・・・


1人で机に座っている。

孤独だったんだな。


ひとりの女子がいた。

確か、真奈美という名前だったな・・・

僕が好きだった女の子だ。

そう、だった・・・


後悔している。

その真奈美を好きになった事を・・・


僕は高校時代の自分に近づいた。

同じ自分なのか?

彼(というのも変だが)は、僕に気がついた。


「あなたは?」

「30年後のお前だよ」

「30年後の僕ですか?」

「ああ」

さすがに驚いている。


「その30年後の僕が、今の僕に何の用ですか?」

「今のお前は、真奈美という子に恋をしているな」

「うん」

「付き合いたいと思っているな」

「うん」

そこで、僕は本題に入った。


「やめておけ」

「えっ?」

「あの子は、とても浮気者だ。すぐに捨てられる。

傷つきたくないのなら、見ておくだけにしておけ」

「そうなの・・・ですか?」

「ああ。あの子は男だけでなく、女友達もころころ変えている。

自分の周りの人間は、物としてしか見ていない」

僕は、その真奈美という女に傷つけられた。

ひどい裏切りを受けた。


なので、その歴史を消したい。


「いいか?高校時代の僕。周りから告白をそそのかされることになる。

だが無視しろ。傷ついて一生結婚出来なくなってしまう」

「そうなの・・・ですか?」

「わかりました。見ておくだけにしておきます」

高校時代の僕は納得してくれた。


これで傷が減った。

少なくとも、トラウマは減っただろう。


「あのう、30年後の僕・・・」

「なんだ?高校時代の僕」

「30年後の僕はどうしいてる?」

僕は首を横に振る。


「未来は知らないほうがいい。ただ独身とだけは言っておく。

それと、好きなように生きろ」


僕はそれだけ言うと、後者の外へ出た。


「・・・起きて・・・」

グーグー

「あなた、起きて」

目が覚める。

見知った顔があった。


「真奈美・・・か?」

「また、夢を見ていたの?」

「うん」


高校時代に好きだった真奈美。

当時は何もなかったが、数年後、僕の家にやってきた。


そして、土下座して頼まれた。

「結婚してください」と・・・


何でも、付き合っていた男性全てが、自分の体目当てだったらしい。

自業自得だが、初めて自分自身の事を好きになってくれる男の人を知った。


それが僕だというのだ。


最初は断ったが、根負けしてしまった。

最初は後悔する事もあったが、今は幸せだ。


「あなた。そろそろ仕事しないと、締め切りに間に合わないわよ」

「わかったよ」

用意されていた食事をすませると、僕は机に向かった。


「そろそろ、アシスタントの方が来るころね」

「そうだな」

そういって、原稿にペンを走らせた。


「あなた」

「何?」

「ありがとう。私と結婚してくれて」

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パラレルワールド 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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