第7話:トレイユ登場
「そんなに慌てて食べると、今度は消化不良を起こすぞ」
キラクは、隣に座るリリアを見て、引き気味にそう言った。
無理もない。
リリアは、目も当てられないようながっつきっぷりで、そこにある全てを食べ尽してしまうかのような勢いで、口に物を運んでいるからだ。
リリアは怒っていた。
どうしてもっと早く、こうしてくれなかったのかっ!?
菜食主義だなどと言って、一切の狩りを許さず、食べ物も与えず、自分を餓死寸前にまで追い込んだキラクに対して、リリアは怒っていた。
しかし、同時に感謝もしていた。
どうしてこんなこと、してくれたんだろう……?
キラクは、極度の生物オタクで、何を差し置いても生態系が第一の信念を持っていたはずだ。
なのに、目の前にあるのは、その大切な生態系の一部だったもの。
倒れてしまった自分のために、信念を折り曲げて、これだけの物を用意してくれたのかと思うと……。
「あひがとふ」
口に物を入れたまま、リリアはキラクに礼を言った。
リリアの、ハムスターのように膨らんだ頬と、食べかすだらけの口回り。
「……口に物を入れたまま喋るな」
無作法なリリアを睨み付けるキラク。
案の定、リリアは叱られたが、あまり悪い気はしなかった。
キラクが用意してくれた食べ物は、そのほとんどがリリアの腹の中に収められた。
キラクも食べたが、普段から小食で内臓が退化しているため、少量しか食べることが出来なかった。
満腹になったリリアは、そこで初めて、キラクがゴレアの外に出ている事実に気付いた。
そして、キラクの足が、見たことのない金属の機械で補強されていることにも。
聞きたい事が山ほどあるが、何から聞けばいいのか、リリアは整理がつかないでいる。
と言うよりも、お腹が満腹で、頭に血が回っていないようだ。
すると、キラクの方から話し掛けてきた。
「お前は、生態系の頂点に立つのは、人間であるべきだと思うか?」
夜空を見上げて、独り言のようにそう言ったキラク。
炎に照らされたキラクの赤い瞳は、いつもよりも赤く、まるで燃えているように見える。
「どういう意味?」
リリアは、素直にそう言った。
「つまり……。全ての生物を、人間が支配してもいいものなのか、ということだ。生物の命、種の存続と滅亡、それら全てを人間の力で左右していいものなのか……。人間が手を加えることが、生態系に何らかの異変をもたらすのなら、それはやめるべきだ。人間は、この世界に必要ない」
キラクの横顔が、なんだか寂しそうだと感じるリリア。
しかし、キラクの言葉はリリアには難しすぎて、リリアは黙ってしまう。
だが、キラクはリリアの言葉を待っている。
リリアは、無い頭で、必死に言葉を探す。
「あの……。私は、人間も自然の一部だと思うけど……」
自信がなさそうな、小さな声でそう言ったリリア。
キラクの視線が、リリアに向けられる。
「だってさ……。人間だって、神様が創ったでしょ? 他の動物も、植物も、命があるものはみんな神様が創った。ううん、命のないものも、この世界にあるもの全て、創ったのは神様。だから、人間だけが、この世界に住んじゃいけない理由なんてないと思う」
リリアは、キラクの目を真っ直ぐ見てそう言った。
残念ながら、リリアの言葉は、自らの思いではない。
それは、シーラ族に代々伝わる教えだ。
幼い頃から聞かされてきた、人は自然の一部であり、自然と共に生きるということ。
それが、シーラ族の考え方であり、信念であり、生き方なのだ。
いつしかそれは、リリアの考え方であり、生き方になっていたのだった。
「それにさぁ、全ての生き物を人間が支配するだなんて、まず無理だよ。あんたも見たでしょ? スカッチャーのあの恐ろしさ!」
リリアは顔をしかめてそう言ったが、キラクはその言葉には同調できない。
なぜなら、キラクにとってスカッチャーは恐ろしい生き物ではないからだ。
キラクの心を読み取ったのか、リリアは冷めた目でキラクを見る。
「そりゃあんたは大丈夫だろうけど……。普通の人間なら一撃で殺されるんだよ。現に、私も危なかったわけだし……。みんなが、あんたくらい強かったら、そりゃ全ての生き物を支配することはできるかも知れないけど……。まぁ、この国の人間は無理だろうね」
リリアの言葉に納得したのか、キラクは何も言わずにハーブティーを口に運ぶ。
確かに、人間もその他の生き物も、自然から生まれたものであり、そこに違いはない。
たまたま、人間だけが知能が発達し、物を作り、欲を満たす術を得ただけであって、もしかしたらそれは、別の生き物が成り得る可能性もどこかであったはずだ。
偶然か……、ぞれとも必然か……。
隣にリリアがいることを忘れて、考え込むキラク。
その間リリアは、聞きたい事を頭の中で整理することに成功した。
まず、一問目。
「ねぇ、この食べ物はどうしたの?」
一番重要なことから聞こうと考えたリリアは、最初に食べ物のことを尋ねた。
なんともリリアらしいというか、食べる事をとても重視しているというか……。
「あぁ……。森の中から得たものだ」
キラクの言葉に、それはわかっているよ、という顔になるリリア。
「そうじゃなくて。どうしてここにあるの? あんた、狩りは駄目だとか、生態系がどうのこうのとか、菜食主義だとか言ってたよね?」
怒っているつもりはないのだが、語尾が強くなるリリア。
「確かに言ったが……。さすがに、目の前で野垂れ死にそうな人間を捨て置けるほど、俺は人でなしじゃない」
淡々としたキラクの口調に、むしろ、本当に人でなしじゃなくて良かったと、リリアは心底思った。
本当の人でなしなら、リリアはきっと、二度と目覚めることはなかったのだから。
「肉は、この森に住むイノシシ科の生き物のものだが、やつらは繁殖率が物凄く高いし、この森以外にも生息地が多数あるから、少しくらい狩っても問題ないと判断した。魚も同じだ。果物とハーブに関しては、毒を含んでいたが、中和するための薬を混ぜておいたから心配はない。それに、この森で一番多く繁殖しているものを採取したから、これが理由で絶滅するという結果にはならないだろう。まぁ、全て計算上の話だから、いつ何がどうなるかは定かではないがな」
キラクの説明は、長くて解り辛い。
とりあえず、キラクの中で問題なし、という結果だろうとリリアは理解した。
「あ~そう。けど……。あんた、狩りができたんだね。ゴレアでやったの? 大きいし、目立つから、すぐ獲物に逃げられそうだけど」
リリアの言葉に、キラクが少し不機嫌な表情になる。
ゴレアを馬鹿にされたと解釈したのだろう。
キラクは、ズボンのポケットから小型のリモコンのようなものを出し、ゴレアに向けてボタンを押した。
すると、今までそこにあったはずのゴレアが、一瞬にして二人の視界から消えた。
何が起きたのかわからず、リリアは目を擦る。
「わかるか? ゴレアの体表は、自由自在に辺りに溶け込めるようになっている。まぁ簡単に言えば、透明になれるんだ。だから、森の中でじっとしていれば、獲物は知らずに自ら近付いてくる」
そう言って、キラクはリモコンのボタンをもう一度押し、ゴレアは元の場所に姿を現した。
リリアは、目をぱちくりさせて驚く。
物を透明にしたり、消したりする魔法は、高等魔法第三級に当たる。
リリアはもちろん、そんな高度な魔法は使えないし、使える知り合いもいない。
キラクはビプシーで、魔法を使ったわけではないが、それと同等の技を持っているという事実に、リリアは悔しいやら羨ましいやら、とにかく凄すぎて、よくわからなくなる。
リリアの反応に、キラクは満足そうな表情になる。
凄いなとは思っていたけれど、ここまで凄いと怖いな……。
そう思いながら、もう一つの質問を、リリアはキラクにぶつける。
「じゃあさ、その足は何なの? 金属で巻かれているけど……。キラクの国ではそれが流行っているの?」
リリアの言葉に、キラクは無表情になり、何も言わなくなる。
しかし、リリアは諦めない。
「けど、その金属の足が流行しているって言うのなら、結構なもんだよ。私の服を馬鹿にしてたけど、それも大概……。変だし」
少しばかり煽って、キラクの様子を伺う。
リリアの言葉に、キラクはリリアを睨み付ける。
それでも、キラクは言葉を発しない。
だが、まだリリアは諦めない。
一度気になったことは、答えが出るまで追求したいのだ。
「それさ、痛くない? ただでさえも足細いのに、そんな重そうな金属つけてるなんて……。足が可哀想だよ。痛めつけているように見える」
さすがのキラクも、このリリアの言葉には耐え兼ねたのか、口を開く。
「俺は、少し前までは歩けない体だった。それを、この補強器具でなんとか歩けるようにしたんだ。まぁ確かに、普段は動き辛いし、見た目もよくないが……。必要な時には、常人以上のパワーを発揮することができる。俺は、身に着けるものは全て、見た目じゃなくて機能性で選ぶんだ」
鼻をフンッと鳴らして、キラクは見下したような目で、過度な露出のリリアを見る。
リリアは、何だかよくわからないが、歩けない体だった、というキラクの言葉を聞いて、これ以上のことを聞くのは野暮だな、と思った。
少し、キラクの話をしよう。
キラクは、今いる場所からずっと北の、科学の発達した国で生まれた。
その国では、科学技術によって高度な文明が築かれていた。
知能の優れたロボットはもちろんのこと、人型アンドロイドや、人間の複製であるクローン体なども数多く生産されていた。
そのため、人間の誕生も、予め様々な遺伝子操作が成された上で、国に管理されていた。
生まれてくる子どもはみな健康で、知能が高く、運動能力に優れた者たちだった。
しかし、先天性の異常は防げても、後天性のものは防ぎきれない。
科学の発達したその国にも、治らない病気はいくつもあった。
その病気の一つに、生まれたばかりの幼いキラクは蝕まれたのだ。
奇跡的に一命を取り留めたキラクだったが、下半身はほぼ不随となった。
両親は、キラクの生存を喜びつつも、発育の遅れに悩み、普通とは違う事を嘆いた。
外に出ることはできず、自室のベッドの中だけがキラクの居場所だった。
運動はできなくても、学ぶことならできるだろうと、両親は幼いキラクに最先端のパソコン機器を与えた。
そうしてキラクは、両親以外の誰とも関わることなく、パソコンの画面と向き合うだけの孤独な幼少期を過ごした。
いつしか、弟が生まれ、両親の目は完全にキラクから逸れた。
キラクは、完全に一人ぼっちとなった。
しかし、今までの生活の中で、感情が欠落している部分のあるキラクは、寂しいなどとは微塵も思わずに、その後もただただ知識を蓄積していった。
その結果、今のキラクが出来上がったのだ。
幼い頃から膨大な量の情報を頭に詰め込み、知識の塊となったキラクは、異例のスピードで国で一番の難関大学を卒業。
歴代最年少の生物学者となった。
その後キラクは、自らの研究で下半身の神経を取り戻すことに成功し、補強器具を使えば歩けるまでに回復した。
有人探索機ゴレアクト303を製造し、誰の手も借りずに、一人で研究の旅に出ることも可能になった。
これまでに、様々な研究を繰り返し、沢山の発見をして、国ではキラクを知らぬ者など誰一人としていないほどに、キラクは多くの功績を残している。
「具体的にはどのような形をしているんだ?」
キラクが、いつになく目をキラキラさせながら、リリアに尋ねた。
リリアは首を傾げる。
勘の悪いリリアのことだ、キラクが伝説の花のことを言っているなどとは思いもつかないだろう。
リリアの様子に、キラクはチッと舌打ちをする。
「伝説の花のことだ。色とか、形とか、何か特徴があるだろう?」
不機嫌そうなキラクに対し、リリアはやっと言葉の意味を理解できたような顔になる。
「あぁっ! 花のことっ! えっと……。そうだなぁ……。実は私もよく知らないんだよね」
へへへ、と笑って見せるリリア。
「知らないだと? じゃあ、どうやって見つけるつもりなんだ?」
眉間の皺が濃くなるキラク。
「どうやってって……。見たことのない花がそれなんじゃない?」
リリアの言葉に、深く深い溜め息をするキラク。
「無計画で阿呆な奴だとはわかっていたが、ここまで阿呆だとはな……」
額に手を当てて項垂れるキラク。
「そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。それに、百年に一度咲く伝説の花を、私が見たことあるっていう方がおかしいでしょ?」
リリアにしては、キレのある返し方だ。
「阿呆。何か文献などに残っているだろう? ほとほと呆れ果てる。本当に探す気があるのか?」
キラクの鋭い瞳に、動揺するリリア。
下手なことを言えば、嘘をついているとばれてしまいそうだ。
「そう言えばお前……。どうしてその伝説の花を探しているんだ? 目的は何だ?」
キラクの言葉に、さらに動揺するリリア。
目的と言われても……。
目的などない。
第一、そのような花を探しているという事自体が嘘なのだから。
リリアが返答に戸惑っていると、目の前の茂みがざわざわと音を立てて揺れた。
キラクもリリアも、視線を茂みに向ける。
火を焚いているのに、獣が寄ってきたのだろうか?
息を殺し、茂みに目を凝らす二人。
すると、茂みを掻き分けて現れたのは、一人の男。
細身の筋肉質な体に、保安官の武装用制服を着ている。
手には魔光式銃を持ち、額にヘッドバンドを巻いたその男は、リリアを見るなり目を真ん丸にした。
「リリア? リリアかっ!?」
その声に、リリアは聞き覚えがあった。
立ち上がり、その男の顔をよく見るリリア。
暗がりでも色あせない薄紫色の瞳で、男の正体がわかった。
「あっ! トレイユ!?」
大きな声を出したリリアを睨み付けるキラクに対し、男はにっこりと笑った。
「紹介するね。同じ村の出身で幼馴染のトレイユ。トレイユは私より二つ年上で、王都で城の警備をしている国家保安隊の上級保安官なの。トレイユ、この人はキラク。北にある科学の国から来た生物学者。えっと……。今ちょっとその……。一緒に伝説の花を探しているの」
リリアは、できるだけ言葉を選んで、双方を紹介した。
「へ~、科学の国から……。科学なんてものが、まだこの世にあったとはね」
厭味でない言い方のトレイユに対し、キラクは言い返す気はないようだ。
トレイユは、リリアの隣に腰掛ける。
「だが、リリア。今はそんなことしている場合じゃ」
「も、もう寝よっか!? もう遅いしね、真っ暗だしねっ! あっ! トレイユは私と一緒にこの中で休もうか!? さぁ入って! 大丈夫! 中は結構広いからねぇっ! あっ! あんたももう休んだら!? 疲れたでしょっ!? さぁさぁゴレアに乗って! ほらほらっ!!」
明らかに不自然な勢いで、トレイユをシェルターの中へ、キラクをゴレアの中へ押し込むリリア。
不思議に思いながらも、何か理由があるんだろうなと気付くトレイユと、不可解なリリアの様子に苛立ちを隠せないキラク。
しかし、人見知りなキラクは、これ以上初対面のトレイユと長話をするのも面倒なので、リリアに押されるままにゴレアに乗り込む。
「明日は更に森の奥に進む。ちゃんと寝ろよ」
キラクが、何か意味深な表情でリリアを睨み、そう言った。
リリアは不自然な笑顔を保ちつつ、キラクがゴレアの中で横になるのを見届けて、シェルターの中へと入った。
ふ~っと安堵の息を吐くリリア。
「で……。何がどうなってるんだ?」
トレイユの言葉に、リリアの両の眉毛が垂れ下がった。
「なるほどな。それであの男と一緒に、森の深部を目指しているってわけか」
話を全て聞いたトレイユは、腕を枕にして寝っ転がる。
「全部私が悪いんだ。慌てて森に入ったりなんかしたから……」
リリアは俯く。
「まぁ、気持ちはわからなくもないさ。俺だって、知らせを受けて慌てて村に帰ったんだ。誰よりも村が大好きなお前が、必死になるのはわかるよ」
トレイユの優しい言葉に、ここ数日間、張りつめていた心の緊張の糸が緩んで、リリアは泣きそうになる。
「でも急がないと……。このままじゃ取り返しのつかないことになる」
トレイユに、笑顔はない。
「村は……。どうなっているの?」
不安そうな声を出すリリア。
「病人はさほど増えていないけれど、クレ婆さんは手遅れだった」
トレイユの言葉に、リリアは頭の中が真っ白になる。
「手遅れって……。えっ?」
最悪の事態を想像していなかったわけではなかったが、リリアには現実が見えていなかった。
「俺が村を出る直前に息を引き取ったよ。もう百歳近くだったからな、体力がもたなかったんだ。けど、急がないと……。このままじゃ、もっと大勢の死者が出ることになる」
トレイユの言葉を聞いてリリアは、ようやく自分が置かれている現実と、ここ数日をいかに無駄に過ごしてきたかが身に染みてよくわかった。
そして同時に、無力な自分を恨み、悔やんだ。
もっと、私に魔力があれば……。
「現段階での病人数は五十三人だ。それに、これから増える可能性だってある。できるだけ早く、できるだけ沢山、角が必要だ」
トレイユの言う角とは、このグレゴロの森の奥深くに生息するアーシードラゴンの額に生える、黄金の角のことだ。
リリアの目的も、その黄金の角だ。
「あのキラクって奴。もう必要ないだろう? 俺とお前なら、二人でなら何とかなる。事は急ぐんだ。無駄な嘘はやめて、明日から二人で森の深部を目指そう」
トレイユの言葉に、頷きかけたリリアが止まる。
キラクに嘘をついたのは事実だが、ここでキラクと別れることは非常に危険じゃないかと考えたのだ。
なぜなら……。
「トレイユって、方向音痴だったよね?」
リリアの言葉に、トレイユの呼吸が止まる。
トレイユは、右と言われれば左に向かい、左と言われれば右に向かってしまうほどの、正真正銘の方向音痴だった。
現に、魔力を十分に持ち、本来なら既に目的を達成しているだろうと思われるほどの力を有しているのにも関わらず、その方向音痴のせいで、今の今まで森をグルグルと回っていたのだから。
幼い頃から村で一緒に育ったのだ、リリアにはトレイユの弱点ぐらい承知している。
リリアは、考えは足りないが運は良い方だ。
トレイユは、考えることに関しては人並み以上だったが、運も悪ければ勘も悪い。
足して割ればちょうどいいのにと、村の大人たちによく笑われたのだ。
「そ、そうだけど……。まぁ、二人でなら何とかなるだろうっ!?」
思わず大きな声を出すトレイユ。
「しっ! 静かに。キラクが起きちゃうよ」
リリアはう~んと考える。
無い頭を絞って、最善策を探ったところ、やはり結論は今までと同じだった。
「とにかく、キラクと一緒の方が絶対いいよ。キラクはこの森の地図を持っている。あの、大きな金属の中に情報がいろいろ入っているの。私たちにはあの機械は操れないから、奪ったって意味ないし……。と言うか、そこまでしちゃいけないしね。キラクと一緒にいれば、必ずアーシードラゴンに出会えるはず……。ただ、キラクは極度の生物オタクだから、きっとアーシードラゴンを狩ることなんて絶対に許してくれない。だからその時は、二人で力を合わせて、何が何でもキラクを押さえ込んで、角を手に入れる。それ以外に方法はないよ」
リリアの作戦に、トレイユは心から賛成はできないものの、他に手がないと悟ったのだろう、頷く。
「けど、一つだけ……。もし、あいつが俺の邪魔をしようとするなら、俺は容赦なく撃つからな」
トレイユの言葉に、リリアは小さく頷く。
きっと、キラクなら、ゴレアに乗ったキラクなら、トレイユの魔光式銃に撃たれたくらいじゃびくともしないだろう。
だけど……、きっと、心を傷つけてしまうに違いない。
リリアは、今更になって、キラクに嘘をついたことを後悔し始めた。
しかし、こうする以外に方法などなかったのだと、自分に言い聞かせていた。
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