エピローグ

わたしは小説が――フィクションが嫌いだ。


 特に幸せな結末になる物が。


 あんな物を読んでいると「不幸や苦労はいつか報われる」なんて、無意識に刷り込まれてしまいそうだから。




 あれはたぶん、希望を持たせて不幸な人間を死なせないための一つの装置みたいなものだ。


 結局、神様や宗教を信じないって現代人ぶっていても、人間の本質は昔から何も変わっていないんだと思う。




 きっと、今私が居る世界とも変わらない。




 じゃあ不幸な結末ならいいの?


 そう聞かれたら「興味が無い」って答える。


 現実は既に不幸だから、読まなくて大丈夫。間に合ってる。


 


 助けてほしい。誰でもいい、神様でも悪魔でもいい。


 滅多に現れないみたいだけど。


 


 でもいつも思う。


 神様は試練を与えてから助けるなんて詐欺みたいなものだし、どうせその後でまた別の試練がある。


 悪魔は見返りに持っていく対価が釣り合ってない。やっぱりこっちも詐欺だ。




 助けてくれるなら何でもいい。


 けどまたその先で辛いことがあるなら、もう楽に死なせてほしい。


 痛いのも苦しいのも嫌。




 助けを求めるのはいつだって人間だ。


 助けるのも貶めるのも。


 だから、やっぱりわたしは人間なんだ。


 


 他人は自分を映す鏡だって聞く。


 なら、誰かを助ける人は本当は自分が助けてほしくて、その人と同じかそれ以上に辛いのだろうか。


 そんな人がいたらきっと、一緒にいてくれる気がする。

 助けてくれるかわりに助けてあげる。

 そんな事、恥ずかしくて言えないけど。




 辛くても時間だけはあるわたしは、今日もそんな事を考える。


 そして寝る前にいつも熱心にお祈りをする。


 明日こそ、目が覚めないようにって。

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