6-3 バーベキューコンロ
さぁ、バーベキューだ!
今日は網焼きではなく串焼きにする。その為に前から造ってあったものがある。
バーベキュー用の魔道コンロと専用の串と網だ。
まず魔道コンロ。縦35cm×横2mの横長のバーベキュー専用の物を作った。網を乗せれば焼肉なんかも出来るし、網を外し専用串を使えば端から端までの2mをゆっくり転がせばちょうどいいぐらいに焼けるように計算してある。炭を入れて炭焼きもできるが、中には溶岩プレートが敷いてあり火属性の魔石を組み込んでいるので火力調節も可能だ。風属性の魔石も使い煙対策も当然してある。俺とナビーの共同設計の最高傑作だ。
網と串は贅沢にも10%ミスリルを混ぜて錆び止めと、熱伝導率を高めている。網もこれでテフロン加工をしたように焦げ付かなくなるのだ。串には木製の握りが取り付けてある。そのままかぶりつくのには少し長めだが、コロコロ転がすために前後に余白部分がどうしてもいるから仕方なかったのだ。
「皆さんコンロの準備ができました。今から串を1人5本ずつ配りますので各自自分で好きな食材を刺して持ってきてください。焼けるのに6分程かかりますので、まず1本刺したら持って来てください。それを焼いている間に次の分を刺すようにすれば効率が良いですよ。それから、配る串には持ち手に色が付いてますので、自分の色を覚えておいてくださいね。焼けたら色で呼びますので取りに来てください。それと食材を刺すのは、赤いラインが入っている内にしてください前後は転がすために必要な余白部分になりますので」
「「「はーい」」」
「テーブルの上のトレーに食材が乗っています。右からオーク・野兎・ワニ・カエルの順です。オークと野兎は塩コショウ用の生肉とタレ焼き用に漬け込んだものに分けてありますので好きな方を刺してもらえればいいです。肉ばかりでもいいですが、野菜もフェイが採ってきたきのこ・玉葱・人参・茄子・かぼちゃを用意してますので食べてくださいね」
一番最初に持ってきたのはフェイだった。だがしかし、やはりアホの子だった。
「皆さんアホの子居ました……全く人の話を聞いてなかったようです。刺す食材は赤い線の入ってる内側までですよ。でないと焼けません。あ、サーシャさんのはいい感じですね。理由は見てのとおりです、転がすのでその為の余白が要ります。アホの子フェイはやり直してこい」
「むぅー、アホの子ってわざわざ言わなくてもいいじゃないですか、ちょっとお肉に見惚れてて聞いてなかっただけです。兄様のいじわる!」
サリエさんも上まで目一杯肉を刺していた物を持ってそそくさテーブルに戻っていった。アホの子はもう1人居たのだった。どうやら同じく肉に気がいってて殆んど聞いていなかったようだ。どんだけ腹が減ってるんだよこの2人は。
皆の表情を見る限りでは大好評のようだな。
俺も食べてみるか……うん、旨い!
カエルだが、よく鳥のささみのような感じと言われているが、異世界のカエルは一味違うようだ。鳥のもも肉程の脂分があり、甘みと旨味があってとても美味しい。それ以上にワニが旨い。皮はむちゃくちゃ硬いのに身は鶏肉と魚の相の子のような柔らかな触感をしており、旨味が凝縮されている。食べた事はないがおそらく地球のワニ肉とは全く別物の味と触感だろう。から揚げにしたらめちゃくちゃ旨そうだ。
「兄様、ワニのタレ焼きというのが美味しいです!」
「ん! 塩コショウで焼いただけのも美味しい!」
「串から外して、その浸けダレで食べても美味しいですよ。焼き肉用に作った醤油ダレです」
「兄様、ミックスジュースが飲みたいです」
フェイが上目使いで可愛くおねだりしてきた。どうやら氷水では満足できなかったようだ。結構可愛いかったから出してやる。当然他の6人が黙ってない。出してあげましたよ勿論。はぁ、ガラさんに頼んでもう少しフルーツを多めに仕入れておくか。
「お腹も膨れましたし、午後の予定を聞いときますね。サリエさん、今どの辺りなのですか? ワニが出たって事はもうそろそろなんですよね?」
「ん、まだ半分ほどしか来てない。いつもはこんなとこにワニは居ない」
「おそらく暫く狩られていないせいで、奥地から身軽な小さめのワニが中域まで来ちゃったんでしょうね。小さめだったから勢力争いとか、縄張り争いで負けて追われた奴なのかも」
「ありそうな話ですね。距離的にはまだ半分なんですか。時間的に牛まで行けないかもしれないですね」
「本来1週間ほどかけていく狩場ですからね。日帰りは厳しいと思いますよ」
「本気出せば可能ですが、俺たちの学習の意味もありますのでこのままこのペースで進みましょう」
「ん、了解」
「それと、全員レベルアップしたのですよね?」
「そうなのよ……もう少し先だと思ってたのに。良いことなんだけど、なんか違和感があるのよね」
「あぁ、それ俺のせいです。俺がパーティーリーダーの時の経験値は大体5倍増しなので」
「「「ハァ!? 経験値5倍!?」」」
「何それ? ウソだよねリョウマ君?」
「嘘じゃないですよ。ON・OFFできるので、嫌だったら切りますが?」
「嫌なわけないでしょ! むしろ永久的にずっとほしいわよ!」
「ソシアさん、なに怒ってるんですか?」
「なんか色々理不尽過ぎて、ズルいじゃない! あんた何者よ!」
「うーん、女神に愛されてる男?」
ナビーが以前言ってた言葉を言ってみた。
「なんでクエスチョン付いてるのよ!」
「まぁ、深く考えるだけ無駄ですので、俺はこういう存在なんだって思って納得してください。俺を上手く誘えてPT組めたら、美味しいご飯と安全に経験値とお金が稼げて超ラッキー! ぐらいに思ってくれたらいいです」
「『美味しいご飯と安全に経験値とお金が稼げて超ラッキー』って、それがどれほど凄いか分かってないのよ!」
「いや、一応分かってるつもりですよ。だから他の人に喋らないように契約したじゃないですか。それにブロンズ組やシルバー組の時はOFFにしてますし」
「どうして? ケチケチしないで、その機能ONにしてあげればいいのに、男だから意地悪してるの?」
「ソシアさんは俺をなんだと思っているんですか。ほんと失礼ですね」
「じゃあ、意地悪じゃないならなんでよ?」
「実力が伴わないレベル上げを良く貴族がするそうですが、実質レベルだけ上がっても役に立たないんですよ。ステータスは上がるので強くなった気がして、同じレベルの野良に交じって死んじゃったり、迷惑かけたりするのが落ちです」
他のメンバーはウンウンと頷いている。迷惑をかけられた事があるのだろう。
「へー、意外とまわりの事も考えてるんだね」
「意外ですか? まぁ、いいけど」
「そんなすねないでよ。私もシルバーランクなんだけどいいのかな?」
「ソシアさんは学校に行ってちゃんと基本ができてるし、何かあっても優秀な周りがフォローしてくれるでしょうから心配ないでしょ?」
「それもそうね。私、凄くいいパーティに入れたと思う」
「あっそうだ。パエルさん、戦闘域では盾を背負うか手持ちで移動していますよね?」
「え? うん、そうだね。何かあった時にすぐに割って入れるようにしてあるわ」
「盾のサイズも大きくなったことですし、それは止めましょう。ちょっと盾を貸してください。移動の際も【亜空間倉庫】に入れておいて、こんな感じにすぐ出せるようになるまで練習してください。肩や背中から構えるより速く構えられますし。移動の際の疲れも軽減されます。いくら軽くなったといっても盾は重いですからね。それと盾の下が尖っていてバーが付いているでしょ。これを踏んで地面に刺して固定防御をすればそうそう後ろにノックバックをされなくて済みます。あと、盾の上部に鋭利ではないですが刃が付いています。パエルさんが傷付かないように触れても切れない程度にしていますが、こんな感じに力を入れて首元にぶつければ、首はざっくり切れますので鍔迫り合いになるぐらい近い場合に使ってみてください。出血死で倒せます」
「そんな性能まであるの……ほんとにこれ私が貰ってもいいの? なんか皆の視線が怖いのですが」
「だってそれは流石に羨まし過ぎるでしょ。国宝級よ! 皆も欲しいわよね? ちらっ」
「だからソシアさんはまだ早いですって。それに流石にそんなにほいほいサービスはしません。あの時命を張ってくれたパエルさんは特別ですけどね。慣れるまでは手持ちでいいですけど、【亜空間倉庫】からの取出し練習はやってくださいね。理想はコンマ1秒です。反射的に出せるようになれば、いきなりの抜刀でも防げるようになります」
「分かりました。いつもの練習メニューに追加するようにします」
「じゃあ、そろそろ午後の狩りに出発しますか? 帰路予定は4時くらいにしましょう。それまでに居なかったら諦めますね。船頭さんにはギリギリまで連絡は保留という事でお願いします」
皆の了承を得て、午後の狩りが始まった。進んでいて思ったのが意外と多いカエルの沼だ。
結構な数を手に入れている。革製品が楽しみだ、ある程度のデザインのラフ画は出来ている。
「リョウマ君、またカメがいるみたい。どうする?」
「3体目ですか……動き遅いしつつくと引っ込んで、後は剣刺し落雷で簡単に倒せますので狩っときましょう。肉と甲羅が高値で売れるそうですし。ほとんど捨てるところが無い位全部買ってくれるそうです」
「了解。殆んど無抵抗だからちょっと可哀想な気もするけど、稼がなきゃね」
「いやいや、こいつ結構強いですよ。シルバーウルフぐらいだったら10匹ぐらい相手にして余裕で倒すぐらい強いですから油断しないでくださいね?」
「え? ぜんぜん弱いじゃない。すぐに倒されてるし」
「ソシアさんはやっぱりまだまだ危なっかしいですね。他のメンバーを見てください、凄く警戒してるでしょ。別名カミツキガメって言われるぐらいの顎の力で、一瞬の隙をじっと狙ってるんですから、隙を見せたらパクッてされちゃいますよ。一噛みで体が切断です」
ソシアさんはその姿を想像したのか、一瞬ブルッと体を震わせた。ふふふ、可愛いではないか。
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