12.置き逃げスライム

「なんだぁ、あのスライム。頭に薬草乗っけてやがる」


「ホントだ……なんでスライムが?」


 あ、そういえば食べずにいた薬草を乗せっぱなしだったな。

 もしかして、この薬草を差し出せば見逃して……


「よし、さっさとスライム倒して薬草を分捕ぶんどろうぜ!」


 もらえないですよねー! ですよねー!!

 やばいやばい、このままじゃ潰されちゃうよぉ!


「いや、ちょっと待て」


 ……おや?


「このスライム……もしかして、俺たちに薬草をくれようとしてるんじゃないか……?」


 おおっ! なんということでしょう!

 ボクはそんなつもりなかったけど、驚きの好意的解釈!

 やだっ、イ・ケ・メーン☆


 よし、その線でいこう?

 ほらほら、ボクはいたいけで善良なスライムだよ~。


 ――ぷるぷる、ぷるる~ん♪


「ハァ~? クリス、何言ってんだオメェ」


「あのさ……スライムでも一応モンスターだよ?」


「い、いやでもさ、薬草を乗せてプルプルしてるし……」


「だから何だっつーんだよ、アホか」


「人が良いのは知ってるけど……そこまでいくと心配になるよ」


「うぅ……」


 あぁっ、負けるな青年! そこで負けたらボクのスライム生が終了してしまうっ!

 くそぅ、こうなったら先手必勝だ! さっさと薬草を差し出そう!


 ――ぽと……ぽにょにょにょにょ……


「あ、ホントに薬草置いていったよ?」


「後ずさりして……こっちの様子伺ってんな」


「なっ! ほら、あのスライムは良いスライムだったんだよ!」


「ンなヤツいんのかよ?」


「さぁ……でも薬草は手に入ったね」


「お前、それ俺に使う気じゃねえだろうな? スライムが置いてったやつだぞ?」


「薬草は薬草でしょ。それに、最初はスライムを倒して手に入れる気だったんでしょうが」


「ぐっ……そりゃそうだけどよ……」


「いいじゃないか、折角スライムが薬草を分けてくれたんだ! ありがたく使おうじゃないか!」


「そう言われるとビミョーだが……しょうがねぇな」


 わー、良かった! これで潰されなくて済むよ~。

 傷ついた人に薬草をあげられたし、良いことした気分だね!


 じゃっ、そゆことで! さらばッ!


 ――ぽよんっぽよんっぽよんっ!


「あ、スライム行っちゃった……」


「ほっとけ、どうせ経験値の足しにもなんねぇよ」


「ありがとうな~良いスライム~!」


 ボクの名前はニイムだよ!

 こっちこそありがとうね、人が良すぎるお兄さん!

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