1-11 フィリアの髪飾り

 昼食時の雰囲気もやはり良くなかった……だが仲良くなる為の秘策は考えている。

 その為に昼からオリジナルスキルを創りまくった。



【魔法創造】

 1、【カスタマイズ】

 2、・ステータス画面上のカスタマイズが可能になる

   ・インベントリのカスタマイズが可能になる

   ・ステータスやHP・MPのポイントを操作できる

   ・アビリティポイントの操作ができる

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



【倉庫内工房】

 ・インベントリ内に空間魔法・時空魔法の併用で工房用空間を創造

 ・インベントリ内の工房空間内で、ナビー監修のもと色々作製できる

 ・インベントリ内の素材を使い、各種オリジナル魔法を併用使用し自動作製

 ・ 作製物の等級は熟練度に起因する

 ・一度作製したものは、材料がある個数分の自動作製できる



【リペア】

 ・ユグドラシルの記録から壊れる前の情報をラーニング

 ・インベントリにある材料を使い壊れたものを修理する

 ・インベントリ内でも直接でも材料があれば修理可能



【リストア】

 ・ユグドラシルのデータから対象の過去情報をラーニング

 ・闇属性の時間魔法で任意の時間まで対象物の時間を巻き戻す

 ・ナビーのサポートで適正時間を調整してもらえる

 ・巻き戻す時間により消費MPが比例して増える



 よし、いい感じだと思うが、一度使ってみてダメなら修正を入れるか。

 とりあえずは気になるこれからだな。


 カスタマイズの魔法を唱えようとしたらナビーに止められた。

 APは弄って良いが、SPは弄らないでほしいとのことだ。

 理由は現在割り振られているSPの数字が架空のものなのだとか。

 確かにレベル1でステータス値オール100とかおかしいよな。とか思っていたら、そういうことでもないらしい。


『……マスター、女神謹製の制作期間300年ボディーが、攻撃力・防御力100なはずないじゃないですか……女神様たちも実際検証していないので分からないというのが回答です』


 レベルが上がった時に正しい数値が算出できるから、それまで数値は触らないでとナビーに注意された。


 女神たちの秘かな計画では、種族レベル2に上がった時に大幅に上がった数値を見て、なんじゃこりゃー!と俺が叫ぶのを見たかったらしい。多いなと思ってたMPも実質1000じゃないようだ。


 早めにレベル2に上がって正確な数値を確認する必要がある……命に係わる事案だ。


 【認識詐称】や【カスタマイズ】のようなステータスを弄るスキルを俺が創り出したので、変に弄っておかしなことになる前にネタバラシしたようだ。


 創造神である俺への加護はエネルギーを沢山使うらしいので、現在ほとんどの加護をOFF状態にしてある。

 エネルギー枯渇中の女神対策だ。


 現在使用中の加護や祝福は

 ・MP増量

 ・MP使用量減少

 ・MP回復量増量


 スキルを使用するのに特化したパッシブのみ、現在はON状態にしてある。


 全部の加護をONにしたら、武器なしの素手殴りでもそこそこ強いんじゃない?というほどだ。


 俺はいきなり神話級の武器を与えられ、チート無双とかは好きじゃないのだ。

 PS(プレイヤースキル)の伴わない者は身を滅ぼすと思っているからだ。

 強力な武器や仲間の協力でパワーレベリングした奴は、武器が壊れてしまったり、同じレベルの野良パーティに混じったときにレベルだけで技術がまったくないと、地雷扱いされるのを知っているのだ。


 安全マージンを設けつつも、同じレベル帯の魔物を倒し、技術や熟練度を上げながらレベルを上げた奴が強いのだ。俺もこの世界でそうするつもりでいる。




 さて、明日の本番で恥をかかないようにさっき創ったスキルの実験だ。


 洗面所から俺用に支給された歯ブラシを持ってきた。

 地球の物と違って持ち手がプラスティックじゃない。

 持ち手は木でできているし、毛先は豚毛だとサクラが教えてくれた。

 最初は豚の毛? 嫌だな~と思っていたが、意外と使い心地はいいのだ。


 その歯ブラシをどうするのかというと、柄の部分を圧し折った……実験の為だ。


 折れた歯ブラシを手に持って元どおりに直るというイメージを強くもってスキル【リストア】を発動した。

 スキルが発動した歯ブラシの周囲が、黒い円に包まれて手のひらの上で静止している。一瞬青いスパークが走ったように見えたら、黒い円が消えて手の平の上に壊れる前のちゃんとした歯ブラシがあった。


 成功だ!


 時空魔法・空間魔法の複合技だが、上手くいったようだ。

 かなり高度なスキルなので不安だったが問題なく綺麗に直っている。

 俺の種族レベルが1だから不安だったが、発動できて良かった。これで皆の警戒心を改善するきっかけになればいいのだけどな~。


 外を見たら知らない間に雨が降っていた……こっちで初雨だと思いながらボーとしていた。


 雨は嫌いじゃない……シトシトと落ちる雨粒を眺め、雨音を聴いていると、なんだか落ち着くのだ。

 雨を眺めながら、今日は少し蒸し暑いな……と考えていたら閃いた!


 【魔法創造】

 1、【エアーコンディショナー】

 2、・火属性・水属性・風属性・聖属性の応用スキル

   ・体の回りに薄い空気の膜を結界で被い、その結界内の温度・湿度調整ができる

   ・結界の膜の範囲は体表5mm~1mまでとする

   ・温度は16度から30度までとする

   ・結界内への物の出入りは干渉されない

   ・結界内への害虫指定された昆虫などの侵入を阻害できる

   ・結界内の紫外線も光の屈折を利用しカットできる

   ・結界内の空気は浄化魔法で常に正常な空気が保たれる

   ・温度調整はナビーの管理の下、自動・手動調整が可能

   ・発動時間は初期で12時間、以降は熟練度のレベルに比例する

   ・タイマー機能有り±12時間のON・OFF可能

   ・自分以外の相手にも発動可能、ただしナビーの自動温度管理不可

   ・スキル発動した相手も【エアコン】と唱えれば自己で温度調整が可能

 3、思ったより応用力がいるので強くイメージ………………!

 4、【魔法創造】発動



 さっそく使ってみる、【エアコン】詠唱。

 おお、快適だ! これは良い物だ! 直接空気の膜は触れられないが、体の回りが涼しい!


 俺だけで使うのが勿体ないほどの良いスキルだ。

 部屋の温度調整ができる魔道具はあるらしいのだが、物によるが魔道具は高価で、高位貴族や王族、大成した商家のお金持ちしか普通は持ってないそうだ。ちなみにこの部屋にはあるそうだ。流石が神域の神殿だ。でも外は暑いしな。有用なスキルはあったほうがいい。皆に教えてやるかな……でもなんでそんなスキルを知ってるの? とか突っ込まれても困るな……オリジナル魔法は稀少で数も少ないそうだし。




【コネクション】

 ・パーティー加入中の者のステータスに同意が得られればラインを繋ぐことができる

 ・コネクションしてる間は【カスタマイズ】が適用される

 ・ストック中のHP・MP・SP・APを贈与できる

 ・【スキルコピー】で複製したスキルを分与できる



【スキルコピー】

 ・パーティー加入中で【コネクション】で繋がっている者にスキルのコピーができる

 ・【コネクション】で繋がっている者の所持しているスキルをコピーしてもらえる



 うん、いい感じかな。


『……マスター、やりたい放題ですね! 流石に呆れました。女神様たちも凄く何か言いたそうにしてますが、怒られたばかりなので発言を我慢してるようです』


『あまり干渉してこないナビーに突っ込まれた! まぁ、調子に乗りすぎた感はあるかな。仲間も居ないボッチなのに、コピーしてあげようとか。ちょっと虚しい……』


 今日の一番は【エアコン】だな! これはいい。


『……ナビーは【カスタマイズ】だと思うのですが……まぁいいでしょう』


 疲れたのでチョイ休憩だ。スキル創造は精神的にどっとくる。

 魔法創るのにMPあんまり消費しないのは有難いのだが、いいのかな?

 ナビーも分からないようだし、そういうものなんだろうな……俺ってこの世界を創っちゃった創造神らしいしね。ひょっとしたら神力が使用され、どこかで減ってるのかもしれないな。


 15時頃ナナが遊びにきてくれた……最近俺の癒しタイムになっている。

 サクラは食事当番だから今日はこれないそうだ。


 サクラの当番多いなと思ったら、ここには貴族やお嬢様しかいないので、皆、調理ができるサクラに教えてもらっているそうだ。


 貴族令嬢は本来家事を行わない……大貴族なら専属の調理人が居るし、下位貴族でも家政婦や下女が雇われている。つまり彼女たちは、ここにくるまで全く家事をしたことがなかったのだ。


 ナナも貴族だそうだが、少しは調理できるみたいだ……母親がここにくるのを見越して練習させていたそうだ。

 8歳なのに、大した子だ。





 夕食後、勇気を出して皆に告げた。


「皆さん、ありがとうございました。おかげ様で、今日で女神様に禁止された期間が終えますので、明日より俺も仕事をしたいと思っています。先に俺がここにきたことが不安そうな人も居るようなので、簡単に答えられる範囲で疑問に答えます。まず、俺は皆が使徒と言われている存在にあたるようです。なので男性禁止の神域に入れる加護を与えられています。禊の時間に突然現れてさぞ驚いたでしょう。女神様の不手際といえ、申し訳ありませんでした」


 恥ずかしい思いをさせてしまったので、深々と頭を下げて謝罪する。


「そのことはもう良い。皆にも説明し、皆、許してくれておる。謝罪は受け入れよう」


 皆もうんうんと、頷いてくれている。


「ありがとうございます。俺がここに転移された理由なのですが、ここが世界で一番安全だからだそうです。少し危険な転移だったようで、ここなら回復魔法のエキスパートのフィリア様が居るので何かあっても大丈夫だろうと女神様の思惑もあったようです。女神様たちは俺に何かさせたいようですが、俺のレベルがあまりにも低くて現状使いものにならないそうです。なので、ここで1対1でオークぐらいは倒せるぐらいに強くなってほしいそうです。1ヶ月ほど滞在しますので、皆さんよろしくお願いします。午前中はフィリア様から依頼を受けた修理や修繕に時間を充てます。午後からは下の訓練場で騎士様に剣術の稽古をつけてもらう予定です」


「ふむ。騎士にも稽古の話はつけてある。明日から参加するとよいじゃろう」


 すでにフィリアが騎士に稽古の話をつけてくれたようだ。


「それと、俺にはちょっとしたオリジナル魔法がありまして……フィリア様、例の物は何かありましたか?」


 オリジナル魔法と聞いて、皆がざわめいた。

 オリジナル魔法は内容にもよるが、有用なもので習得可能なものなら、皆大金を出して教えを請うのである。

 フィリアですら目を輝かせてこっちを見てる……ナナは言うまでもない。


「これなのじゃが……妾がここにくる時に母上が持たせてくれた髪飾りじゃ。そのまま形見の品になってしまうとは思っておらなんだ……大事にしていたのじゃが、50年ほど前に壊れてしもうた。リョウマ直せるかの?」


 フィリア様、めっちゃ重いです……みんな話の内容に目がウルウルじゃないですか。

 本番は明日の予定だったけど、そんなの聞かせられたら今やるしかないじゃないですか。


 俺は慎重に受け取って確認した。


『ナビー、50年も前らしいが、俺のMPでやれるか?』

『……足りるはずですが、50年前の状態だと銀製品なので少しくすんだ色が残ります。物が小さいので180年程戻してピカピカでお返ししましょう。ミスリル銀が少し入ってますので、このぐらいで元の新品のような輝きを取り戻すと思います』


「フィリア様、これ治せます。お母様から受け取った時のような状態と、今のようなちょっと年月を経た使用感の出ている感じとどちらがいいですか?」


「母上から頂いた時のようなのがいい! でもできるのか? そのようなことが?」


 俺は皆から少し離れ、両手で髪飾りを胸の前で抱えた。

 復元されるイメージをし、後はナビーに委ねスキルを小声で発動した【リストア】髪飾りは黒い球体に包まれ、俺の胸の前で時おりスパークしながら浮いていた。


 歯ブラシの時より時間がかなり掛かっている。

 魔力もごっそり減っているのを感じるが、でも失敗は考えなかった。

 あってはならないことは考えない……俺には成功のイメージしかなかった。


 15秒ほどかかってやっと黒い球体から解放されたフィリアの髪飾りは、以前のような美しい銀色の輝きを取り戻し、折れた部分も綺麗に直って俺の手の平に乗っていた。


 フィリアの手にそっと返し、尋ねてみた。


「フィリア様どうですか? 以前と同じように直せていますか?」


 フィリアは返事もできないほど泣いていた。

 ただ、うんうんと首を縦に一生懸命振って亡き母の髪飾りを胸に大事そうに抱いていた。


 食堂に居た皆ももらい泣きしたようで、大粒の涙が流れている。

 心の綺麗な子ばかりだな……美しく優しい光景だった。



 外は大雨になっていたが、最近女神たちの監視で荒んでいた俺の心は晴れていた。


 フィリアの嬉しそうな顔を見れて、気分よく部屋に戻るのだった。

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