ちーちゃん

 保育園の帰りに、女の子が

「ちー」

 と言いました。

 女の子の視線を追ってお母さんが空を見ると、大きな満月が浮かんでいました。


 台所で、女の子がまた

「ちー」と

 言いました。

 お父さんがまな板で人参を切っているときのことでした。


 お風呂で、女の子が

「ちー」

 と言いました。

 お母さんもお父さんも、今度は何を指しているのかがわかりません。

「これ?」

「こっちかな?」

 着替えさせられながらの問いのどれに対しても首をぶんぶんと横に振り、そのうち女の子は疲れて眠ってしまいました。

 女の子は、「ちか」という名前でした。

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