第42話生グッバイ


「おい!」


「ああ!とうとうこの日が来たな!握手券だってよ!ファンやって来て良かったよ!絶対手洗わない!オレ!いや!もう・・手使わないこの先、一生!!!俺の決意は筋金入りだぜ!あ、・・・でも、でも右手で夜の素振りするからな・・左手を使って・・・いや、足でバット持って・・」



先ほど尻ガールのリーダー茜が言った、握手券の話でファンたちは色めき立っている。

ってか、いつの間にCDなんてリリースしてたんだよ!

ファンもよく何でもかんでも、買うよな凄いと思う。

あんな、ゴミみたいな曲よく12曲も考えたもんだ。きっとプロデューサーは尻狂い野郎だろうな。


「みんな!アルバムのメイン曲『蒙古斑(もうこはん)』どうだった?」


「最高~~でーす!!」


ああ、なんか見てて熱気が凄い。

僕は半笑いで、いつもの茶番劇を見守った。

リーダーの茜がマイクで、握手会の説明をしていく。


「みんな~♪今回は握手券が付いてきます♪お・ま・た・せ♪アルバムが1枚3240円でーす!100枚購入してくれた、私達にとって大切なかねづr・・じゃなかったファンに!私達尻ガールの『親戚と握手券』プレゼント~♪もう、ほとんど私達と言ってもいいわね♪そして、そして1000枚買ってくれた、頼りになる経営資源・・じゃなかった、ファンの方には私達尻ガールの『近くに住む人達との握手券』

もう、ホント近いすぐそこ、目の前・・ご近所さん。ほとんど私達と言ってもいいぐらいの距離よ!うふ♪そして、そして、そして!1万枚買ってくれた、こっちが引くぐらい、頭のぶっ飛んだかねづr・・ファンの皆には私達尻ガールの『そっくりさん』との握手券がついてきま~す♪宇多●ヒカルだったら、ミラクルひかるみたいなもんよ!もう、ほとんど私達といっても過言じゃないわね♪」


「ふぁ!?ふぁ?ふぁ?!え・・・マジで?いいの・・・・そんなもうほとんど、尻ガールとの握手券と言ってもいいぐらい・・・。これは全力案件だぜっ!!!絶対1万枚買ってやる!!!!」


え?全部他人だから!え?馬鹿なの?

ちゃんと聞いてた?耳が・・・え?マイクタイソンに耳、食いちぎられたの?そんで仲直りしたの?

大事な経営資源って言ってたよ?君たちの事?

え・・・ホント、こっちが引くぐらい夢中なのかよ!

なら止めねーよ!その茨(いばら)の道を突き進めよ!


「こ、こ、これはすごい~!!尻ガールのメンバー・・ごにょごにょ・・と直に握手できるチャンスで~す♪」


ほらほら!サングラスの男もごにょごにょ言って誤魔化(ごまか)したぞ!

ファンの皆いい加減・・・気づけよ!サングラスの男も若干、ファンが可哀(かわ)いそうで、ちょっと泣いてるぞ!


「・・グスッ!・・あ、あの握手会の時・・・尻ガールのメンバーは何処に?」


目から涙を流して、サングラスの男が尻ガールのメンバー1人1人に尋ねていく。


「え?近くのマジックミラーからファンが、私の親戚とファンが握手する様子を見てます!楽しそう~♪」(茜)


「家族旅行に行ってきます!」(海)


「新しいメガネを買った後、婚活パーティーに呼ばれてて・・・」(紅葉)



「森に籠って眠りながら、札束を数える練習・・睡眠学習・・ああ、眠たい・・」(四つ葉)



「はい♪私が最近使ってる新しい彼氏とお泊りデートです♪にゃん、にゃん♪にゃ、にゃん♪」(喜美)


サングラスの男は泣きながら大声を上げている。

大声のおかげで、尻ガールの言葉はファンたちに聞こえていなかったようだ。

涙を流したので、喉が渇いたサングラスの男が2Lの水を飲んでいる。



「・・ゲプッ!おおっと、これは凄い状況だ~!聞いていた私も、開いた口、いや開いたケツの穴が塞がりません~!」


「いや、最初ので合ってるから!いちいち言いなおさなくていいんだよ!早くのその穴塞げよ!黒いウニョラが下から、ブリブリじゃねーか!飲みすぎなんだよ!どの口が言ってんだよ!どっちの口も閉じとけよ!なに、公衆の面前で言ってんだよ!早く公衆便所に行って来いよ!・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、・・・疲れた・・・こっちが開いた口がふさがらないよ・・はぁ、喉乾いたな・・」(僕はバッチリ聞超えてたけど・・スゲーな尻ガール)


突っ込み所があり過ぎて・・いや突っ込む所しかないんですけど・・。

盲目的なファンに僕は圧倒された。

でも、僕も可憐さんが好きすぎて突撃してたな・・昔。

そのたびに、みぞおちを的確に打ちぬかれたっけ・・・懐かしいな・・。最近はご無沙汰(ぶさた)だけど。


「えっと、気を取り直しまして・・・今回の握手券はお得なパックがご用意されています!枚数を多く買われますと、不要なアルバムが出てきますよね♪実際は1枚しか聞かないはずです!ですから、今回は1枚+握手券という大変便利なパックをご用意!

これで余ったアルバムをフリスビーにしたり、窓から吊るしたり、友達に配ったり、深夜森に穴を掘って埋める事も、格安ショップに封を開けずに売却して白い目で、店員さんに見られる事もなくなりまーす!大変お買い得ですね♪荷物にもならずに、便利ですね♪」



「ふぁ?ま、マジ?!これで不法投棄しなくて済むぜ!!尻ガールの運営はやっぱ違うな!ファンの気持ちをわかってるぜ!

これでCDアルバム+握手券付き1枚(1万枚・握手券)がたったの32400000+税!!安すぎだろ!!早く消費者金融機関をはしごして金集めてこなきゃ!!おい!押すなって!いや押せって!どっちだよ!」


え?たったアルバム一枚に32,400,000円+税だすの?

え?新手のボッタくりがいま、まさに誕生したんですけど・・・。

原価率スゲーな!もうけ過ぎだろ!考えた奴天才だろ!

そして買う奴バカだろ!あ・・ああ・ファンが購入ブースに並んでいってる。

ああ、強面の男達が書類を出して・・ファンがハンコを押して・・・はい、逃げられません!

恋の片道切符の完成!!!後は沼が待っている・・生グッバイ!


「さぁ、バフォちゃん!冒険に行こう!悲しい男のサガを見れて、僕良かったよ!僕は自分の為に頑張るとするよ!」


「そうですね、行きましょうか!そろそろ!また、ヘンテコリンなイベントがあってたら見ていきましょうね!ベェ!」


尻ガールのイベント会場を後にして、僕たちはフィールドの外を目指して歩き出した。

それにしても、男って・・・悲しいな・・。


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