6-5 巨乳とちっぱい

 一旦ログハウスを収納し、万が一雨が降っても浸水しない場所に移動する。


「結界に弾かれないように個人認証登録をしましたので、これで皆さんは入れるようになりました。ここも土足厳禁なので、この玄関で靴を脱いでもらいます。そこの個別になってる靴入れに入れると、自動で【クリーン】の魔法が発動し、除菌・消臭をしてくれます。とりあえず部屋に案内しますね。部屋は俺の専用部屋とフェイの専用部屋、個室が6つ、8人部屋が2部屋あります、好きな部屋に行って、自分でベッドにシーツを敷いてください」


 入った瞬間、皆、驚いている。

 建物の大きさと中の空間の広さが一致しないのだ。以前のログハウスでもびっくりしていたが、今回のログハウスはもはや高級宿屋以上の快適空間が完成されている。全ての空間が空調によって26度に設定され管理されているのだ。


 一階は20人ぐらいがくつろげるリビングがある。すぐ横には三口ある魔道コンロを設置しているシステムキッチンが併設していて、調理後すぐにリビングで食せるようになっている。カウンターキッチンというやつだ。


 浴室はシャワー付きの洗い場が3つに、10人が余裕で入れる大きな浴槽がある。

 前のログハウスには無かった、新設されたサウナ室と脱衣場にあるマッサージ台。これで風呂上りにフェイにマッサージしてもらえる。俯けになっても鼻が邪魔にならないように顔の部分が穴が開いている専用台だ。


 マッサージ台は頼んでなかったのだが、ナビーが気を利かせて造ってくれたようだ。


 それと立ち入り禁止にして結界を張っているが、錬成部屋と鍛冶部屋も新設されている。

 俺が直接色々と造れるように、ナビーがこれも勝手に増設したものだ。これで回復剤や武器も自分で作れるようになる。



「どうします? どの部屋にしますか?」

「大部屋で寝る事にするわ。皆もそれでいいでしょ? フェイちゃんも一緒にどう?」


 フェイはどうしようという風に俺の方を見た。


「マチルダさんがいいって言ってくれてるんだから、フェイの好きにしていいんだぞ」


「8人部屋なんだから、フェイもおいでよ。折角一緒に泊まれるんだから夜に女子会しましょ!」


 ソシアさんのお誘いで、フェイは行く気満々になったようだ。折角なんだ、楽しまなきゃな。


「マチルダさん、ちょっと……」


 俺はマチルダさんを呼び出し、フェイのことをお願いした。


「フェイのことお願いしますね」

「ええ、大丈夫よ。皆も喜んでるようだし歓迎するわよ」


「それで、フェイにはちょっと問題がありまして。子供の頃のトラウマで夜間暗いのがダメなんです。だからなるだけ明かりは消さないように、フェイの枕元の照明だけでも点けておいてあげてください。それと長時間1人にされると情緒不安定になってしまいますので、誰か1人は居るようにお願いします。2、3時間は平気なので、そうトラブルになる事はないのですが。子供の頃のトラウマは早々治らないようですので、すみませんが他のメンバーにもそれとなく伝えておいてください」


 フェイは一応神竜なので、俺がしゃべったのもどうせすぐばれるけど怒ったりはしないだろう。

 何かあってからじゃ遅い……フェイが傷付く前に対処しておいた方がいいからな。

 迷いの森の暗い神殿で、6千年1人でいた影響なのだろう……フェイは暗い場所や、1人になる事を異常に怖がってしまう。


「そうなんだ、だからいつも個別じゃなく一緒の部屋で寝てるのね。了解したわ。プライベートなことを事前に教えてくれてありがとう」


 お風呂のお湯の溜まりも早い。ナビーがカメの魔石に交換したとか言ってたけど、カメの魔石凄いじゃないか。

 あの大きさの湯船を10分ほどで満水にした。オークとえらい違いだ。

 水の魔石は結構増えたけど、そろそろ火属性の良い魔石が無くなってきた。どこかでB級魔獣クラスの火属性の魔石持ちいないかな。


「皆さんお風呂の準備ができました。皆一緒に入れますので行ってきてください」

「新築の一番風呂は兄様が入るべきだと思います」


「そうね、リョウマ君が先に入ってくれる。私たちはその後で皆で入らせてもらうわ」

「分かりました。じゃあ先に行かせてもらいますね」


 風呂に入ろうとしたのだが、サウナの使い方を皆に説明した方がいいなと思い、インベントリからタオルを出そうとしたのだが―――


『……マスター、そこに備え付けてあるバスタオルをお使いください』

『なんだ、脱衣所にもうセットしてくれているのか、ってこれオイ! 本物のバスタオルじゃないか! ナビー! ついに織り機が完成したのか?』


 そこに置いてあったものは、完璧な日本の国産であろう、綿100%のふわふわに仕上がったバスタオルだった。この世界の布とは明らかに吸水性が桁違いに違うのだ。


『……ふふふ、頑張りました!』

『ナビー、今日はどこまで俺を喜ばせてくれるんだ! いい仕事してるぞ!』


『………………ありがとうございます。褒めてもらえてとても嬉しいです』

『お前、泣いてるのか?』


『……実体がないので分かりません。嬉し泣きという感情が、今のこの感覚なのでしょうか?』

『多分そうなんだろう。褒められて嬉しかったんだな。フェイも褒めると喜ぶだろ? それと一緒だな』


 ナビーの奴、嬉し泣きか……ユグちゃんのこともあるし、もうこのままほっとけないな。


 ナビー製バスタオルを腰に巻いて、皆が集まっているリビングに行った。


「ちょっといいですか? サウナの説明をしたいのでちょっとついて来てください」


 ソシアさん、パエルさんを中心に、顔を真っ赤にして腰巻一枚の裸の俺を凝視していたが、気にしたら負けだ。


「この設備は熱で汗をかいて、体の血行や疲労回復、あと塩を使ったら美肌効果もあります。毛穴が広がるので老廃物も出やすくなりますので皆さんも後で使ってみてください。好き嫌いがあるので、熱が苦手だったり、気分が悪くなるようならすぐ止めてくださいね。それと汗を凄くかくので水分は沢山採るようにしてください。後は無駄に長く入るのは危険ですので、我慢比べみたいな事はしないように。この砂時計が5分計になってますので大体これを目安にすると良いです。あと大事なのは、アクセサリー類はすべて外すこと。忘れると熱で火傷しますので必ず外してから入ってください」


 俺は中に入って、木の器に塩を入れて体に塗りたくった。

 外から勿体無いという声が上がったが、そんなのはどうでもいい。一度使ったら分かるが、肌がつるつるすべすべになったら君たちもリピーターになるのは目に見えているんだ……黙って見てなさい。


「こんな感じで、この木皿の塩を全身に塗りたくってください。汗がその分大量に出ますし、美肌効果が凄いです。すべすべつるつるになります。これももし肌に痛みや刺激のような異常があったならすぐ止めて、お風呂場にすぐ行って洗い流してください」


 3分程で大量の汗が噴き出してきた……二重になったガラス窓の外から見てたソシアさんが驚いている。


「リョウマ、大丈夫なの? 凄い汗が出ているけど平気?」

「ええ、この中はかなり暑いですけど、ここを出た後が気持ちいいので少し我慢です。夜もぐっすり眠れますしね。フェイ、風呂上りの後マッサージ頼むな」


「はい、良いですよ。頼まれました。兄様、本当に気持ちいいのですか?」

「この中に居る間は暑いだけだぞ。出た後が良いんだよ。お! 5分経ったので1回目終了! これを俺は2、3回繰り返すんだ。今日は久しぶりだから2回にしておこうかな」


 扉の開閉時間はできるだけ短くさっと出る。


「サウナからの出入りは素早く行ってください。開けっ放しだと室温が一気に下がって効果がなくなりますので注意してください。席は8人分ありますので、これも皆で入れますね。大体こんな感じです。お風呂の方は前のタイプと一緒ですので分かりますよね? 説明は以上ですので、リビングでくつろいで待っていてください」


「リョウマ君、説明ありがとう。なんか楽しみ……お塩は勿体無い気もするけど試してみるね」


 皆がリビングへ引き上げる中、我慢ができなくなったのか、フェイが服を脱いで入ってきた。


「コラ! 何入ってきてるんだよ!」


「サウナ、フェイも早く入りたいです! 兄様と一緒に入ります!」

「ん! 私も入る!」


 フェイが素っ裸で俺の後を追って入ったのを見て、サリエさんまで裸になって入ってきた。

 うわー、サリエさんご自慢の魅惑のちっぱいから目が離せない!

 色白のこのちみっこは、恥ずかしげもなく入ってきてしまった。


「サリエ! あんた何やってんの!」

「ん! 問題ない! ふふふ、見てる見てる! 魅惑のちっぱいで、リョウマもイチコロ!」


「ソシア! あんたまでなに脱ごうとしてるの!」

「まぁ、初めてをあげてもいいかなって思った人だし、私1人だと恥ずかし過ぎて無理だけど、サリエさんと一緒だったら別にいいかなって。思春期まっさかりのリョウマなら見せてあげるだけでも喜ぶかなって思って……こんなことぐらいでしか、今は恩を返してあげられそうにないしね」


「ソシアさんはダメです! その87cmはありそうなおっぱいはダメです! 目が離せません! それはもう兵器の類です! チャームの付与が掛かった神器です!」


「兄様、何言ってるんですか! 意味が分かりません!」


「ん! リョウマ、凄く私に失礼! ソシアのそれはズルい! もいでやる!」

「イタイイタイ! サリエさん本気で引っ張らないでください! もげませんからこれ!」


 マチルダさんが2人を止めようとしてたけど、サリエさんの一言で断念してしまった。


「ん、ソシアも私も子供じゃない! マチルダ大きなお世話!」

「それもそうね……ごめんサリエ、謝るわ」


「ん、問題ない。リョウマたちと楽しんでくる!」


 結局、俺・フェイ・サリエさん・ソシアさんの4人で入ってしまった。

 サウナにも一緒に入って、皆で塩の擦りっこまでした……それはもう、とてもとても幸せな時間だった。

 終始テントを張っていたのを、見て見ぬふりをしてくれてたのは有難かった。


 入浴後はマッサージタイムだ。

 フェイに丹念に揉み解してもらってもう色々昇天しそうだ。

 今日1日ちょこちょこ動き回っていたサリエさんもかなり疲労がたまっていたので、フェイに揉み解してもらおうと思ったら俺を指名してきた。

 もう裸は見ちゃっているのでいいのかと思い、俺がお礼の意味も込めてちょっと本気でマッサージをしたら、サリエさんは女の子がしてはいけない顔をしていた。


「ん、ヤバかった! もうちょっとで全部でちゃうとこだった!」


 もう何が出るのかは突っ込まない。横ではソシアさんが騒いでる。


「ズルい! 私もしてよ! なんでサリエさんだけなのよ!」

「ダメージ0のパーティーで、水系ヒーラーのソシアさんは、湿地帯でなにか疲れるようなことしましたか?」


「うっ……氷魔法で動きを鈍らせたわ」

「え? 声が小さくてよく聞こえなかったのですが?」


「うるさいわね! ええ、全然活躍してませんよ! ヒール回数0回です! 氷魔法も水系魔獣には耐性が高くて足止め程度にしかなってなかったですよ! 何か文句あるの!」


「そんな怒って逆切れしなくても……もう、やってあげますよ。フェイは後でサーシャさんとパエルさんを見てあげてくれ。遠慮してもパエルさんの肩周りだけはほぐしてやってくれ。恐らくワニの尻尾の衝撃を食らった時、軽い炎症を起こしてるはずだ。ダメージはシールドでなかったが、受けた衝撃は多少残るからね」


「ハイ兄様、パエルさんは強制的にもみもみします」


 指をわきわきしながら微笑んだ……フェイの奴、本気でやる気だ。

 パエルさん大丈夫かな? フェイの本気はかなりヤバいんだよな……気持ち良すぎて気絶しそうになったぐらいだ。


「リョウマ……これヤバい! もうリョウマが居ないと生きていけないかもしれない」



 俺は皆が入浴中に夕飯の準備をしたのだが、結局コリンさんとマチルダさんもマッサージを希望してきたので食べ始めが6時頃になってしまった。


 ちなみに全員体にどこも異常はなかった。

 心配っしていたパエルさんの肩周りも、フェイが念のために入れておいた回復魔法のおかげで、異常は一切なかった。




 さて、本日の夕飯だが―――


「今日の夕飯は、すっぽん鍋です!」

「すっぽん? うなどんっていうやつじゃないの?」


「カメです。あと心臓とレバーは刺身にしました。レバ刺しです」


 鰻丼も食べたかったが、サウナに入っている間に気が変わった。

 皆で食べるなら鍋が良い!


 そうなのだ……今日狩ったカメの鍋だ。

 ガラさんトコで昆布を手に入れているので出汁も十分とれている。フェイが採ったキノコに、白菜、人参、白ネギとカメ肉を加えてひと煮立ちさせたら完成だ。


 レバ刺しは、ごま油に塩を加え、醤油を数滴落としたシンプルなものだ……だが旨い!


 今日は気分もいいし、冷えたエールを出してあげた。マチルダさんの音頭で晩餐の開始だ!


「リョウマ君の好意で、安全かつ快適な遠征ができています。ここがタリス湿原の中域というのを忘れちゃいそうな気分だけど、折角なのでご好意に甘えて楽しんじゃいましょう! 今日の収穫に乾杯!」


「「「かんぱーい!」」」


「ぷはぁー! 美味しい! 冷えたエールに、美味しいお鍋! すんごい盾まで貰って、私の人生でもベスト3に入るほどいい気分だわ! このレバ刺しっていう料理、エールに合うわね! 美味しいわ!」


「パエルがそこまではしゃぐのも珍しいわね。でもあの盾を貰っちゃったら仕方ないか」


「どこで手に入れたとか聞かれた時にごまかすの、皆で決めとかないとね。やっぱり【亜空間倉庫】からの瞬間装備の練習しないとだね。出すのが戦闘時だけなら人に見られる機会もずっと減るしね」


「いいなー、パエルさんの盾。私もアタタタタ! あっ! 忘れてたレベルアップ! あうっ!」

「兄様、私もです」

「私もだ……痛い!」


「どうやら、カメ組はソシアとコリンさんとフェイの3人のようですね。残るはワニ組ですね。ワニは1時間程後かな」


「折角の美味しいお鍋が! 痛くて味わえない……グスン……」


「フェイを見習ったらどうです。平気な顔して食ってるじゃないですか。ソシアは根性なしだね」


「ぐぬぬ……フェイちゃんやるわね! 私も気合で食べてやる!」

「私、ちょっと無理なんですけど……フェイちゃん凄いね!」


「もう! 兄様、意地悪しないで魔法掛けてあげてください! コリンさん涙目じゃないですか!」


「あはは、【痛覚半減】レベル3発動。これでどうです? 我慢できるぐらいじゃないですか?」


「あ! 全然平気! ちょっとした筋肉痛ぐらいになった!」

「リョウマ、私にも掛けて!」


「えっ? さっき気合で食べるって言ってたじゃないですか?」

「ぷっ! リョウマ君、フェイちゃんの言う通り、なかなかの苛めっ子気質ですね」


「【痛覚半減】レベル3発動。ソシア、これで我慢できる?」


「うん。これだったら平気。良かった……これで、ご飯が食べられる! 凄いスキル山ほど持ってるのね」


「痛覚を抑えることができたら対人でも隙がかなりなくなるよね。レベル3ってことはもっと減らせるのでしょう? 魔術師が痛みで詠唱がよく止まるのも防げるよね」


「痛覚が無いのはもろ刃の剣ですからね、デメリットも大きいです。あえてレベル3までしか習得してないですね。でも明日は【痛覚無効】を使う羽目になりますよ。フェイと暴れますから」


「痛みを完全に無くせるのか……それってやっぱり怖いね」

「一応触覚は残してあるので、行動に影響はないですけどね。安全な場所でしか使わない事にしています。味覚には影響ないので、気にしないでじゃんじゃんいきましょう! お酒は明日に支障がない程度にね」


「そうですね! こんな美味しい物を前に楽しまなきゃ損です! でも、カメがこんなに美味しいとはびっくりです」


「ん、以前野良できた時は狩らなかったから、食べるの初めて! カメ美味しい!」

「どうして狩らなかったんです?」 


「ん、狩るのに時間がかかるし、狩ってもその場で解体しないと大き過ぎて持って帰れない」


「そうよ! 普通はリョウマみたいにおかしいほど入る【亜空間倉庫】なんて持ってないんだからね」


「ん、カメの甲羅は高く売れるけど。狩るのも解体するのも堅くて凄く時間がかかるから、居ても敬遠される」 


 それからワニ組のレベルアップ痛もやり過ごし、2時間程皆で美味しく騒いでお開きにした。


「じゃあ、明日は7時頃リビングに集合でいいですか?」



 さてと、明日は牛さん探しの延長戦だ! 


 と……その前に……今晩はフェイもいないし、俺の猛り狂ってしまったリビドーを抑えねば。


 ソシアとサリエさん、脳内メモリーにしっかり記憶してあるからね! ムフフ―――

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