第1231話 いかのおすし

 毎日お風呂で子ども達に学校のことを聞きます。

 のぼせるので(私が)、息子か娘、先に湯船に入って来た方にインタビューをする流れ。その日は息子でした。


宇部「息子君、今日は学校で何か変わったことあった?」

息子「うーん、何かあったかなぁ。あっ、防犯教室だったよ」

宇部「防犯教室? どんなことをするの?」


 だいたいわかりますけど、知らないふりして聞きます。特に息子はしゃべるのがいまだに苦手なものですから、トレーニングの意味も兼ねてなるべく彼の言葉でたくさんしゃべってもらうようにしています。


息子「えーと、体育館でー、『いかのおすし』をやったよ」

宇部「『いかのおすし』?」

息子「そうだよ? 知らないの?」

宇部「知らないなぁ。お母さんが小学生の頃にはなかったやつだからなぁ」


 これはガチです。

 この手のやつは避難訓練の『おはし(さない、しらない、ゃべらない)』くらいしかありませんでした。たぶん。だけど、一応、親ですから。いまはちゃんと知っています。ですが、私は何としても彼に語らせたい。


宇部「だから、息子君に教えてほしいなぁ。お願いします。『いかのおすし』の『い』は?」

息子「『い』じゃなくて、『いか』だよ。ない」

宇部「成る程、いきなり二文字使っちゃうわけね。『行かない』ね。どこに行かないの? 学校?」

息子「違うよ。知らない人について行かない、だよ」

宇部「成る程ー!(『行かない』に辿り着くまでの補足が多くね?)じゃ、『の』は?」

息子「らない!」

宇部「成る程、『乗らない』ね。でも、何に? 電車とか?」

息子「違うよ、車だよ!」

宇部「車かぁ。お父さんの車とか?(すっとぼけ)」

息子「ううん、知らない人の車!」

宇部「成る程ぉ! じゃ、『お』は?」

息子「おごえを出す」

宇部「『大声を出す』ね。オッケーオッケー。ヤッホー、とかで良い?」

息子「駄目だよ。助けてーって叫ぶんだよ」

宇部「成る程、大事だね。それじゃ『す』は?」

息子「ぐにげる」

宇部「そうだね、すぐ逃げた方が良いね。すごいね、息子君ちゃんと覚えてるじゃん! それじゃ最後、『し』! お願いします!」

息子「らべる!」


 絶対違う――!

 ここへきて、絶対違うやつ出て来た――!


 調べるって何を?

 そいつの前科? 罪名? 指名手配状況とか?!

 そんなの子どもが抱え込むやつじゃねぇ、大人に任せろ!


 ここで旦那が助っ人として入ってきてくれました。


旦那「息子君、『知らせる』じゃなかった?」

息子「そうだった! 『らせる』!」

宇部「成る程ねぇ! そっかそっか。でも、誰に知らせるの?」

息子「お父さんとか、お母さんとか」

宇部「そうだね。もし学校とかだったら、先生でも良いし、近くに交番があったらお巡りさんでも良いからね。ちゃんと知らせてね」

息子「わかった!」


 勉強の方は息子なりに頑張っているんですけど、こういう○○教室とか、○○訓練についてはなかなか覚えられない彼にしては大健闘でした。


 ただちゃんとオチを用意してくれるのがほんとにね……。

 息子よ、ママのエッセイのネタのことは気にしないでくれ。

 

 そのうちもっと色々わかるようになってカクヨムココのこともバレたらなんか積極的にネタを提供してきそうで怖いですね。あんまり身体張んなよ。

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