ゆうべの風

「ゆうべの風は、ひどかったねぇ」

「へえ、そんなにひどかったかい」

「そりゃあもう、ひどかったよ。ごうごう、ごうごうとね。うちの布団は薄いから、床が揺れると布団も揺れるんだが、布団があまりにも揺れるので、私も揺られて起きてしまったんだよ」

「そりゃあひどい。しかしうちではそんなにひどくもなかったんだがねぇ」

「そんなわけがあるかい。だってうちとあんたのところは一軒挟んで隣じゃないか」

「一軒挟んだら隣でもなんでもないが」

「つべこべお言いでないよ」

「あい失礼した。ところでお前さん、それはこんな音出なかったかえ」

「……おやまぁ、驚いた。なんだってうちのがここにいるんだい」

「ゆうべ寝られなかったんだと。こんな音が始終きこえていて、揺すって起こしてもまた寝つくと同じ音が聞こえてきたから、って」

「ほう……ちょいとあんた! 起きな!」


「ふあぁ……今日もよろしく頼むよ、耳栓あいぼうや」

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童話もどき ritsuca @zx1683

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