32.緊迫のスライム

 う、上から降ってきた?!

 ソルジャースケルトンの奇襲だ!


「クソッ、みんな気をつけろ! こいつ強いぞ!」


 クリスはすぐに体勢を立て直して、盾を手にソルジャースケルトンを押し留めていた。

 でも、咄嗟とっさにフェリを庇ったせいか、最初の一太刀を右肩に受けてしまっている。

 革鎧で多少は防げたみたいだけど……少なくない量の血がにじんできていて、かなり痛そうだ。


「クリスの傷がやべぇ! すぐ仕留めるぞ、セシリア!」


「うん!」


 短剣を手に加勢するシーロと、魔法の詠唱を始めるセシリア。

 ボクも手伝いたいけど……敵が一匹の時は難しい!

 体当たりしか攻撃方法が無いスライムなんだもん~! ぐぬぬ!


「ぐ、ぅ……ハァッ! ――シーロ!」


「任せろ!」


 ソルジャースケルトンはクリスの盾に弾かれて体勢を崩した。

 それにシーロが合わせて、短剣で頭蓋骨ずがいこつをカッ飛ばす!


 ――ガキーンッ!


「セシリア!」


「――火の矢ファイア・アロー!」


 セシリアの杖の先から3本の火の矢が現れる。

 地面に転がりカタカタとあごを鳴らす頭蓋骨へと、火の矢が飛んでいった。


 ……2本外れた!


 だけど、命中した1本でも威力は足りてたみたいで、頭蓋骨はすすだらけになって動きを止めた。

 それと同時に、クリスと対峙していた体の方も崩れていって……もう大丈夫かな?


 なら急いでクリスの治療だ!


 ――ぽいんぽいんぽいんぽいん!


「クリス、大丈夫か?! 肩見せろ!」


「ぅ……な、なんとか……」


「急いで止血と傷薬! フェリ君、お願い!」


「あ、は、はいっ!」


『オッケー、出すよ!』


 先にクリスの側まで来ていたボクは、できるだけ急いで一番良い傷薬と包帯を取り出した。

 それを受け取って処置をするのはシーロだ。


 でも、人間の傷を見慣れないボクでも分かる……。

 これは、傷薬なんかでどうにかなるような傷じゃない……よね。

 今すぐどうこうってわけじゃなさそうだけど、放っておいたら失血で動けなくなるかもしれない。


「結構イッてるな……この薬だけじゃマズい」


「そ、そんなぁ……これより良いやつは持ってないよ……」


「一旦、例の小部屋に移動しよう。水がありゃ応急手当もまだマシになる」


「……わかった。行こう、フェリ君」


「は、はい……」


 シーロがクリスに肩を貸しながら、ボク達はできるだけ急いで小部屋へと向かった。

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