紺碧の空に輝くもの

香月碧空

モノローグ 「悔しさと決意」

私は中学校生活最後のコンクールの舞台にいた。課題曲は無難なIV番、自由曲は歌劇「トゥーランドット」。正直この選曲なら勝てると思っていた。地区大会では1位通過、県大会も余裕で抜けられると思っていた。しかし結果は6位、上位大会への推薦は上位4団体。現実は甘くなかったのだ。しかも講評用紙を見てみると決まり文句のような褒め言葉ばかりで、アドバイスなんてものはひとつもなかった。そのため、さらに上達する方法は何一つ思いつくことなんてなかなかった。

"ミスはしなかった。それなのになんで...”

そんなことしか考えることしか出来なかった。


その後、学校で反省会をした際に、先生はあの講評用紙を模倣したかのようにみんなを褒めた。その時、私は「あ、こんなものなのか」となぜだか不意に結果に納得してしまった。それと同時に「このままじゃいけない」と思った自分もいた。完全に大会を形式だけで受け取り、上達しようなんて考えていない。そんな考えが先生の言葉からハッキリと伝わってきていた。


反省会が終わり、それぞれが帰ってるなか、私は先生にひとつの質問をした。


「先生、あなたの中では今回の曲は何色でしたか?」


すると先生は完全に硬直してしまった。私が思った通りの反応だった。

「先生、何色です?早く答えてくださいよ」

こんなところで妙に意地を張っている自分が少しだけ嫌になった。しかし、同時に楽しんでいる自分を見つけてしまっていた。

「えっと・・・どういうこと?」

「いえ、なんでもないです。今までありがとうございました」

回答がない事がわかると、そう言っていつも通りの作り笑いで挨拶をし、家に帰っていった。


家に着くとすぐに机と向き合った。中学3年生であった私はちょうど進路を考えていた最中であったが、未だに決められていなかった。しかしなぜか、私は志望校を考える間もなく希望調査に書いていた。それは吹奏楽の名門「桜華おうか学園」だった。正直、自分の技術量で練習についていける自身はなかったが、そんなことを考えている余裕はその時の私にはなかった。それよりも現状を脱出ことが最優先だと思った。桜華おうか学園は家からは非常に遠く、とてもここから通えたものではなかったが、この腐敗したような場所の影響を受けないためにはちょうどいいと思った。そうして自分でも知らないような私に変わるんだ。そう誓ったのだった。


これこそが、私―古川ふるかわ 二千椛にちかのこれまでへの決別とこれからの決意そのものだ。

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