「詩集 永劫」(10月)

舞原 帝

1.(無題)

次第次第に遠ざかっていく

気持ちの行方を

傍観しているだけで何もしない

その行いが

つまりは「その選択は正しい」と

誰もが首を縦に振るだろうに

その気持ちの所有者が

全力で気持ちを引き留めようとしているのは何故か?

届かぬ声で掴めぬ手で

気持ちを引き留めようとするなど

滑稽千万でしかないのに・・・


次第次第に薄れていく

想いの色は

限りなく無色透明に近付いて

いずれは見失い

血眼になり元の色を捜そうとしても見つかる筈がない

何故なら想いとは元来そういうもの

薄れていくのが想い・・・

だから肩を落とす必要もため息を吐く必要もない

その想いの所有者だったことなど

色の付いた想いを

新たに見つけた時には既に忘れているもの


次第次第に失くなっていく

記憶の欠片が

ごまんと集められては

次の者たちへと受け継がれていく

良いことも悪いことも

誰もが経験してこそ平等というものではないか

との考えもまた受け継がれた記憶によるものだった

何故・・・の答えは常にその中にあり

嘘が真に染まることも真が嘘を帯びることもあり得た

その記憶の所有者となった者は

失くすために欠片を持っているに過ぎなかった

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