第1546話 地球上でもっとも頼りになる男
危なかった! っていう話なんですよ。まぁそんな大した話ではないんですが、私的には大層助かったものですから、まぁ聞いてください。
土曜日がですね、子ども達の運動会で。
宇部家では大抵の場合、こういった行事の日の夜ご飯は『頑張ったね会』ということで外食(あるいはマックのハッピーセット)になりがちなんですが、問題はその前日。まさかここも外食になんて出来ませんから、その日はママの手作りご飯になるわけです。
で、まぁ運動会ですし、なんかこうガッツが湧いてくるような、テンション爆上げになるようなやつを作ってやろうと思いまして、子ども達に聞いたわけです。
宇部「君達、ママが作るご飯で好きなやつって何? 明日の夜は運動会頑張れるように、君達が好きなものを作るよ!」
入浴中にね。
いやほら、宇部家はまだ家族全員で入ってるから。ここで聞くのが一番手っ取り早いんですよ。あとはまぁ、なんていうの? 裸の付き合い? 腹を割って話そうぜ的な。
すると、
娘「うーん、困ったなぁー。ママのごはん何でもおいしいからな〜」
これは花丸です。花丸満点の解答です。さすがは娘です。露骨にゴマをすって来ました。ありがとう娘ちゃん。ママもうニッコニコだけど、出来たら具体的なメニューでお願いしたいかな。
こういう時、息子はいつも無限ピーマンしか言いません。お前の引き出しそれしか入ってないんか!? 伝家の宝刀か!?
そんなことを思っておりますと。
息子「ホッケ」
まさかのチョイス!
ホッケ!? 運動会の前日メニューでホッケ!? でもいま売ってねぇんだよな。冷凍? 冷凍のやつならあるか!? ていうか渋いなお前!
とりあえず一番最初に入った私はのぼせそうなので、もう出ることにしました。あとは旦那がうまいこと聞き出してくれ。そんな気持ちで風呂場から出ました。
すると、何やら聞こえてくるわけです。
娘「じゃああれ、ロールキャベツとか」
!?
ロールキャベツ!? ぱ、パードゥン?!
いまロールキャベツって言った!?
ママ、ロールキャベツなんてそんなに作ってませんが!? たった数回のそれが深く刻み込まれちゃったの!?
えー、マジか。いや、どうしてもってことなら作っても良いけどさ。お前あれの面倒臭さ知らねぇんだもんな。仕方ないよな。平日のハンバーグってだけでも相当面倒なのに、あのキャベツを剥ぐ作業よ! もうあのキャベツをきれいに剥ぐのってなんか資格いるやつじゃない? キャベツ剥き検定一級とか持ってないと無理じゃね?
でもまぁ、マジでね、ほんとマジでクッソ面倒だけど君達がそれで頑張れるって言うならね? まぁ運動会自体はママの遺伝子が毎回でしゃばっちゃって結果としては正直アレになるだろうけど、それでも全力で頑張れるって言うならね? 全然作るよ? いいよもうロールキャベツで!
そう覚悟を決めながら脱衣所でスキンケアだのお着替えだのをしておりますと――、
旦那「聞いて、君達」
旦那が動きました。
この地球上でもっとも頼りになる男、
旦那「ロールキャベツの作り方って知ってる?」
何が始まった?
旦那「ハンバーグを作って、さらにそれをキャベツで巻くんだよ。しかもそのキャベツもね? 生じゃないんだ。一回茹でないと、パリパリだから巻けないんだよ」
子ども達「そうなんだー。大変!」
まさかレンチンしてるなんて言えない雰囲気です。
旦那「ママ、お仕事から帰ってきてそれ作るの、ちょっと大変じゃないかな……?」
よ、良夫さん……!
頑張れ! 良夫さん、頑張ってくれ!
心の中でエールをおくりつつ、夕飯の仕上げがあるため、私はキッチンに向かいます。味噌汁等を温めておりますと、すっぽんぽんの子ども達がわらわらと出て来ました。そして、
旦那「松清子~、明日の夜ご飯なんだけど」
全裸の旦那も出て来ました。
どうなったんだ?! ロールキャベツか?! それとも何か違うやつか?! まずはパンツ履こうか?!
旦那「勝負に勝つ! ってことで、カツ丼になったよ!」
宇部「安直だけど、でかしたァ!」
旦那「あとは、何かお野菜のスープと、無限ピーマンだって」
宇部「結局無限ピーマンはあるんかい!」
そして、カツ丼なのにスープなんだ?! とも思われたかもしれませんが、お味噌汁よりも具沢山でお野菜モリモリに出来るので、丼系のご飯の時は不足しがちな野菜を補う目的も兼ねてスープのこともあります。
よしよし、カツなんてね、その辺はもうお惣菜とか、後は揚げるだけ、みたいなやつ使っちゃうから。どう考えても私が作るより美味しいから。その辺はそういう賢い選択が出来る人だから宇部さんは。これが賢い主婦ってやつだから。負けを認めること持って大事だから。プロの前には母の味もあっさり敗北するから。
というわけで、旦那の必死のプレゼンによりロールキャベツを回避することに成功しました! ありがとう良夫さん!
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