有名童話をいじった集

五月雨

シンデレラ…あれ、本名ってなんだろう。まあ、いいや。

むかーしむかーし

あるところに可愛い女の子がいました。

名前は、

名前…

名前か。

あれよね。

あれなのよね。

ごめんなさいね目が悪くて読めないのよ。

ちょっとー、後のシンデレラちゃん。

教えてちょうだいな

…エラ。

エラっていうの。

エラって言うの!?

初めて知った…。

まぁ、いいわ。

その、エラちゃんがね、お父さんと暮らしていたの。

お母さんは昔亡くなってしまったの。

でもエラちゃんのお父さんは愛妻家だったからエラが寂しいかもしれないけれど再婚しなかったのよ。

その分たくさんのお金で使用人を雇ったり、動物達と遊ばせてやってた。

エラはきっと素敵な貴族の女性になると思っていたんだけど…ねぇ。







「ねぇ、箒ってこう使うの?」

「お、お嬢様!箒など使う必要など…」

「なんで?どうしてあなた達は箒で床をはけるのに私はダメなの?」

カノジョが10歳の時、まるで運命のように箒を扱いたがった。

ほんと、彼女は灰被りの運命に従いたいのね。

またある時は

「お願い!洗濯の仕方を教えて!」

「お嬢様の美しい手が荒れてしまいます!お辞め下さい」

彼女は召使いのやることばかりに興味を持ってしまった。

召使いの間ではお馴染みの名前、

シンデレラと呼ばれていました。

灰被り+エラ

シンダーエラからシンデレラという

まぁ、幸せな名前ね。

日本なら確実にとんでもない名前ね。

でも、召使い達は馬鹿にして呼んでいたんじゃないし、エラのことを結構好きだったのよね。

召使いは料理、洗濯、掃除、裁縫

お父さんは学術、乗馬、礼儀作法

をおしえていた。

ある日お父さんは家庭教師をつけたらあの子はもっと素晴らしい子になる。

そう思い家庭教師を募集すると爽やかな青年が引き受けてくれた。


初めてエラがその青年とあった時。

これがエラにとっての初恋になるの。

エラは初めて女の子らしくなったのよ。

「あ、お、美味しい紅茶の入れ方、教えて欲しいわ。」

「分かりました、今すぐお庭にお茶畑……え?入れ方と申しましたか!?作り方ではなく!?」

「そうよ。だって汗くさくなったら嫌われちゃうわ。」

そう照れながら言ったの。

それから3年くらいたった時かしら

家庭教師の青年から舞踏会に出てみないかと言われたの。

その頃には立派なレディーになっていたからもちろん嬉しそうに頷いたのだけど。

彼女は社交ダンスができなかったの。

「君にもできないことがあるんだね。なんか嬉しい。」

「それ、どういうことよ!」

微笑ましい踊りをしている娘にお父さんは

「お前のでる舞踏会は王子の結婚相手を決めるらしい。だが、この分じゃお城に嫁入りはできなそうだ。お父さんかなり安心して嬉しい。」

「もう!二人とも!!」

そう笑う、エラはとても幸せそうでした。






舞踏会の前日になりました。

エラは明日着ていくドレスに悩んでいるとお父さんから優しい青色のドレスをもらいました。

「これはな、お前のお母さんが着ていたものなんだ。お前はお母さんにそっくりだからな。似合うと思う。」

「まぁ!うれしい!!ありがとうお父さん!!」

鏡の前にドレスをあて嬉しそうに佇む娘にお父さんは懐かしいシンデレラと呼ばれたあの日々を振り返り涙をながしたのは内緒よ。


召使い達も自分たちが育て上げた美しきお嬢様の舞踏会への参加をとても喜んだ。

可愛がられた動物も。

全ての人に愛されたエラ。

そして、次の日を迎えた。





「エラ。これ、プレゼント。」

「なに?まぁ、綺麗な靴!」

毎度お馴染みガラスの靴です。

美しいデザインの靴を貰うと靴擦れや、湿気によるかぶれを気にしましたか、靴の下の方によーく見ると小さな穴が空いていたので、通気性抜群の素晴らしい靴でした。

「いつもより歩きやすいのは何故かしら?」

「君は足の骨が少し変だからこれで固定されるんだよ。」

そう言うと背中をぽんと押された。

「何するのよ!」

「大丈夫!君は多分今日は失敗しないよ!」

そう、青年は励ましてくれたのです。

「…!ありがとう」

「だから帰ってきても首と胴体はくっついてるさ!」

余計な一言は照れ隠しの証よ。

まーるいかぼちゃみたいな馬車に揺られてお城に向かった。




お城につくと家庭教師の青年は別行動になってしまった。

どうしようと焦っていると髭の長いチャラ臭いおじさんが近づいてきました。

「やぁ、レディー。美しいドレス。お似合いで…」

「ど、どうも。ありがとう。」

そう微笑んだ瞬間おじさんに赤ワインがかかった。

白いシャツが赤く染まる

「おぉ。これはお気に入りだったのに…。」

「すみません、炭酸水持ってきてください。後汚れても困らないタオルも。」

エラは手早く

赤く汚れたシャツに炭酸水を掛け、タオルを押し付けた。

そう、擦りつけたら悪化する。

ぽんぽんぽんぽん。

すると赤ワインが取れていきました。

「アイロン、もしくは湯たんぽをいただけますか?」

「どうぞ。」

濡れたシャツもアイロンで伸ばすとすぐ元通り。

「素晴らしい!あなたと同い年のレディー達はこんなことしてくれなかった。しかも君は床の染み抜きまでこうしているうちに終わらせてしまった。こんな家庭的な女性はいないよ。うんうん。あいつが言ってたこともわかるな。」

「おじさま?どうしたの?」

頭をポンポンされるエラ。

周りの女の子たちは目を見開いてました。

きぞくなのに!?

というあの顔はエラ自身とてもとても見慣れたものでした。

「エラ。君みたいなのがこの国に必要なのさ。」

「家庭教師のお兄さん!」

とは言えないような上等な服を着ていた。

「この国の女達は皆宝石のように育ちすぎたのだ。僕は君みたいな石じゃなくコロコロ姿を変える花が欲しいんだ」

家庭教師のお兄さんは、この国の王子様だったのです。

しかしエラは

「お花はすぐ枯れます。来年には違う花がまた咲くの。私は花のように直ぐに消えたくはないの。もしあなたが家庭教師のままだったら私はよろこんであなたのそばにいたわ。でもあなたはコロコロ花を変えたいと言った。私は家に戻ってお父さんの傍であの人たちのそばで暮らしたいの。私、帰るわ。おじさん。帰ったらすぐお洗濯するのよ。」

そう行って帰ってしまいました。

おじさんは彼女のドレスから落ちたバラのブローチを拾いました。

バラのブローチは舞踏会の招待状代わりなのです。

同じ色はひとつもありません。

おじさんは彼女を育てた素晴らしい父親に会いたくなったのです。







それから2ヶ月後。

エラの家にあの時のおじさんがやってきました。

「ワイン抜きのお嬢さん。久しぶりだね。この薔薇を返しに来たよ。」

「おじさん!お久しぶりです!!」

ニコニコしながら家におじさんをエラは入れました

なかにいたおとうさんにあわせたのです。

するとお父さんは顔を赤くしました。

「お前、もしかして…」

「…おっと。お前まさかあいつか?」

エラはキョトンとしてしまいました。

するとお父さんは

「…こいつはジョン。お母さんを奪い合った親友だ」

「まさかこの美しいお嬢さんの父親がこいつなのか。」

2人が沈黙していると後ろから同い年ぐらいの男の子が現れた。

顔にそばかすがついているふわふわ髪の毛の男の子。

「ジョンおじ様の子?」

「あ、うん。君、エラ?僕はヘレン。」

大人達が静かに喧嘩しているにも関わらず子供たちは仲良くなっていました。





この出会いをきっかけに最初は半年に一回

その翌年は月に1回。さらに翌年は週に一回のペースであっていました。

そしてエラ16になった時にヘレンはエラに告白をし、翌年結婚しました。

エラは当たり前のように今でも家事をしています。

お父さんとお義父さんは今でも喧嘩していますが、エラが望んだ幸せな日々を送ることが出来ました。



と言ったシンデレラもいいと思うの。

だって私の娘だもの。

どんな道でも幸せになれるのよ。

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有名童話をいじった集 五月雨 @MaizakuraINARI

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