37.お楽しみスライム

 フェリがいるなら、このまま人のいる所に居続けるのも良いなぁ。

 なんたって美味しいゴハンが出るもんね!


 でもボク、このままでいいのかなぁ……。


『ねー、リーリオ~』


『どうしました?』


 お祝いムードのクリス達を眺めながら、ウインドウのリーリオと向き合う。


『ボク、そろそろフェリと別れた方がいいのかなぁ? クリス達に任せられたら安心だし……』


『……ニイムさんは、別れたいのですか?』


『そんなことないよ!』


 それは100パー無い!

 フェリとは短い付き合いだけど、大好きだもん。


『でも、でもさ……こうやって迎え入れてくれる人間がいるなら、スライムのボクは引いた方がいいんじゃないかなぁって……。スライムと人じゃ、進む道が違うでしょ?』


『違うんですか?』


『えっ……』


 そりゃ、違うんじゃないのかな。

 スライムはスライムだし、人は人だし、モンスターと人だし……。


『今はテイマーと従魔として、上手くやってるじゃありませんか。それは同じ道を一緒に歩んでいる、ということでは?』


『そ、そうかもだけど……良いのかなぁ?』


『良いと思いますよ、私は』


 リーリオの天使スマイルだ。珍しい。


『ニイムさんはニイムさんらしく、思うように生きて良いんですよ。スライムだとか人だとか、他人の価値観に縛られることはありません』


 そう……か……。


 ……そっか!


『……うん、ありがとう、リーリオ! ボク、ちょっとおセンチな気分になってたみたいだ!』


『ふふ、ニイムさんは元気に笑ってる姿が一番ですね』


『へへへ~♪』


 そうだよね。

 スライムでも人間でも亜人でも、好きに生きていいんだ。

 無理に別々になる必要なんてないよねっ!


『私としては、ニイムさんお一人になられても良いんですけれど……』


『……え?』


『あぁっ! ダンジョンにいた頃が懐かしいっ! 何でも「リーリオ~リーリオ~」と言って頼ってくださっていたのに……今ではすっかりお払い箱で……私だけの、ニイムさんが……ッ』


 ああ、うん……。


『所詮、私はガイド……序盤だけの存在……きっとその内に忘れ去られて……』


『んもー、いじけないの! そんなこと言って、毎晩お喋りしてるでしょ!』


『それはそうなんですけどぉ~!』


 ボクはスライムだから、ほとんど寝ないからね。

 クリス達が寝てる間は大体、リーリオとお喋りしてる。


『それに今回のピンチはリーリオに救われたようなものなんだからさ。もっと自信持ってよ!』


『ニ、ニイムさん……!』


 ふ~、世話が焼けるなぁ。

 まぁそういうところも嫌いじゃないんだけどさっ。


『それはそうと、これからどうしようかな~』


『どう、とは?』


『フェリと出会って、クリス達のパーティーに入れてもらって、とりあえず身の安全は確保できちゃったなーって思って』


『そうですね、冒険自体は安全とは言えませんが……以前に比べると遥かに安全になったと思います』


『でしょー? 今まで生き延びようと必死だったけど、ある程度安全になったからさ。次どうしようかなーって』


『なるほど……では、やらなければいけないことではなく、やりたいこと・・・・・・は無いんですか?』


 やりたいことかぁ。

 あ、そういえばボクの前世が気になるかも。まだちょっとしか思い出せてないもんね。

 むしろチラ見せされて余計に気になるというか……。

 どうにか「ドバーン!」と思い出せないもんかな~。


『前のボクを思い出したいなぁ~チラッチラッ』


『うっ……そ、それは私からは……』


『だよねぇー。だいじょぶ、頑張って自力で思い出すよ!』


 レベルアップや進化で思い出すっていうのは経験済みだもんね。

 頑張ればきっと、もっと思い出せるはずさ!


 っと、結構リーリオと話し込んじゃったな。

 ボクもお祝いに参加しないと!


『じゃあボクはみんなのところに戻るよ。またね、リーリオ』


『はい。またいつでも呼んでくださいね』


 ウインドウが消えた途端、体に衝撃が走った。


 ――ガシッ!


「お~スラ公~、飲んでっか~?」


 シーロ、お酒臭い……。


「おいおい、あんまり絡むなよ?」


「だーいじょーぶだって、さっき自分で酒飲んでたろ~? ほれ、これも飲めや~」


『わーい、いただきまーっす♪』


 シーロに差し出されたお酒のジョッキを中身だけ飲み干して……。

 っぷっはー、美味しい!


「お~、良い飲みっぷりだなぁ~!」


「ニ、ニイム……そんなに飲んで、大丈夫?」


『大丈夫、大丈夫! スライムにアルコールは効かないから! たぶん!』


「な、なら良いんだけど……」


「ほら、フェリ君も食べなよ! このお肉とか美味しいよ?」


「あ、ありがとう、ございます……」


「フェリはもっと肉を食べて体を作らないとな。俺と一緒に鍛えるか!」


「は、はい!」


「んなカテーことは後だ後~! 今は飲めー!」


『いえ~い♪』




 生きるのに精一杯だったボクが、安心できる場所を得られて。

 フェリとボクを受け入れてくれる人を見つけられて。

 クリス達とこんなに仲良くなることができて、ほんと~に良かった!

 これからもみんなと、もっと楽しいこと見つけていきたいな!


 スライム生、楽しんだ者勝ち……だもんねっ♪

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