『十八史略』で読む魏晋南北朝

海水

第1章 三国〔漢〕

プロローグ 蜀漢こそ正統

 漢文大系本、第3巻、62ページ。

 この一段は『十八史略』の本文ではない。


 三国〔漢〕

 附 魏・呉二僭国


 按、曾氏云、「天下非一統者、本可各自一国編集。又恐初学読者迷其時代之先後、今但以一国源流相接者為提頭、而附同時之国於其間。」而曾氏仍陳寿之旧、以魏称帝、而附漢・呉。剡既遵朱子綱目義例、而改正少微通鑑矣。今復正此書、以漢接統云。


 あんずるに、そうふ、「天下、一統にあらざる者は、と各自一国に編集すべし。た初学の読者、の時代のせんに迷ふを恐れ、今、だ一国の源流相ひ接する者を以て提頭として、同時の国をあひだす」と。しかしてそう氏、ちん寿じゆの旧にり、を以てていと称して、漢・呉をす。えん、既に朱子の『かうもく』の義例にしたがひて、『せうがん』を改正す。今、の書を正し、漢を以て統をぐとふ。


 おもうに、この『十八史略』の著者、そうせんは、「天下が統一されずにいくつかの国に分かれているときは、本来、それぞれの国の歴史を別々に編集するべきである。しかし、歴史を学びはじめたばかりの読者がそれぞれのできごとが起こった時代の前後関係で混乱することを心配し、本書では、特定のひとつの国の歴史でみなもとからの流れがつながっているものをまず始めに挙げて、同時代のほかの国の歴史をその間に割り付ける」と言っている。そして、かれは、正史である陳寿の『三国志』が用いた昔ながらの体例により、の君主には「帝」の称号をつけて呼び、その記事の後ろに漢(しょく)ととを割り付けたのだ。わたくしりゅうえんは、さきに朱子の『がん綱目』の大義名分の体例に従って、少微の『がん節要』を改正した(少微はそうこうの号)。今またこの書物を正し、漢(蜀)を正統な後継とする。(この劉剡の改編により、現行の『十八史略』は蜀漢の歴史の間に魏・呉の歴史が割り付けられる形となっている。)

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