体験入部①
あの衝撃的な光景から2、3日ほどが過ぎ、私は体験入部という名目でいろんな楽器を体験する⋯という先生からの話だったが、部室に着いてみると―
「え?私達は自分の楽器以外は吹けないよ?」
部長であり天然な
「私がホルン、あとの2人がチューバとトランペットだよ」
唯一の2年生であり、部の中では1番しっかりしていそうな
「とりあえず何やりたい?トランペット?それともトランペット?」自由人という言葉がピッタリの
⋯このように三者三様に主張していて、なんだかもう色々詰んでいた。しかし、
「あれ、木管っていないんですか?」
『 あ、うん、いないよ?』
この3人、相性はとてもいいらしく、いつも私の質問には1字1句違わずに声を揃えて答える。
「打楽器もですか?」
『 もちろん!』
⋯金管3人で吹奏楽部か。もはやブラスバンドではないか。しかし
「あれ?、そういえば
「はい、打楽器ですよ。なので管楽器はあまり...」
「じゃああれとかも出来るんだ。―」
⋯「あれ」とはドラムとかティンパニのことだろうか?
「―えーっと...ほら、ジャンベとかアゴゴベルとか」
⋯すごくマニアックな所を突いてきた。
「そ、そうですね。アゴゴベルはやった事ありますが、ジャンベはなかなか中学では持ってるところは少ないと思います」
さすがに私も少し狼狽えてしまった。どこでそんな知識を仕入れたのだろう。もしかして実はこの人も経験者なのだろうか。
「いや、私の彼氏が中学生のときにやっててね...」
なるほど、それで詳しいのか。
「ってことは、元々打楽器やってたってことはやはりそのまま打楽器を志望かな?」
「そうですね。本当はそうしたいです。しかし、編成的に管楽器でも仕方ないかなとは思ってます。」
実際、この編成にアンサンブルコンテスト⋯アンコンに出場するのなら打楽器ではなく管楽器、具体的にはトロンボーンが無難だなと思っていた。
「え?いいんじゃない打楽器で。」
「え、でもアンコンは―」
「いいじゃん、私たちが打楽器やれば。楽しそうだし」
この言葉にはさすがにその場の全員が驚きを隠せなかった。私は何も答えられなかった。どうして私のためにそこまでしようとしているのかが謎であった。他の先輩方2人も私と同じようになにも反応できずにいた。どうしてこの人は管打の可能性を考えなかったのだろうか。そんなことを思っているようだった。
夕日が私たちの結末を眺め、近くの教会の鐘が鳴り響いていた。
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