第45話パンチ


なんだかな~?釈然としない感じだな。

僕は人間サイズに戻っているバフォちゃんに両手を向けて走った。


「いやいや!き、汚いでしょ!?ぼ、坊ちゃん!ベェ~~!」


「あははは~♪待て~♪」


僕はドラマのワンシーンであるような、バカップルみたいな事をした。

だけど・・・。

全速力でバフォちゃんが遠ざかっている。

しかも走り方が汚い・・・。

しばらくすると見えなくなってしまった。


「おーーーーい!バフォちゃん!もうしないから戻っておいでーー!!」


僕がそう言うと、犬のようにバフォちゃんが帰ってくる。


「も、もう!プンスカ!プンスカ!ベェベェベェ~~!!」


ん?今の戻って来る時、ちょっと可愛かったな♪バフォちゃん。

犬を飼ってる人ってこんな気持ちなんだろうな・・。

犬飼おうかな・・、柴犬とか可愛いな。

でも令和の元号になって、怒る時プンスカって・・・古っ!


「でもほら!小用の事を聖水って言うでしょ?ゲームで聖水使うとモンスターのエンカウントがなくなったりするよね♪バフォちゃん!」


「ちっ、つまんねーんだよ!そんなキン●マ、シグルイの牛股権左衛門に去勢してもらよ!ベェ!だからもてないんだよ!」


「何の話だよ!読んだ人にしかわかんないよ!バフォちゃん!」


いつも思うけど・・・バフォちゃん絶対僕の事バカにしてるよね?

舐めやがって・・。

僕は前から言いたかった事をバフォちゃんに告げた。


「ねぇ?バフォちゃん!バフォちゃんの頭の中どうなってるの?一回ネフェルピトーに見てもらえば?!」


「あ!あ!あ!」


「それな!」(なんのこっちゃ!?)


ああ・・またバカな会話をしてしまった・・。

あんまりやり過ぎると、ゴンさんから首もげるぐらい顔面殴られそうだから・・。

今日はこれぐらいにしておこう。


「さて・・気を取り直して・・まずはMP回復しておこう」


僕は腰ベルトにぶら下がっているMP回復薬の底をタップした。

赤いエフェクトが僕の体を包み込み、MPが回復した。


「・・クールタイムが10秒か・・よし、これでまた魔法が使える!」


海辺をあくる僕の前にモンスターが現れれた。

なんかカニに似てるなフォルムが・・。

固い殻に覆われて見るからに強そうだな・・。

僕はモンスターの頭の上に目を移した、そこに名前が表示されている。


「今度は蝦蛄(しゃこ)か!やってやるぜ!」


僕は盾を構えて蝦蛄(しゃこ)に突撃した。

しかし・・・。


次の瞬間辺りが眩しく光り、構えた盾にもの凄い衝撃が走った。

僕は体事後ろに吹き飛ばされた。

数メートル空中を漂って、僕は地面に叩きつけられた。


「が、ガハッ!・・・な?・・・・・え?」



フラフラと起き上がり、蝦蛄(しゃこ)の方を見た。

するとそこには凛々しい蝦蛄(しゃこ)の立ち姿が。

さながらボクサーの様な佇まいだった。


「殴られたの?え、全然見えなかった!強すぎじゃない?」


突然の出来事で、自分の身に起こった事を理解するのに時間がかかった。

左手に持った縦からは攻撃の摩擦熱で湯気が立ち上り、蝦蛄(しゃこ)の手の痕まで残っている。

HPも半分ほど減っている・・一撃で?うそ・・。


「プッシュっと!HP回復して・・・どうしよう・・蝦蛄(しゃこ)強すぎなんだけど!ま、近づいてこないみたいだけど・・どうすっかな・・・」


僕は盾を構えたまま、攻撃のプランを練った。

プランっていっても、新しい事を試すだけなんだけどね・・。

僕は蝦蛄に向けて魔法を唱えた。


「ベリリウム(Be)!!」


カウンター型の戦闘スタイルなのだろう。

僕の放った魔法が蝦蛄の体に命中した。


「よしっ!」


次の瞬間蝦蛄の体が紫色に変化して、その場で悶え苦しみだした。

動きの鈍くなった蝦蛄のスキを付いて、僕はメニュー画面から魔法の効果を調べてみた。


「えっと・・・・約10%の確率でモンスターを毒にするか!ラッキー!」


「坊ちゃん持ってますね!ベェ!蝦蛄は甲殻類最強と言われるトゲエビ亜綱(あこう)類です。似てるけど、エビじゃありません!身体は固い殻に覆われていて・・・でも最大の特徴はそのパンチ力ですよ!坊ちゃん!

パンチが早すぎて見えなくて、しかも光るんですよ!?凄いでしょう!まるで、ペガサス流●拳みたいですね!」


いやいや、だから・・やめろって!漫画ネタ!

怒ったファンから1秒間に何回も殴られるだろ?

聖闘士聖●も好きだけど、やっぱリングにか●ろ!1が好きだな。

ってなんの話だよ!まだ、モンスター倒してないのに・・・。


「よっし!じゃあ!ベリリウム(Be)!!」


近くに転がっているオブジェクトの岩目掛け、僕は魔法を唱えた。

10%で毒になるけど、剣の攻撃力UPが自分に使った時の効果だったから・・。

きっとオブジェクトとかが固くなりそう・・・それをもって蝦蛄に近づいて・・斬る!

あの見えないパンチは驚異的だからな・・それが安全だと思う。

しかし・・・。


魔法はオブジェクトに向かわずに、僕の左手の盾に吸収された。

そして盾が光り輝いている。

そしてそして、僕は毒にかかった。


「ってなんで!いちいち毒になるんだよ!しかも10%の確率だろ!」


「坊ちゃん!持ってますね!ベェ!」


「う、うるさいよ!クソッ!リチウム(Li)!!」


すぐに毒を治し、僕は盾を構えて蝦蛄に突っ込んだ!

苦しんでいる蝦蛄は、その場でフラフラしている。

そして僕の見える速度で、パンチを放ってきた。

魔法効果の付与された盾で僕はそのパンチを防いだ。


「グッハ!弱ってて、このパンチ力かよ!食らえ!」


僕は右手の剣を蝦蛄の体に目掛け振り抜いた。

しかし僕の放った攻撃は、蝦蛄が身に纏っている、鎧の様な殻に弾かれた。

戸惑いながらも、すぐに僕はズボンのぶら下がっているMP回復薬に手を伸ばした。

そして、そこ部分をプッシュ、これでまた魔法が使える!


「ベリリウム(Be)!!」


今度は自分の剣に向けて魔法を唱えた。

剣は魔法を帯びて輝いている。


「よかった、今度は毒にならなかったぞ!・・・この剣なら!!」


ベリリウム(Be)の魔法を体に受けて、毒になった蝦蛄に近づく。

そして魔法付与された剣で突き攻撃を放った。

先ほどまでの硬さが嘘のように、剣は蝦蛄の体を貫いた。

蝦蛄はぴくぴくと体を痙攣させた後、その場で霧散した。


「・・・ふぅ・・・強かったな・・・」


放出された感情玉が、剣の宝石に吸収された。

僕は頭に浮かんが疑問をバフォちゃんに告げた。


「・・・でもさ?毒になったまま放置したら・・簡単にたおせたんじゃ?ね?バフォちゃん?」


「はい!倒せますよ!でも坊ちゃんが馬鹿みたいに必死で戦うのを見るのが私の真の目的ですから!ベェ!ベェ!なんちゃって!ベ~!」


「バフォちゃん!二回でいいからアルデバランさせて?そしたら角無くなるでしょ!あははは~♪待て~♪」


僕たちのバカみたいな冒険はまだまだ続く。

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