第1522話 ただただ驚いただけのやつ

 私が驚きやすい質なだけなのかもしれないんですけど。


 ビクーッ、ってなることが結構多いんですよね。何でしょう、なりやすい人っているんでしょうか。私がビビりなだけ?


 元々、大きな音が苦手でですね、ライブとかコンサートとかそういう、『そもそも大きな音を楽しむ場』ってわかっているのは大丈夫なんですけど、強風とか雷とか豪雨とかそういうのがとにかく苦手。まぁこれらは得意な人もそうそういないと思いますけど。


 それでですよ。

 あともう一つ、苦手なのが、これはもうほんとに申し訳ないんですけど、くしゃみですね。めちゃくちゃくしゃみが大きい人っているじゃないですか。わざと派手に大きくやってるわけじゃないと思うんで、もうどうしようもないって頭ではわかってるんですけど。


 そんでくしゃみって、出す側にとってもまぁまぁ事故みたいなものじゃないですか。出したくて出してるわけじゃない。うわ、なんかわからんけど出る、みたいなところあるじゃないですか。あんなの意図的に出したいものでもないですよ。だから、出す方もサプライズだし、近くにいる人にとってもサプライズなわけです。


 それで、ウチの旦那のくしゃみがですね、まぁまぁ大きい。ヴォリュームもそうなんですけど、なんていうかですね、私との相性的なものなのかもしれないんですが、すごく心臓に悪いんですよ。ほぼほぼ、ビクーッ! ってなる。私が。


 毎回毎回私がめちゃくちゃびっくりするものですから、これはまずいと旦那も思ったのでしょう。


旦那「これからはくしゃみをする前に『するよ』って宣言するよ」

宇部「いや、そんなことを言ってるうちにくしゃみ止まっちゃうと思うよ?」

旦那「大丈夫!」


 さて、そんな『予告くしゃみ』制度が出来てからしばらくして。旦那の鼻がむずむずしてきました。くしゃみチャンスです。旦那は早速手を上げ「くしゃみします」と宣言しました。私は正直「(えっ、あの話生きてたんだ)」と思いましたが、最愛の夫がせっかく宣言してくれたのです。わかりました、どうぞ、おやりなさい、と。


 が。


旦那「へっ……へあ……へあぁ……、あ――……止まったわ」

宇部「だろうね! いいよもう、いちいち宣言してたらその度に止まっちゃって身体に悪いよ!」

旦那「でも松清子がびっくりするから……。そうだ! くしゃみ出す前にさ、こう、指でトトトトトってやるよ!」


 それはテーブルの上だったんですけど、こう、ピアノでも弾くかのような感じでですね、トトトトト、って。まぁ彼はピアノ弾けないんですけど。まぁうん、わかったけど、別にそこまでしなくても私がびっくりするだけだし、大丈夫だよ、ってそんな話をして数日後です。


 それは、夜のことでした。

 子ども達も寝、私はお裁縫がひと段落してスマホをぽちぽち、旦那はゲームをしている時でした。


 合皮のソファからトトトトトトトという音が聞こえてきました。正直、旦那のオナラだと思いました。そんな感じの音でした。私は絶対に旦那の前でオナラをしないと決めておりますが、旦那は景気良くぶっ放します。なので、オナラかと完全に油断してました。何だ?! と顔を上げたら旦那がこちらを見ながらソファの背凭れに指をトトトトトとやっていて、それに対しても「何だ?! 何その行動!?」ってプチびっくりしました。


 と。


旦那「へぇっくしょぉいっ!」

宇部「ひやあああ! 何?! くしゃみか! びっくりしたぁ!」


 謎の行動からのフルスロットルくしゃみです。それはそれはびっくりしましたね。すると旦那が言うわけです。


旦那「ちゃんと合図したじゃん! トトトトってやったじゃん!」

宇部「え? あ、そうか! そうだった! いや、私最初オナラかと思ってたから油断してたよ!」

旦那「ナンダッテー!」


 もうただただ二回驚いただけの人でしたね、私は。馬鹿かよ。ちゃんと覚えとけや。

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